1 / 1
第一話 子犬のぬいぐるみとの出会い
しおりを挟む
「ねぇねぇ、咲良ちゃん! 今日お家に遊びに行っていい?」
小学校からの帰り道。一緒に帰っていた女の子の言葉を聞いて私――春夜咲良は思わず少し俯いた。
「今日もお母さんいないから……」
「またー? 咲良のママいつもいないじゃん! ずっと前からお家で遊ぼうって約束してるのに、いつになったらお家行っていいのー?」
女の子――クラスメイトで仲良しの小鳥遊由奈ちゃんは不満そうに口を尖らせた。
「ごめんね……お母さん忙しいから……」
私のお母さんは女手一人で私を育ててくれているから、毎日とっても忙しくて、なかなか家にはいない。
そして、お母さんがいない時に友達を家にあげるわけにはいかないから、今までずっと約束を守ることができていなくて、今日もまた申し訳ない気持ちになる。
「もー仕方ないなぁ。じゃあ今日は私の家で遊ぼ!」
切り替えてにこにこと笑いながら言ってくる由奈ちゃん。いつも怒らずに明るく振る舞ってくれるところに助けられていたが、今日ばっかりはさらに申し訳ない気持ちになってしまった。
「今日はちょっとやらないといけないことがあって、遊べないの……」
「えーそんなぁ! 咲良ちゃんと遊べないなんて嫌だ!」
「ごめんね……」
小さな声で謝ることしかできない。俯いていると、由奈ちゃんの雰囲気が変わった。
「ねぇ、咲良ちゃん。咲良ちゃんって私のことどう思ってるの?」
「えっ?」
――どういうこと?
意味がわからなくて由奈ちゃんの方を見ると、由奈ちゃんは厳しい表情を浮かべていた。
そこに普段の明るい彼女はいない。
「いつもお家には入れてくれないし、今日は遊べないって。全然こっち見てくれないし。私は咲良ちゃんのこと親友だと思ってたけど、咲良ちゃんは私のこと嫌いなの?」
「そんなことないよ!?」
びっくりして思わず叫んでしまう。
一年生から四年生の今に至るまで、ずっとクラスが一緒で毎日のように遊んでいる由奈ちゃんのことが嫌いなわけがない。
むしろ、いつも上手く話せなくてなかなか友達が作れない私にとって、一緒にいてくれて仲良くしてくれる由奈ちゃんは大好きな親友だ。
だが、どう伝えようか迷って黙り込んでいるうちに、由奈ちゃんの表情はどんどん険しくなっていく。
「もういい! もう咲良ちゃんとは遊ばない!」
「あっ、待って!」
慌てて止めるが、由奈ちゃんは振り返ることもせずに走って行ってしまった。
「そんな……どうしたら良かったの……? 私だって由奈ちゃんのこと大好きなのに……」
親友に嫌われたことがショックで、立ち尽くしてしまう。
その時だった。
『ねぇ、君! なんで泣いてるの?』
「きゃあ!」
唐突に声が降って来て、思わず悲鳴を上げる。
「ど、どこから声が……?」
『ほら、ここだよ、ここ!』
小さな男の声がする方を向くと、そこには……
「子犬のぬいぐるみ……?」
茶色い子犬のぬいぐるみが、路地の端に落ちていた。
小学校からの帰り道。一緒に帰っていた女の子の言葉を聞いて私――春夜咲良は思わず少し俯いた。
「今日もお母さんいないから……」
「またー? 咲良のママいつもいないじゃん! ずっと前からお家で遊ぼうって約束してるのに、いつになったらお家行っていいのー?」
女の子――クラスメイトで仲良しの小鳥遊由奈ちゃんは不満そうに口を尖らせた。
「ごめんね……お母さん忙しいから……」
私のお母さんは女手一人で私を育ててくれているから、毎日とっても忙しくて、なかなか家にはいない。
そして、お母さんがいない時に友達を家にあげるわけにはいかないから、今までずっと約束を守ることができていなくて、今日もまた申し訳ない気持ちになる。
「もー仕方ないなぁ。じゃあ今日は私の家で遊ぼ!」
切り替えてにこにこと笑いながら言ってくる由奈ちゃん。いつも怒らずに明るく振る舞ってくれるところに助けられていたが、今日ばっかりはさらに申し訳ない気持ちになってしまった。
「今日はちょっとやらないといけないことがあって、遊べないの……」
「えーそんなぁ! 咲良ちゃんと遊べないなんて嫌だ!」
「ごめんね……」
小さな声で謝ることしかできない。俯いていると、由奈ちゃんの雰囲気が変わった。
「ねぇ、咲良ちゃん。咲良ちゃんって私のことどう思ってるの?」
「えっ?」
――どういうこと?
