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金茶色の髪

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そういえば時間指定はしていなかったな。仕方がない待つか。
痛まない様日陰に弁当を置き、ついでに警護にもなるからと寮の入り口付近で待機していた。

昼には早い時間に、本を抱えた彼女が出て来た。
日陰に置いておいた弁当を持ち、アトリアの前に立った。


「待っていた」

「…へ?」


彼女を小脇に抱え、ファスター公爵令嬢に教えてもらった場所に向かった。

…顔色が優れない。やはりまだ幼馴染みのあの男を思って思い悩んでいるのだろうか。
俺にはそういった経験がないので想像するしかできないが、長い時間過ごしてきたのであればそれだけ情もあるはずだ。

気に入らないと歩みを進める。
ここだったな。なるほどここは人目にもつきにくい。ここでならばゆっくり食事を楽しむ事が出来るだろう。

彼女をそっと下ろし、敷布を敷き、弁当を広げた。
正直野戦料理の経験しかなく手間取ったが、学園の調理師に頭を下げて教えを乞い、何とか形になっていると思う。
今日の為に令嬢が口利きをしてくれたお陰でもあるが、調理場を使わせてもらって助かった。

それと渡されたピンクの布はエプロンとリボン?だったのだが、これを見につけろという事なのだろうか。
形から入れと言うことだったのか。

仕方なしにエプロンと頭にリボンをし、彼女を横抱きにし敷布に腰を下ろした。
しかしこのリボンはいやに大きいな。


「あの騎士…」

「お母さんだ」

「いえですから、騎…」

「お母さんだ」


本当はシルヴィスと名前で呼んで欲しいが。

横に下ろそうかとも思ったが思ったよりも座り心地が良くなかったので、そのまま膝に乗せておく事にした。
うん。これならば尻も痛くないだろうし、俺も嬉しい。次回もそうしよう。
…それにしてもガッチリ本を抱えているな。
余程大事な物なのだろう。しかしこれでは飯が食べられないだろに、まあ俺が食べさせれば良いか。


「アトリアが何が好きか分からないないから沢山用意した。これは美味いぞ」


口元に持っていってやると小さな口でもくもくと咀嚼している。…とても可愛い。
俺も同じ物を口にする。美味い。教わった通りにできた様だ。

何だかもぞもぞしているが座り心地がわるいのか?
これでは落ちてしまうとしっかりと抱え込む。

あまりにも一生懸命食べている姿が可愛らしくて、あれもこれもと口元に次々に持っていってやる。
腹がいっぱいになった様で、口に入れてやろうとすると首を横に振られてしまった。

…残念だ。


「もういいのか?アトリアは小食なんだな」


女の子とはあれぐらいしか食べられないものなんだな。なるほど、令嬢のアドバイス通り小さめにして正解だった。

見上げてるせいかうわ目使いで俺を見てくる。あまりの可愛さにつむじにリップ音を立てキスを1度した。


「何をするんです!」

「アトリアを可愛がっている。お母さんだからな」


甘えたいからお母さんが欲しかったのだろう?沢山可愛がって甘やかそう。

そうだ、デザートも持ってきていた。お茶も欲しいだろう。
次は何を用意しようか。

ああまた次にこうしてアトリア甘やかしてあげるのが楽しみだ。

そんな楽しかった時間をまた根掘り葉掘り聞かれて面倒だった。


「嘘だろお前」

わたくしも待ち伏せはやり過ぎとは思いますが…。んふふふ!エ、エプロンをしてんっふ、な、何故それをリボンに、んぶふふふふ。その格好でピクニックですの?ふふふふふ」

「嘘だろお前」

「本当だ」


ファスター公爵令嬢はこの間と同じ様に、扇で顔を隠して震えていた。ヒューは「ヤベェ」「大丈夫なのか」と呟いていた。


わたくしはお料理する時にと思って渡しましたのよ。そしてそれはリボンではなく、ターバンですわ。髪が落ちない様にとうちの料理人見習いが使っているそうですの」


そうだったのか。形から入れとの意味だと思っていた。


「あ、そうですわ!この間渡したエプロンと、ターバンを持ってきてくださいまし。せっかくですからわたくしが可愛くしてあげますわ!それと次回もお約束しているのかしら?なら彼女にぴったりなリボンや、小さな石のついたちょっとしたアクセサリーなんかもプレゼントすると良いと思いますわ!」


なるほど、良いかもしれない。
アトリアは慎ましいから、何処ぞの令嬢が欲しがる様な派手な物は好まなそうだしな。
学園内でも華美な装いをしているのを見た事もないし。


「いや、お嬢止めてやりましょうよ。お前本当に金茶の子に無理させてないか?俺はシルヴィスの話を聞いて背中が寒くなったんだが」

「大丈夫だ」

「本当なのかよお前!」


次の時までにプレゼントを用意しょう。









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