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10 人類哀の魔女ヒューマ

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 あるところに、魔女がいました。

 魔女は人類が大好きです。

 だから今日も、たくさん大好きな人類と、たくさん遊ぶ事にしました。

 


「お前より不幸な人間は世界にたくさんいるんだ。だからその程度の事で喚くなよ」

 一人の男性は可哀そうな女性を虐めていました。

 だから、ハコニワの魔女は男性ににっこりと笑いかけます。

「そうだね。だからその程度の事で苛ついているあなたも不幸じゃないから、耳障りな声で喚かないでくれるかな。あなたは健康だし、五体満足だし、死んでないから不幸じゃないもの」

 魔女は男の口を開かないようにしました。

 男は何かを言いたそうにしました。

 魔女は男に「その程度の事、全然不幸じゃないよ。だって私は、何も言えなかったけど、不幸じゃないもの」

 一人の男はハコニワの魔女を信じられないような目で見つめました。




「人に合わせられないのは思いやりのない人間よ。なんで私達みたいにまともに生きてくれないの。そんなのはただの我儘よ」

 一人の女性が可哀そうな男の子を虐めていました。

 だから、ハコニワの魔女はその女性ににっこりと笑いかけます。

「そうだね!あなたの言う通り。この子は我儘だよ。だからまともにしないとお仕置きするよって教育するね」

 ハコニワの魔女は、鞭を取り出して、男の子に普通になるように言いました。

 けど、男の子にはその能力がなかったので、自ら命を絶ちました。

「ほら、死んだからまともになったよ。普通になれない人は、他の人の迷惑を考えて自分からいなくなるものだよね。だからそうさせたよ。これってとってもまともだよね」

 女はまともではなくなりました。

 とてもおかしくなってしまった女は自分を元に戻してほしいと魔女に頼みます。

「あなたはまともだよ。だって私をまともにしようとした人達と同じことを言っているもの。その人たちは皆からまともだって言われてたから大丈夫。あなたは私が何かをしなくても大丈夫だよ」

 一人の女は、ハコニワの魔女を信じられないような目で見つめました。






「まわりくどい言い方をせずにはっきり言ったらどうだ!遠まわしすぎて伝わらないんだよ」

 一人の老人が可哀そうな男性に詰め寄っていました。

 だからハコニワの魔女はにっこりと笑いかけます。

「わかった、正直になる魔法をかけてあげるね」

 男は正直になったので、思った事を喋りました。

 すると、国の中心部である王宮の中の治安が悪くなってしまいました。

 政策がうまくいかず、腐敗していくばかりです。

 そして久しぶりに老人の目の前にやってきた男は、どこからかやってきた黒い服の集団に殺されてしまいました。

「王子だったなんて知らなかったんだ。頼む、無かったことにしてくれ。たくさんの国民が困ってるんだ」
「自分の失敗をなかったことにするなんて、良くないよ。生きて償っていくのが大切な事なんじゃないかな。だから魔女なんかに頼らず、自分の力で何とかしなくちゃね」

 一人の老人は、ハコニワの魔女を信じられないような目で見つめてきました。




「罪を犯した人間は幸せになるな!殺してしまえ!」
「あなたも虫を殺した罪があるから幸せになっちゃいけないんだよ。命はどれも大切だよね。罪を償って死んでほしいな」

「これから犯罪者になる奴がいるぞ!俺達を巻き込むにちがいない」
「あなたも、そうなるかもしれないね。やだな、殺されたくないから早く殺しちゃわないと!」

 魔女は人間を愛している。
 哀ばかりを生む人間を。

 魔女は和解を許さない。
 ただただ人を叩き潰すだけ。

 魔女は人を愛している。
 これが魔女の愛し方。

 哀ばかりを生む人間の愛し方。

 そんな人間を見ても、魔女が人間を飽きる事はない。
 だって、彼らがいてくれたから、今の魔女が存在するのだから。




 とある場所。
 とある時間。
 とある夫婦の間から、赤ん坊が生まれた。

 その赤ん坊を見た誰かが、口を開く。

「これは災いの星の子供だ。生きているだけで人を不幸にする。死んで当然だな」

 やがて成長した幼子を見た誰かが、口を開く。

「理解できない行動ばかりだ。愛せない。不快だ。きっと人間じゃないに違いない。何もできないようにしないと」

 それから少しだけ成長した女の子を見た誰かが口を開く。

「どれだけ教育しても、俺達の様にまならなかった。失望だ。貴重な跡取りだったのに、もっと普通の子供がほしかった。何か大きな事をしでかす前に処分しないと」

 
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