意味がわからなくて由奈ちゃんの方を見ると、由奈ちゃんは厳しい表情を浮かべていた。
そこに普段の明るい彼女はいない。
「いつもお家には入れてくれないし、今日は遊べないって。全然こっち見てくれないし。私は咲良ちゃんのこと親友だと思ってたけど、咲良ちゃんは私のこと嫌いなの?」
「そんなことないよ!?」
びっくりして思わず叫んでしまう。
一年生から四年生の今に至るまで、ずっとクラスが一緒で毎日のように遊んでいる由奈ちゃんのことが嫌いなわけがない。
むしろ、いつも上手く話せなくてなかなか友達が作れない私にとって、一緒にいてくれて仲良くしてくれる由奈ちゃんは大好きな親友だ。
だが、どう伝えようか迷って黙り込んでいるうちに、由奈ちゃんの表情はどんどん険しくなっていく。
「もういい! もう咲良ちゃんとは遊ばない!」
「あっ、待って!」
慌てて止めるが、由奈ちゃんは振り返ることもせずに走って行ってしまった。
「そんな……どうしたら良かったの……? 私だって由奈ちゃんのこと大好きなのに……」
親友に嫌われたことがショックで、立ち尽くしてしまう。
その時だった。
『ねぇ、君! なんで泣いてるの?』
「きゃあ!」
唐突に声が降って来て、思わず悲鳴を上げる。
「ど、どこから声が……?」
『ほら、ここだよ、ここ!』
小さな男の声がする方を向くと、そこには……
「子犬のぬいぐるみ……?」
茶色い子犬のぬいぐるみが、路地の端に落ちていた。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
不吉な九番目の子だろうと、妾が次代のドラゴニア皇帝に決まっておろう!
スズキヒサシ
児童書・童話
妾はドラゴニア帝国皇帝の九番目の子である。
九番目は不吉だなどと、下々の民が言うておるようじゃが、そんなものは関係ない。
誰がなんと言おうと、妾が次代のドラゴニア皇帝になる!
妾の宮では毎日、何かしらの事件が起きるのでな。
日記でもつけてみることにした。
先に言うておくが、読めるのは妾が次代のドラゴニア皇帝であると認め、崇める者のみじゃ。
文句があるヤツはお呼びじゃないからの。
あと、銀河一かわゆい妾に懸想しても良いが、妄想だけにとどめておくのじゃぞ。
妾は竜族。人族とは一緒にはなれぬからな。
追記:学園もの→バトルもの→恋愛ものになる予定です。
夏休み ユナちゃんの小さな冒険物語
ゆきもと けい
児童書・童話
ユナちゃんは小学校3年生の内気な女の子。夏休みのある日、コンビニへ買い物に行くと一匹の猫と出会う。ひょんなことからユナちゃんはその猫ちゃんと小さな冒険をしてみる事になった。
たった5~6時間の出来事を綴った物語です。ユナちゃんは猫ちゃんとどんな小さな冒険をしたのでしょうか・・・
読んで頂けたら幸いです。
ロマシェア 〜バラバラなシェアメイトたちのひみつ〜
夏
児童書・童話
中学二年生の中星花(なかぼしはな)は
母の仕事の都合で、叔父の三国(みくに)が管理する浪漫荘でお世話になることになった。
シェアハウスの形式をとっている浪漫荘には
花以外に四人の同い年の子がいるという。
しかし花は、そこで食い違いがあることに気づいた。
なんと、花以外のシェアメイトは
全員「男子」で──!?
【完結】泡となって消えた
唄川音
児童書・童話
魔法使いは魔力の源であるせっけんを握って生まれてくる。ウィロウ・ウロロは、せっけんを握って生まれてきた。
不思議な旅人の女性、キュス・スルベスに使い方を教えられたウィロウは、人を助けるために魔法を使う。
しかし魔法は、ウィロウが思っているよりもずっと強く人の心を蝕むものだった。それを知ったウィロウは……。
レイヤリオンハルカ!
一刀星リョーマ
児童書・童話
浦山ハルカは小学生コスプレイヤー、そしてコスプレで現実に現れる敵キャラクターと戦うレイヤリオンである!
バトルにコスプレ、学校生活…ハルカの日常はどうなるの?
魔法道具のお店屋さん
森野ゆら
児童書・童話
わたし、セアラ。
お兄ちゃんのハクトと一緒に魔法道具屋さんをしてるんだ。
ライバル店は、大型魔法道具屋のオーシュラン!
って言っても、うちの店はボロボロで見向きもされてないけどね。
オーシュランの一人息子、ミレイとは同じ学園でちょっとやりにくい。
ある日、材料取りにでかけたら、洞窟で魔術師に遭遇!
あれ?もしかして……
昔、お兄ちゃんに魔術をかけて、お父さんの記録書を奪った魔術師じゃない?
小さな魔法道具屋、セアラががんばるお話です。
【完結】僕のしたこと
もえこ
児童書・童話
主人公「僕」の毎日の記録。
僕がしたことや感じたことは数えきれないくらいある。
僕にとっては何気ない毎日。
そして「僕」本人はまだ子供で、なかなか気付きにくいけど、
自分や誰かが幸せな時、その裏側で、誰かが悲しんでいる…かもしれない。
そんなどこにでもありそうな日常を、子供目線で。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる