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第4章【プロへの道】
第37話【糸口を見付けだせ!】
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天原選手への対策が練られる中、坂田さんは頭を悩ませていた。
過去の映像を見れば見る程ーー知れば知る程、天原菊池と云う選手には隙がない。
それどころか、オールラウンドでどのスタンスにも対応し、相手を研究しているのか、此方の弱点を確実に突いてくる。
坂田さんが悩むのも無理はないだろう。
練習はいつも通りに行われたが、今一つ決定打に欠けるのか坂田さんも鈴木さんも良い顔をしない。
このままでは甲斐選手の二の舞になるのは確実だろう。
そんな中、会長がある提案を俺達に出す。
「合同合宿ですか?」
「ああ。糀君も煮詰まっているようだし、少し他の選手と交流を深め、互いに切磋琢磨してきたまえ」
「ですが、こちらの手の内をさらすのは・・・」
「試合前になれば、研究されるのは解りきっているだろう?
ならば、此方も吸収して次に活かせれば、よくないかね?」
坂田さんは会長さんの言葉に渋々ながら承諾すると合同合宿へと向けて準備をはじめた。
「坂田さん。今回の合同合宿の相手はどんな方が来るんですか?」
俺が質問すると坂田さんは「いや」と応えて首を左右に振る。
「俺も教えられていない。もしかすると海外の選手かも知れないね?」
「サプライズ企画って奴ですかね?」
「そう言う事になるのだろう。ま、どんな相手と合宿になるのかは、会長さん次第だろう」
坂田さんは肩を竦めながら、そう告げると鈴木さんと共に再び練習に戻る。
最近、坂田さんがピリピリしている気がする。
トレーナーとして鈴木さんへのサポートが万全でない事なのが、自分への腹立たしさになっているのかも知れないな。
なにはともあれ、俺も練習に身を入れなければ・・・。
そんな思いで迎えた合宿当日ーー。
山奥にある山荘で俺達を出迎えたのは獅童甲斐選手であった。
「獅童さん?何故、貴方がここに?」
「鈴木さんこそ、なんで?」
困惑する周囲に対して坂田さんのみが「なるほど」と呟き、会長さんに振り返る。
「同レベルのボクサー同士を競わせて、互いを高めようと云う魂胆ですか?」
「そう言う事さ。不服かい?」
「・・・いえ」
「加えて、今回のスパーリングと強化訓練は坂田君に一存したい。
これは向こうのオーナーとも話し合った結果さ」
「会長の指示なら従いますよ」
坂田さんはそう言うと鈴木さんと甲斐選手に顔を向け直す。
そして、未だにお互いに信じられないと云った顔をしている二人に手をパンパンと叩いて練習の準備に入るのだった。
坂田さん自らスパーリング相手になるのはいつ以来だろうか?
鈴木さんも甲斐選手もやや緊張している。
特に甲斐選手はあの一件のやり取りもあってか、かなり緊張している様子だった。
「まずは獅童君から始めよう。心配はいらない。贔屓したりするつもりはないからね?」
「よろしくお願いします!」
甲斐選手が挨拶すると同時にゴングが鳴り、スパーリングが始まった。
坂田さんは普段の坂田さんらしくなく、前に出る。
ーーいや、あの動きは見覚えがある。
あれは天原選手と同じ動きだ。
甲斐選手はそれに対して、足を止めて打ち合う姿勢を取る。
「それではダメだ!自分から当たりにいったら、前回の二の舞になる!
もっと足を使うんだ!君はアウトボクサーなんだから足を止めず、リズムを忘れるな!」
坂田さんの言葉に獅童さんは応じるようにステップを踏んで坂田さんから距離を取る。
「そうだ。それでいい。それが正しいハードパンチャーとの対応だ。
クロスレンジでカウンター狙いを最初から狙っていては相手に翻弄される。
それに対応した武器を用意するんだ」
どうやら、坂田さんは本気で甲斐選手を贔屓とかなしで鍛えるらしい。
そんな事を考えていると会長さんに頭をはたかれた。
「何をボッとしているんだ。君の相手は彼だよ」
そう言って振り返ると俺と同じ身長差の金髪の男性が俺の事を待っていた。
「君には彼と練習して貰うーーと言ってもロードワークなど基本的な事からはじめて貰うつもりだ。まあ、頑張りたまえ」
こうして、俺は俺で合宿の練習を始める。
その間にも甲斐選手から鈴木さんにバトンタッチされ、再びスパーリングが開始されるのだった。
坂田さんもなにかに気付いたのか、鈴木さんに檄を飛ばす。
どうやら、甲斐選手とのスパーリングで何かを掴んだらしい。
ショートレンジやクロスレンジ、ミドルレンジ。それからオーソドックススタイルやサウスポーなど様々な距離や動きで坂田さんは鈴木さんを翻弄する。
二人のスパーリングを終えると坂田さんが一息吐く。
まだやれると言わんばかりに呼吸は整っているのが、恐ろしい。
本当に現役のままだったら、チャンピオンになっててもおかしくはない強さだ。
「獅童君との練習で見えた。宗成君には俺の技術を駆使するから、それに対応出来るように練習しよう。
それが天原選手への対策の糸口になるだろうからね」
こうして、最初の合宿のスパーリングは終わり、各々の課題に取り組む事となる。
過去の映像を見れば見る程ーー知れば知る程、天原菊池と云う選手には隙がない。
それどころか、オールラウンドでどのスタンスにも対応し、相手を研究しているのか、此方の弱点を確実に突いてくる。
坂田さんが悩むのも無理はないだろう。
練習はいつも通りに行われたが、今一つ決定打に欠けるのか坂田さんも鈴木さんも良い顔をしない。
このままでは甲斐選手の二の舞になるのは確実だろう。
そんな中、会長がある提案を俺達に出す。
「合同合宿ですか?」
「ああ。糀君も煮詰まっているようだし、少し他の選手と交流を深め、互いに切磋琢磨してきたまえ」
「ですが、こちらの手の内をさらすのは・・・」
「試合前になれば、研究されるのは解りきっているだろう?
