8 / 11
金茶色の髪
3
しおりを挟む
そういえば時間指定はしていなかったな。仕方がない待つか。
痛まない様日陰に弁当を置き、ついでに警護にもなるからと寮の入り口付近で待機していた。
昼には早い時間に、本を抱えた彼女が出て来た。
日陰に置いておいた弁当を持ち、アトリアの前に立った。
「待っていた」
「…へ?」
彼女を小脇に抱え、ファスター公爵令嬢に教えてもらった場所に向かった。
…顔色が優れない。やはりまだ幼馴染みのあの男を思って思い悩んでいるのだろうか。
俺にはそういった経験がないので想像するしかできないが、長い時間過ごしてきたのであればそれだけ情もあるはずだ。
気に入らないと歩みを進める。
ここだったな。なるほどここは人目にもつきにくい。ここでならばゆっくり食事を楽しむ事が出来るだろう。
彼女をそっと下ろし、敷布を敷き、弁当を広げた。
正直野戦料理の経験しかなく手間取ったが、学園の調理師に頭を下げて教えを乞い、何とか形になっていると思う。
今日の為に令嬢が口利きをしてくれたお陰でもあるが、調理場を使わせてもらって助かった。
それと渡されたピンクの布はエプロンとリボン?だったのだが、これを見につけろという事なのだろうか。
形から入れと言うことだったのか。
仕方なしにエプロンと頭にリボンをし、彼女を横抱きにし敷布に腰を下ろした。
しかしこのリボンはいやに大きいな。
「あの騎士…」
「お母さんだ」
「いえですから、騎…」
「お母さんだ」
本当はシルヴィスと名前で呼んで欲しいが。
横に下ろそうかとも思ったが思ったよりも座り心地が良くなかったので、そのまま膝に乗せておく事にした。
うん。これならば尻も痛くないだろうし、俺も嬉しい。次回もそうしよう。
…それにしてもガッチリ本を抱えているな。
余程大事な物なのだろう。しかしこれでは飯が食べられないだろに、まあ俺が食べさせれば良いか。
「アトリアが何が好きか分からないないから沢山用意した。これは美味いぞ」
口元に持っていってやると小さな口でもくもくと咀嚼している。…とても可愛い。
俺も同じ物を口にする。美味い。教わった通りにできた様だ。
何だかもぞもぞしているが座り心地がわるいのか?
これでは落ちてしまうとしっかりと抱え込む。
あまりにも一生懸命食べている姿が可愛らしくて、あれもこれもと口元に次々に持っていってやる。
腹がいっぱいになった様で、口に入れてやろうとすると首を横に振られてしまった。
…残念だ。
「もういいのか?アトリアは小食なんだな」
女の子とはあれぐらいしか食べられないものなんだな。なるほど、令嬢のアドバイス通り小さめにして正解だった。
見上げてるせいかうわ目使いで俺を見てくる。あまりの可愛さにつむじにリップ音を立てキスを1度した。
「何をするんです!」
「アトリアを可愛がっている。お母さんだからな」
甘えたいからお母さんが欲しかったのだろう?沢山可愛がって甘やかそう。
そうだ、デザートも持ってきていた。お茶も欲しいだろう。
次は何を用意しようか。
ああまた次にこうしてアトリア甘やかしてあげるのが楽しみだ。
そんな楽しかった時間をまた根掘り葉掘り聞かれて面倒だった。
「嘘だろお前」
「私も待ち伏せはやり過ぎとは思いますが…。んふふふ!エ、エプロンをしてんっふ、な、何故それをリボンに、んぶふふふふ。その格好でピクニックですの?ふふふふふ」
