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勝利の美酒とヒロイン(側室メイド)達

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「予備兵力を城壁の守りに回し、交代で休息を取れ。俺はエリス姫に報告に向かう」

 俺は指揮官としての指示を飛ばしながら、ミアを連れて城壁を降り、本営へと向かう。

「セイオウ様、万歳!」

「我らに勝利を!」

 俺の姿を見た兵士達から浴びせられる歓声。
 
 一か月にも及ぶ防衛線を勝ち抜いていることで、正規軍の男兵士達の信頼を勝ち取れたらしい。

「キャー、セイオウ様、一度でいいから抱いて!」

「ダメよ、夜のお勤めは、フロアメイドの方達のお役目なんだから」

「いいな~、あたしもセイオウ様のフロアメイドになりたい」

「さあ、お仕事お仕事。今夜も忙しくなるわよ。勝った日の兵士さんたちは、凄いんだから」

「きゃ、大変!」

「ウチらも稼がないとね~」

 娼館の娘達からの黄色い声もまた、心地よかった。

 兵士達が、商館(娼館?)の娘達が、国中の女達が称賛してくれる。
 
 学校一のイケメン優等生やエリート社員は、いつもこんな気分だったのだろうか。

 承認欲求が満たされ、さらなるやる気に繋がっていく。そして次々と素晴らしいアイデアがひらめいていく。
  
 良いサイクルの上にいるようだ。

「旦那様、今日もお疲れ様。あたしも頑張ったよ~」
 
 軽やかなステップで抱き着いてきたのは、俺のフロアメイドの一人であるレイナだった。

 最初に俺の眷属となった少女で、〝キラキラ女子〟という我ながら謎の特別職についている。

 軽やかな金髪をポニーテールにまとめた、青い瞳の美しい少女。スタイルは抜群で、ミニのナース服から伸びるすらりとした健康的な太ももと、くびれたウエスト、その上に張りのある大きな胸が弾んでいる。

「レイナ。そっちはどうだった?」

「うん、あたしがお見舞いに行くと、男の人はみんな嬉しそうだったよ」

 レイナには野戦病院の視察を命じていた。

 男性の患者は、若くて綺麗な女性の姿を見ることにより、免疫力が上がり、ケガが治りやすくなるという。

 特に軽症者には速やかに戦線復帰してもらいたかった。

「病院にばかり行かせてすまない。大丈夫だったか?」

「うん、平気だよ」

 普通のお見舞いですら、それなりにエネルギーを使う。野戦病院の視察は、精神的にハードな仕事だ。それでも明るく素直な性格の彼女は、無邪気で余裕の笑みを見せてくれる。

「まあ、みんなの視線はすごかったけどね」

 両手を大きく上げ、大げさに疲れたポーズを取るレイナ。短めにカットされた上着からは、細いウエストにかわいいオヘソが顔をのぞかせる。

 俺は思わずドキリとする。

 元々、この中世風の世界には古風なロングドレスしかなかった。

 何しろ女性用下着すらなかったのだ。

 そこに女性用下着を導入して半年になる。下着は、今ではこの国の主要輸出品になっていた。

 レイナはデザイナーとして、あるいは自らファッションモデルとして、俺の意見と自身の意見を組み合わせ、この国のファッションを大いに向上させたのだ。

 そのおかげもあって、この国の女性たちのファッションは、現代とさほど変わらないものになっていた。

「マスター、こちらにいらっしゃいましたか」

 最後に声をかけてきたのは、これまた小柄で可愛らしい、メイド服を着た少女だった。
 
 彼女の名前はユリス。俺の三人目のフロアメイドだ。 

 ややピンクがかった髪に、この国では短めのショートボブ。彼女は他人には肌を出さない中央諸国の出身だ。そのためミニスカートは恥ずかしいのか、膝丈のスカートを不安げに握っている。

「ご言いつけどおり、兵士の皆さんにお茶を配ってまいりました」

 甘いお茶をもって兵士達に配るというのが、俺が彼女に与えた命令だった。カフェインと糖分とビタミンCを含むお茶は体力回復に最適だ。
 
 加えて、彼女の特別職がお茶の効用を強化していた。

 特別職は〝メイド〟。

 家事全般に高い能力を有するセイオウである俺の加護を受けた特別職だ。

 彼女の入れるお茶は絶品で、兵士達からは〝紅茶の天使〟の二つ名で呼ばれている。

 この国の兵士達は油断するとすぐに酒を飲みたがる悪癖があるが、今ではユリスの配る紅茶の方を楽しみにしているらしい。

「ご苦労だったな、ユリス」

「お言葉、ありがとうございます」

 不安げな表情が、嬉しそうな微笑に変わる。小さな花が咲いたような、美しさがあった。

 首元の、宝石が模られたチョーカー風の首輪が、怪しい光を放つ。

 彼女は奴隷身分だったが、とある事情により身受けした。そのため立場的には俺個人の私奴隷となる。もっとも、扱いは他の二人と同じフロアメイドだったが。

「ふう、今日も大変な一日だった」

 エリス姫に報告を済ませれば、今日の公務は終わりだ。

 今夜も彼女達にたっぷり奉仕してもらい、癒してもらい、お返しに可愛がる。

 俺のレベルもどんどん上がるだろう。

 それがこの国のためでもあり、俺自身のためでもある。
 
『勝利の後に抱く女は、極上の美酒の味だ』 

 部下の将軍が言っていた言葉を思い出す。

 今日の防衛戦にも勝利した。今宵の勝利の美酒の味も、格別だろう。

 この戦争にも、きっと勝てる。

 その際の美酒の味は、さらに極上なものになるはずだ。

 彼女達はより美しく、その姿は、地上に舞い降りた女神のように輝いて見えるのだろう。

(ならば飲んでみたい、極上の美酒とやらを)

 三人の姿を見ながら、俺は切に願った。

 わずか半年前、
 
 〝セイオウ〟としてこの世界に召喚され、

 〝性王〟だとバレて下品だと追放され、

 エリス姫に拾われた時には、こんな未来は想像だにしていなかった。



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