その求婚、お断りします!

月椿

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王都編20

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レストはルナシークの顔と差し出された手を交互に見る。
どうせ先程まで戻って一曲くらい踊ろうと思っていたし相手がルナシークというだけの話だ、とどこか言い訳じみた事を思いながら、そっと手を重ねた。


「…ありがとう」

「い、いえ。一曲くらい踊らないと練習した意味がないですから」


新たに曲が始まりゆっくりとしたその曲に合わせるようにステップを踏む。腰に添えられた手やステップを踏む度に近く身体に、レストは酷く緊張する。
何とか曲を踊り終えてレストはふぅと一息をついてルナシークから離れようとした。


「…あの、ルナシーク様…」

「ん?」

「は、放してください」


腰に添えられていた手がいつの間にか背中に回され、ぎゅっと抱き締められるような体勢になっていた。
どくどくと激しく動く鼓動が伝わらないように、レストが身動ぎをするがあまり意味がない。


「レスト」


耳元で囁かれた甘い声に、レストは今度は耳まで真っ赤にする。


「あの時は、嫉妬して悪かった」

「…っ」

「だが、伝えた気持ちに偽りはない。…好きだ」


熱い吐息と共に吐き出された言葉に、レストはびくりと身体を震わせる。
ルナシークはそんなレストから少し身体を離し、青い瞳でじっと見つめた。
真っ赤な顔をして深緑の瞳でまっすぐに見つめてくるレストに、ルナシークの口が緩やかな弧を描く。


「レスト、キスしたい」

「そ、れは……」

「……駄目か?」


ルナシークの手が頬に添えられて、ゆっくりと親指で唇をなぞられる。
月明かりに照らされてキラキラと光る銀髪に、熱を秘めた瞳に、色気を感じさせる口元に、レストはクラクラとした。
困ったことに、嫌じゃないと思っている自分がいることに気づいてしまう。


「レスト」


はぁ、と熱い吐息がルナシークからこぼれる。
レストの同意がなければしない、という事なのだろう。そんなルナシークの優しさにレストの胸の中にじんわりと愛しさが、広がっていく。
どれだけ誤魔化しても結局はルナシークの事が気になるのだ。
レストはもう諦めて自分の感情を受け入れる事にした。


「ルナシーク様…」


片手でルナシークの頬をそっと指先で撫でる。
強引で、でも肝心なところは優しくて、そんなルナシークの事が好き、なのだろう。
それを自覚してしまえば、さらにドキドキと鼓動が高鳴った。
でも、この気持ちを伝えるには恥ずかしくて、代わりにゆっくりと目を閉じる。


「ルナシーク様」

「レスト、好きだ」


ルナシークはもう一度気持ちを伝えると、目を閉じたレストに優しく触れるだけの口づけを落とした。
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