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〇10 穴のあいた少年

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 穴のあいた少年。

 その少年には、ぽっかりと大きな穴があいている。

 あまりにも穴が大きすぎるため、少年は自分の形をたもてない。

 だから、走る事、歩く事どころか、その場から少しも動けない有り様。

 すぐに、体がくずれてこの世から消えてしまいそうだった。

 でも、手を伸ばしたところに穴を埋められそうな土があった。

 何気ない大地の上で輝くその土は、赤土だった。

 それは、しっかりと穴をふさいでくれそうな土。

 少年はその土を使って、穴をうめはじめた。

 すると、少年は動けるようになった。

 だからその土を少年はずっと大事にしようと考え、赤土のある場所を守る事にした。

 けれど、ずっとずっと赤土を守っているうちに、少年はなぜそれを守っているのか忘れてしまった。

 赤土をもとめてやってきた人たちを追い返しながら、埋まっているはずの穴に対して、空虚さを感じながら過ごしていた。


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