ならば、此方も吸収して次に活かせれば、よくないかね?」
坂田さんは会長さんの言葉に渋々ながら承諾すると合同合宿へと向けて準備をはじめた。
「坂田さん。今回の合同合宿の相手はどんな方が来るんですか?」
俺が質問すると坂田さんは「いや」と応えて首を左右に振る。
「俺も教えられていない。もしかすると海外の選手かも知れないね?」
「サプライズ企画って奴ですかね?」
「そう言う事になるのだろう。ま、どんな相手と合宿になるのかは、会長さん次第だろう」
坂田さんは肩を竦めながら、そう告げると鈴木さんと共に再び練習に戻る。
最近、坂田さんがピリピリしている気がする。
トレーナーとして鈴木さんへのサポートが万全でない事なのが、自分への腹立たしさになっているのかも知れないな。
なにはともあれ、俺も練習に身を入れなければ・・・。
そんな思いで迎えた合宿当日ーー。
山奥にある山荘で俺達を出迎えたのは獅童甲斐選手であった。
「獅童さん?何故、貴方がここに?」
「鈴木さんこそ、なんで?」
困惑する周囲に対して坂田さんのみが「なるほど」と呟き、会長さんに振り返る。
「同レベルのボクサー同士を競わせて、互いを高めようと云う魂胆ですか?」
「そう言う事さ。不服かい?」
「・・・いえ」
「加えて、今回のスパーリングと強化訓練は坂田君に一存したい。
これは向こうのオーナーとも話し合った結果さ」
「会長の指示なら従いますよ」
坂田さんはそう言うと鈴木さんと甲斐選手に顔を向け直す。
そして、未だにお互いに信じられないと云った顔をしている二人に手をパンパンと叩いて練習の準備に入るのだった。
坂田さん自らスパーリング相手になるのはいつ以来だろうか?
鈴木さんも甲斐選手もやや緊張している。
特に甲斐選手はあの一件のやり取りもあってか、かなり緊張している様子だった。
「まずは獅童君から始めよう。心配はいらない。贔屓したりするつもりはないからね?」
「よろしくお願いします!」
甲斐選手が挨拶すると同時にゴングが鳴り、スパーリングが始まった。
坂田さんは普段の坂田さんらしくなく、前に出る。
ーーいや、あの動きは見覚えがある。
あれは天原選手と同じ動きだ。
甲斐選手はそれに対して、足を止めて打ち合う姿勢を取る。
「それではダメだ!自分から当たりにいったら、前回の二の舞になる!
もっと足を使うんだ!君はアウトボクサーなんだから足を止めず、リズムを忘れるな!」
坂田さんの言葉に獅童さんは応じるようにステップを踏んで坂田さんから距離を取る。
「そうだ。それでいい。それが正しいハードパンチャーとの対応だ。
クロスレンジでカウンター狙いを最初から狙っていては相手に翻弄される。
それに対応した武器を用意するんだ」
どうやら、坂田さんは本気で甲斐選手を贔屓とかなしで鍛えるらしい。
そんな事を考えていると会長さんに頭をはたかれた。
「何をボッとしているんだ。君の相手は彼だよ」
そう言って振り返ると俺と同じ身長差の金髪の男性が俺の事を待っていた。
「君には彼と練習して貰うーーと言ってもロードワークなど基本的な事からはじめて貰うつもりだ。まあ、頑張りたまえ」
こうして、俺は俺で合宿の練習を始める。
その間にも甲斐選手から鈴木さんにバトンタッチされ、再びスパーリングが開始されるのだった。
坂田さんもなにかに気付いたのか、鈴木さんに檄を飛ばす。
どうやら、甲斐選手とのスパーリングで何かを掴んだらしい。
ショートレンジやクロスレンジ、ミドルレンジ。それからオーソドックススタイルやサウスポーなど様々な距離や動きで坂田さんは鈴木さんを翻弄する。
二人のスパーリングを終えると坂田さんが一息吐く。
まだやれると言わんばかりに呼吸は整っているのが、恐ろしい。
本当に現役のままだったら、チャンピオンになっててもおかしくはない強さだ。
「獅童君との練習で見えた。宗成君には俺の技術を駆使するから、それに対応出来るように練習しよう。
それが天原選手への対策の糸口になるだろうからね」
こうして、最初の合宿のスパーリングは終わり、各々の課題に取り組む事となる。
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