上 下
3 / 18
序章I

やばい、魔力増やさなきゃ!

しおりを挟む
「う、う、う~ん……」

「起きたか、ギル」

 優しいお父さんの声がした。ボヤけて微かに見える景色は、家のベットだった。

 あれ? 僕はギルドにいたはずなのに……どういうことだ? もしかして、夢だったとかか? な、はずないよな。じゃぁ……。

「お前は、魔力切れで倒れたんだ。あまり、無茶するな」

 あ、心の声がなぜ聞こえたんだ? まぁ、いい。そういうことか。

「は、はは。そうなんですか……」

「まぁ、命に別状はない。無茶するなよ? 魔力切れは、最悪命を落とす可能性があるからな」

「わ、わかりました………」

 さて、どうするべきだろうか。
 今のままでは、好感度鑑定をしている場合ではない。まずは、魔力を増加させなければ………でも、どうやってだ? 
 ここ8年間生きてきてどうやって上げるのか知らない。みんなは、どうやって増やしてるのかな?

「お父さん……魔力を増やしたいです………」

 数々の冒険をしてきたことだし、お父さんに頼るのが良さそうだ。

 しかし、お父さんは困ったような顔をしている。

「どうしたのですか? そんな顔をして………?」

「ん? いやっ、なぁ? 俺さぁ………魔力より攻撃力に特化しててよ、そんなに魔力のこと考えたことないんだわ……」

「………」

 困った、どうしようか。自分で特訓する? 
 いやいや、そんなの無理だろ………僕は、何をすれば良いのかわからない。

「でもな、お母さんならどうだ?」

 その手があった!

「なるほど、そうですね! ですが……お父さん。僕に、剣術を教えてください」

「え? いきなりどうしたんだ?」

「一応、念のために少しでも剣術を覚えて置いた方が良いと思いまして」

「まぁ、そうだな。お前も大人になったら、男なら絶対に攻撃系もできるようにしておく必要があるしな」

「はい」

 この先何があるかわからない。
 好感度鑑定を、鍛える分なるべく他の魔法を覚えないようにしておこうーーそこで、僕は剣術を習うことにした。そうすれば、別に魔力を使うわけでもない。
 まぁ、お父さんみたいにボアッって、火をまとわせたりできないけど。

 それは、仕方がない。


■■■


 次の日………早速、お母さんに魔力増加訓練をすることになった。

「いい? ギルちゃん。魔力を増加させたいなら、手っ取り早いところレベル上げがいいわ!」

「え? ………」

「私の経験値増加魔法を使って、魔力経験値豊富なハニースライムを、倒すのよ」

 まじか………ってことは、剣術必須ッ! ってことか? ちなみに、魔力経験値とはレベルが上がるごとに、魔力が増えるという感じだ。
 なるほど、たしかにそれが手っ取り早い。

「ですが、ハニースライムなんて滅多にいませんよ?」

「私の魔法にかかれば、そんなの朝飯前よ」

 まじか、この人。ここまで、すごいなんて。

「ですが、剣術は少ししかできませんし」

 そう、僕は昔お父さんに憧れて一時期、少しだけ剣術を習ったことがある。

「だから、まずはお父さんに剣術を習うことね!」

「え、はーい!」

 仕方なく、僕は早い段階から、お父さんから剣術を学ぶことにした。


■■■


「よし、もっと思いっきり振ってみろ!」

「は、はい」

 いつものお父さんとは、違い優しい目はいくつもの戦場を潜り抜けてきただけあり、鋭い目をしていた。

 僕は、思いっきり剣を振る。

「いいか? もっとこう? 振るんだ!」と、お父さんは剣を振る。

 すると、庭に生えていた一本の木が一瞬にして、跡形もなく吹き飛んだ。

「なぁ? こんな感じだ」

 お父さんは、清々しい顔で「お前もできるだろ?」みたいな、感じだったため「こんな感じじゃねぇーよ!」と突っ込んだ。

「仕方ねぇなぁ~~。だったら、もっと力を入れてみろ! 魂を剣に集中させてみろ!」

「はいはい」

 僕は、言われるがまま剣に魂? とやらを、集中させてみた。
 実際は、ただ力を集中させているだけのため、本当にこれで合ってるのかわからない。

 すると、次の瞬間僕の握っている剣が、ブワッと光出す。

「うわっ、なんですか、なんですかぁあ! これ! 大丈夫なんですか!?」

「驚いたなぁ……まさか、まじで出来るなんてな……」

 お父さんは、ガチで驚いていた。って、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!

「ど、どうすればいいんですかぁああ!」

「ん? そのまま、思いっきり振ってみろ!」

「は、はい!」

 僕は、思いっきり剣を振る。

 すると、衝撃で吹き飛ぶと共に、バゴーンと大きな音を立てた。

「こりやぁー驚いたなぁ」と、お父さんは山を見ている。

 僕も、お父さんが見ている山を見てみる。すると、なんと真っ二つに割れていた。

「大丈夫? なんか、すごい音したけど?」と、そこに心配そうにお母さんが来た。

「おい、サフィ! ギルの野郎、もしかしたらすごい逸材だぞ!」

 と、両親はめちゃくちゃはしゃいでいる。その中僕はというと………。

 握っている剣をブルブルと震わせながら、驚いている。まじで僕がやったのか? なはずないよなぁ……夢だよな?

「すごいわ! ギルちゃん!」と、お母さんが抱きついてくる。

 く、苦しいぃ。

「ギル………」

「………ん?」

「お前、道を間違えたな」

「……………」

 返す言葉がない……。



  
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...