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異世界転移したけどループするのは友人だった

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 俺の名前は矢代秋。
 ちょっとした工作が得意で、手先が器用。
 大食い、早食いが得意のそこそこ陽キャ人間だ。
 どんなに食っても太らないので、底なし人間とも言われている。

 そんな俺は運動部である機体のホープ、俺の人生のベストフレンド冬山冬夜と共に異世界に転移してしまった。
 異世界転移といったら定番のチート能力で無双とかツエ―とかハーレムだよな。

 でもなぜか俺に能力はなし。
 あったのは冬夜のループ能力だけだった。
 しかも死んだら過去に飛ぶという、普通の人間には最悪の奴。

 こんなんどうやって使うんだよ。

 なんて思っていたら、まさか使わなくちゃいけない面がやってきた。
 唐突だが、数年前から生き別れだった姉さんと異世界でばったり再会しちまったからな。

 でも、姉さんは陰険貴族のお屋敷の可愛いペットになっていたらしい。
 姉さん可愛いから犬耳とか猫耳にあうだろうな。
 なんてボケをしたかったけど、ところがどっこいシリアスだ。こんにちは。

 こういっちゃなんだか骨になった姉さんと抱擁する趣味はないぞ。
 陰険貴族の屋敷に潜入した俺は、姉さんと(感激の×)再会を果たす。

 そういうわけで俺は即断、友人をさくっと即殺。
 判断が早いのが俺のもう一つの取り合えだ。
 即断の秋、夏と冬の間ですぐ通り過ぎる秋だ。

 数日前まで姉さんは生きていたらしいから、こりゃ仕方がない。

 友人と家族を同じ天秤に乗せて釣り合わせるのが理想だったけど、やっぱり僅差で家族が重要だった。

 でも、なぜか俺も過去に飛んでいたのが意味不明だけど。

 最悪決断だけして、何も知れない過去の俺が冬夜に即殺される事も考えたんだけど。

 逃げる俺を見逃すくらいは、ベストフレンドしてた期間が長すぎたんかね。

 もちろん冬夜には、当然恨まれましたとさ。
 ちゃんちゃん。

 これで絶交だな。

 いくらやむを得ない事情があるとはいえ、自分の命をさっくり殺害する奴をこれから友達とは呼べないだろうぜ。

 そこそこ陽キャな俺でも、そんな奴はごめんだ。

 友人と袂を分かった俺は、陰険貴族の屋敷から助け出した姉さんと共に異世界スローライフに励むぜ!

 辺境に移り住んで、ボロ小屋を借りて、リスタート。

 ループ能力はあてにできないから、慎重に生きなきゃな。

 メンタル死んでる姉さんを、俺の気用な手先で笑わせながら、スローライフしていくぜ。

 ほら、おててとおてての間から、くねくね芋虫さんが出てきたよ姉さん。

 え? 可愛くなって? こりゃ失敬。

 なんてやっていたら、またトラブルが発生だよ。

 おいおい、チート能力俺にはよこさなかったくせに、ストーリーだけ異世界ファンタジーの定番をなぞるなよ。

 愛すべき隣人のお姉さん=美少女お助けキャラが、困った事になっているぜ。

 なんでもすごい魔法使いだったその隣人さんは、悪い組織に家族を人質にとられてしまったらしい。

 そんんで王都を壊滅させる作戦に強制参加させられているとか。

 ははは、こりゃ参ったな。

 俺も姉さんも普通の人間。

 ちょっと頑張ってみたけど、どうにもなりゃしないぜ。

 王都でさくっと死にそうだ。

 友人を裏切った罰を受けたもんかもしれないな。

 でも、姉さんを道づれにするのはいただけないぜ運命様。

 いくらこそこそしてる俺を見つけて、姉さんが勝手にくっついてきたとはいえ、な。

 もうちょっと展開ねじまげて姉さんだけ助けちゃくんないかねぇ。

 なんて思っていたらループ発動。

 過去系フレンドの冬夜が、能力を使って過去に飛んだらしい。

 どうやら、俺と別れた後、良い人を見つけて、いい感じに関係が盛り上がっていたそうだ。

 まあ、冬夜は良い奴で面倒見が良くて、頼もしくて面白い奴だから、そうなってるのは不自然じゃないけどな。

 そのお相手が隣人のお嬢さんだったのは驚きだ。

 そういうわけで、どういうわけか運命様の悪戯だ。

 俺は冬夜と協力する事になって、王都壊滅作戦を阻止する事になった。

 あ、姉さん姉さん。

 何やってんの?

