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〇01 幸せにしたかった
しおりを挟む僕は完璧な人生を歩いてきたつもりだった。
なのに、なぜ。
みんなそんな顔をしているのだろう。
僕は自分で言うのもなんだけど、良い所のお坊ちゃんだ。
先輩には、お似合いの婚約者を紹介してあげたのに。
幼なじみには、無謀な夢は諦めろって諭して、堅実な道を歩かせてあげたのに。
友人には、人気者になれるように、ガラの悪い人間達がクラスメイトに声をかけてそれを助けるヒーロー、なんてシナリオをプレゼントしてあげたのに。
皆どうして、そんな顔をして、僕を見ているんだろう。
「私は君が好きだったんだよ。どんな素晴らしい地位を持った婚約者よりも、君の方が良かった」
「たとえ挫折してしまうものだとしても、応援して欲しかったな。現実だけを見て過ごすのは窮屈だった」
「俺はそんな風にして、皆を騙したかったわけじゃない。そのままの自分を、普通の努力をして認めてもらいたかった」
先輩は、猟奇趣味があった婚約者に殺されてしまった。
幼なじみは、急成長中の大手のブラック会社に使い潰された。
友人は、多くの人たちのリーダとなった事で、不祥事の矢面に立たされて解雇された。
何がいけなかったのだろう。
お金があれば人は幸せになれるはずなのに。
安定した会社に入れば、将来の心配はしなくてすむはずなのに。
人気者になれば、困った時でも多くの人が手を貸してくれるはずなのに。
昔の僕には幸せになった、皆の姿しか見えなかったと言うのに。
何を間違えたんだろう。
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