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第一話 子犬のぬいぐるみとの出会い

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「ねぇねぇ、咲良ちゃん! 今日お家に遊びに行っていい?」

 小学校からの帰り道。一緒に帰っていた女の子の言葉を聞いて私――春夜はるや咲良さくらは思わず少し俯いた。

「今日もお母さんいないから……」
「またー? 咲良のママいつもいないじゃん! ずっと前からお家で遊ぼうって約束してるのに、いつになったらお家行っていいのー?」

 女の子――クラスメイトで仲良しの小鳥遊たかなし由奈ゆなちゃんは不満そうに口を尖らせた。

「ごめんね……お母さん忙しいから……」

 私のお母さんは女手一人で私を育ててくれているから、毎日とっても忙しくて、なかなか家にはいない。
 そして、お母さんがいない時に友達を家にあげるわけにはいかないから、今までずっと約束を守ることができていなくて、今日もまた申し訳ない気持ちになる。

「もー仕方ないなぁ。じゃあ今日は私の家で遊ぼ!」

 切り替えてにこにこと笑いながら言ってくる由奈ちゃん。いつも怒らずに明るく振る舞ってくれるところに助けられていたが、今日ばっかりはさらに申し訳ない気持ちになってしまった。

「今日はちょっとやらないといけないことがあって、遊べないの……」
「えーそんなぁ! 咲良ちゃんと遊べないなんて嫌だ!」
「ごめんね……」

 小さな声で謝ることしかできない。俯いていると、由奈ちゃんの雰囲気が変わった。

「ねぇ、咲良ちゃん。咲良ちゃんって私のことどう思ってるの?」
「えっ?」

 ――どういうこと?
 意味がわからなくて由奈ちゃんの方を見ると、由奈ちゃんは厳しい表情を浮かべていた。
 そこに普段の明るい彼女はいない。

「いつもお家には入れてくれないし、今日は遊べないって。全然こっち見てくれないし。私は咲良ちゃんのこと親友だと思ってたけど、咲良ちゃんは私のこと嫌いなの?」
「そんなことないよ!?」

 びっくりして思わず叫んでしまう。
 一年生から四年生の今に至るまで、ずっとクラスが一緒で毎日のように遊んでいる由奈ちゃんのことが嫌いなわけがない。
 むしろ、いつも上手く話せなくてなかなか友達が作れない私にとって、一緒にいてくれて仲良くしてくれる由奈ちゃんは大好きな親友だ。

 だが、どう伝えようか迷って黙り込んでいるうちに、由奈ちゃんの表情はどんどん険しくなっていく。

「もういい! もう咲良ちゃんとは遊ばない!」
「あっ、待って!」

 慌てて止めるが、由奈ちゃんは振り返ることもせずに走って行ってしまった。

「そんな……どうしたら良かったの……? 私だって由奈ちゃんのこと大好きなのに……」

 親友に嫌われたことがショックで、立ち尽くしてしまう。
 その時だった。

『ねぇ、君! なんで泣いてるの?』
「きゃあ!」

 唐突に声が降って来て、思わず悲鳴を上げる。

「ど、どこから声が……?」
『ほら、ここだよ、ここ!』

 小さな男の声がする方を向くと、そこには……

「子犬のぬいぐるみ……?」

 茶色い子犬のぬいぐるみが、路地の端に落ちていた。















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