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第2話 悪役令嬢の少女時代
しおりを挟む思い返せば、自分に悪の芽が出たのはほんの五歳頃の事だった。
私の上には数人の姉がいた。
可愛がられて育つ姉が。
みな、容姿美しく、賢く、礼儀正しい。
理想の淑女といえる姉達。
そんな姉に比べて私は平凡で、鈍くさかった。
頭も良くなくて、見る者が思わず見とれてしまうような美しい容姿でもなかった。
だから両親が、そんな私より姉達を贔屓してしまうのは仕方のない事だったのかもしれない。
けれど、そこでほんの少しでも、その贔屓を申し訳ないと思っている家族がいたならば、まだマシだっただろう。
悪の芽が出たとしても、それはほんの小さなものだったに違いない。
けれど、そこには贔屓を当然のように思う家族がいるだけだった。
孤独を感じた私は、順調に悪の芽を育んでいった。
私は、家族の傍に居場所を求めなくなった。
勉強の為につけられた家庭教師も、ことあるごとに姉達と自分を比べてくる。
どうしてできない。
姉はすばらしいのに、どうして同じ血を引いている妹はできない。
できないのは、才能がないからだ。努力してないからだ。
なまけもの。やくたたず。できそこない。
時間をかけるだけ無駄だ。
無駄な事に、手を煩わせないで
その分、姉達に時間を使った方がまだまし。
そう事あるごとになじってきた。
家の者はみんな姉贔屓。
使用人もだ。
だから、その頃の私に相談できるものなどいなかった。
最初は一生懸命に努力していたけれど、すぐに諦めるようになった。
だから、貴族の社交界に居場所を求めた。
友達を作ろうとした。
でもそこは、できそこないである私をなじって、優越感を味わいたい者達ばかりだった。
結局、そこでも同じことの繰り返しだった。
姉と比べられる毎日だった。
私は、孤独な少女時代を過ごした。
そんな私に転機が訪れた
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