「嘘だろお前」
「本当だ」
ファスター公爵令嬢はこの間と同じ様に、扇で顔を隠して震えていた。ヒューは「ヤベェ」「大丈夫なのか」と呟いていた。
「私はお料理する時にと思って渡しましたのよ。そしてそれはリボンではなく、ターバンですわ。髪が落ちない様にとうちの料理人見習いが使っているそうですの」
そうだったのか。形から入れとの意味だと思っていた。
「あ、そうですわ!この間渡したエプロンと、ターバンを持ってきてくださいまし。せっかくですから私が可愛くしてあげますわ!それと次回もお約束しているのかしら?なら彼女にぴったりなリボンや、小さな石のついたちょっとしたアクセサリーなんかもプレゼントすると良いと思いますわ!」
なるほど、良いかもしれない。
アトリアは慎ましいから、何処ぞの令嬢が欲しがる様な派手な物は好まなそうだしな。
学園内でも華美な装いをしているのを見た事もないし。
「いや、お嬢止めてやりましょうよ。お前本当に金茶の子に無理させてないか?俺はシルヴィスの話を聞いて背中が寒くなったんだが」
「大丈夫だ」
「本当なのかよお前!」
次の時までにプレゼントを用意しょう。
痛まない様日陰に弁当を置き、ついでに警護にもなるからと寮の入り口付近で待機していた。
昼には早い時間に、本を抱えた彼女が出て来た。
日陰に置いておいた弁当を持ち、アトリアの前に立った。
「待っていた」
「…へ?」
彼女を小脇に抱え、ファスター公爵令嬢に教えてもらった場所に向かった。
…顔色が優れない。やはりまだ幼馴染みのあの男を思って思い悩んでいるのだろうか。
俺にはそういった経験がないので想像するしかできないが、長い時間過ごしてきたのであればそれだけ情もあるはずだ。
気に入らないと歩みを進める。
ここだったな。なるほどここは人目にもつきにくい。ここでならばゆっくり食事を楽しむ事が出来るだろう。
彼女をそっと下ろし、敷布を敷き、弁当を広げた。
正直野戦料理の経験しかなく手間取ったが、学園の調理師に頭を下げて教えを乞い、何とか形になっていると思う。
今日の為に令嬢が口利きをしてくれたお陰でもあるが、調理場を使わせてもらって助かった。
それと渡されたピンクの布はエプロンとリボン?だったのだが、これを見につけろという事なのだろうか。
形から入れと言うことだったのか。
仕方なしにエプロンと頭にリボンをし、彼女を横抱きにし敷布に腰を下ろした。
しかしこのリボンはいやに大きいな。
「あの騎士…」
「お母さんだ」
「いえですから、騎…」
「お母さんだ」
本当はシルヴィスと名前で呼んで欲しいが。
横に下ろそうかとも思ったが思ったよりも座り心地が良くなかったので、そのまま膝に乗せておく事にした。
うん。これならば尻も痛くないだろうし、俺も嬉しい。次回もそうしよう。
…それにしてもガッチリ本を抱えているな。
余程大事な物なのだろう。しかしこれでは飯が食べられないだろに、まあ俺が食べさせれば良いか。
「アトリアが何が好きか分からないないから沢山用意した。これは美味いぞ」
口元に持っていってやると小さな口でもくもくと咀嚼している。…とても可愛い。
俺も同じ物を口にする。美味い。教わった通りにできた様だ。
何だかもぞもぞしているが座り心地がわるいのか?