 え、自分にも能力があるんだって?

 俺達の話をこっそり聞いていた姉さんが衝撃のカミングアウト。

 実は姉さんには、未来に飛ぶ能力があったらしい。

 使いどころがまったくないし、生命力が著しく消費されるとかいう微妙な能力だな。

 死にかける事で発動するらしいけど、体調が万全じゃないと発動しないとか。

 冬夜までとはいかないけど、姉さんもなかなかヘビーな能力だな。

 俺だけ無能かよ。

 姉さん、俺が信用できなかったとかで、能力打ち明けなかったわけじゃないよね。ちらっ。

 まあ、そこは俺が責められる立場じゃないしな。

 そういうわけで、話し合いで作戦を立てよう。

 王都にあるいくつもの犯罪組織の拠点。

 そこにむかって同時に三人で、その拠点を抑えなくちゃいけない。

 冬夜がループ能力を駆使して一か所なんとかして、隣人さんが一か所なんとかするはず。だから、俺と姉さんで残りの一か所を何とかしなくちゃな。

 冬夜は短期間ループを使って動けばある程度なんとかなるってさ。

 俺の過去系フレンドやばいな。

 隣人さんは元からすごい人だったから、問題なし。

 後は俺と姉さんだ。

 一つの拠点に数人の構成員。

 俺達は戦闘にはからきしだから、全員を倒す事は難しい。

 だからリーダーを抑えるという一点突破で行こう。

 そんなわけであれこれ考えた俺は、天井裏から忍び込んで、地味な作戦を開始。

 玩具のマジッ〇ハンドを使って、煙幕をつかって、改造花火を使って、なんとかリーダーの立ち位置を誘導して、姉さんに無力化してもらったぜ。

 ふいー。

 つかれたつかれた。

 そういうわけで、王都壊滅作戦は犠牲者もなく終わったのだった。

 え?冬夜とは仲直りしないのかって。

 できるわけないじゃん、ばっか。

 え?冬夜はそこそこ仲直りしたそうにしてるって?

 え?

 驚いてたら冬夜が言ってきた。

 今回の作戦で冬夜がループしたのは累計百十二回。

 それだけ俺の時間がなかったことになったらしい。

 意識は一緒に巻き戻ってるけど、まあ俺の経験はその度にリセットされてるわな。

 短期間とは言え、自分の願いのために俺達の時間を消した冬夜は思うところがあったらしい。

 殺されたことにはまだ思うところがあるけど、無条件には責められる立場じゃないって。

 うーん。

 俺はべつにお前に巻き込まれても文句言えない立場よ?
 自分の都合で裏切ったんだから、利用される事は視野にいれているわけで。

 俺の過去系フレンドちょっと心広くない?

 俺としては永遠に絶交される事も視野に入れていたんだけどな。

 まあ、完全に復縁したわけじゃないし。

 共に並ぶくらいは許してやるよ、けっ。

 って感じなんだろうな。

 だから俺は最後に冬夜と握手して、このシナリオを締めくくるぜ。

 はいあーくーしゅー。
 
 にぎにぎ。

 どうだった?

 泥臭くて面白みのない話しだったかもしれないな。

 まあ、俺たちみたいなそこそこ普通の人間が織りなすストーリーなんてこんなもんさ。

 きっと、これからもうだうだ、地道に人生歩いていくんだろ。

 あ?どうしたんだ姉さん。

 向こうで薄幸そうな幼子が助けを求めてる?

 またまた~、冗談でしょ~。

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