これでは落ちてしまうとしっかりと抱え込む。
あまりにも一生懸命食べている姿が可愛らしくて、あれもこれもと口元に次々に持っていってやる。
腹がいっぱいになった様で、口に入れてやろうとすると首を横に振られてしまった。
…残念だ。
「もういいのか?アトリアは小食なんだな」
女の子とはあれぐらいしか食べられないものなんだな。なるほど、令嬢のアドバイス通り小さめにして正解だった。
見上げてるせいかうわ目使いで俺を見てくる。あまりの可愛さにつむじにリップ音を立てキスを1度した。
「何をするんです!」
「アトリアを可愛がっている。お母さんだからな」
甘えたいからお母さんが欲しかったのだろう?沢山可愛がって甘やかそう。
そうだ、デザートも持ってきていた。お茶も欲しいだろう。
次は何を用意しようか。
ああまた次にこうしてアトリア甘やかしてあげるのが楽しみだ。
そんな楽しかった時間をまた根掘り葉掘り聞かれて面倒だった。
「嘘だろお前」
「私も待ち伏せはやり過ぎとは思いますが…。んふふふ!エ、エプロンをしてんっふ、な、何故それをリボンに、んぶふふふふ。その格好でピクニックですの?ふふふふふ」
「嘘だろお前」
「本当だ」
ファスター公爵令嬢はこの間と同じ様に、扇で顔を隠して震えていた。ヒューは「ヤベェ」「大丈夫なのか」と呟いていた。
「私はお料理する時にと思って渡しましたのよ。そしてそれはリボンではなく、ターバンですわ。髪が落ちない様にとうちの料理人見習いが使っているそうですの」
そうだったのか。形から入れとの意味だと思っていた。
「あ、そうですわ!この間渡したエプロンと、ターバンを持ってきてくださいまし。せっかくですから私が可愛くしてあげますわ!それと次回もお約束しているのかしら?なら彼女にぴったりなリボンや、小さな石のついたちょっとしたアクセサリーなんかもプレゼントすると良いと思いますわ!」
なるほど、良いかもしれない。
アトリアは慎ましいから、何処ぞの令嬢が欲しがる様な派手な物は好まなそうだしな。
学園内でも華美な装いをしているのを見た事もないし。
「いや、お嬢止めてやりましょうよ。お前本当に金茶の子に無理させてないか?俺はシルヴィスの話を聞いて背中が寒くなったんだが」
「大丈夫だ」
「本当なのかよお前!」
次の時までにプレゼントを用意しょう。
2
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった
七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。
「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」
「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」
「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」
どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。
---
シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。
小説家になろうにも投稿しています。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。
有川カナデ
恋愛
憧れのお義姉様と本当の家族になるまであと少し。だというのに当の兄がお義姉様の卒業パーティでまさかの断罪イベント!?その隣にいる下品な女性は誰です!?えぇわかりました、わたくしがぶっ飛ばしてさしあげます!……と思ったら、そうでした。お兄様はお義姉様にべた惚れなのでした。
微ざまぁあり、諸々ご都合主義。短文なのでさくっと読めます。
カクヨム、なろうにも投稿しております。
【短編】王子のために薬を処方しましたが、毒を盛られたと婚約破棄されました! ~捨てられた薬師の公爵令嬢は、騎士に溺愛される毎日を過ごします~
上下左右
恋愛
「毒を飲ませるような悪女とは一緒にいられない。婚約を破棄させてもらう!」
公爵令嬢のマリアは薬を煎じるのが趣味だった。王子のために薬を処方するが、彼はそれを毒殺しようとしたのだと疑いをかけ、一方的に婚約破棄を宣言する。
さらに王子は毒殺の危機から救ってくれた命の恩人として新たな婚約者を紹介する。その人物とはマリアの妹のメアリーであった。
糾弾され、マリアは絶望に泣き崩れる。そんな彼女を救うべく王国騎士団の団長が立ち上がった。彼女の無実を主張すると、王子から「ならば毒殺女と結婚してみろ」と挑発される。
団長は王子からの挑発を受け入れ、マリアとの婚約を宣言する。彼は長らくマリアに片思いしており、その提案は渡りに船だったのだ。
それから半年の時が過ぎ、王子はマリアから処方されていた薬の提供が止まったことが原因で、能力が低下し、容姿も豚のように醜くなってしまう。メアリーからも捨てられ、婚約破棄したことを後悔するのだった。
一方、マリアは団長に溺愛される毎日を過ごす。この物語は誠実に生きてきた薬師の公爵令嬢が価値を認められ、ハッピーエンドを迎えるまでのお話である。
やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」
家紋武範
恋愛
ポチャ娘のミゼット公爵令嬢は突然、王太子殿下より婚約破棄を受けてしまう。殿下の後ろにはピンクブロンドの男爵令嬢。
ミゼットは余りのショックで寝込んでしまうのだった。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
私の以外の誰かを愛してしまった、って本当ですか?
樋口紗夕
恋愛
「すまない、エリザベス。どうか俺との婚約を解消して欲しい」
エリザベスは婚約者であるギルベルトから別れを切り出された。
他に好きな女ができた、と彼は言う。
でも、それって本当ですか?
エリザベス一筋なはずのギルベルトが愛した女性とは、いったい何者なのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる