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第一章 ウルベス・ジディアラーツ
第14話 今、怨霊に追いかけられてます
しおりを挟むで、……さっそくバッドエンドの危機となった。
私は今、生死の危機に瀕していた。
シーンが飛んで唐突にそんな事を言われても意味が分からないと思うが、もうしばらくつきあってほしい。
いやもったいぶっているわけではなく、割と必死なので余裕がないのだ。
あの後私達は、ここまで来る時に使った馬車に戻ることなく、平原を走り回る事になった。
周囲には白い霧がたちこめていて、視界は最悪。数メートル先も見通せない。
「はぁ、はぁ……っ」
「大丈夫か」
「はい」
そんな中で、私とウルべス様はとある存在から必死で逃げ回っていた。
護衛や使用人の姿はない。
ウルべス様が危険を察知したすぐ後に霧が満ちてしまったので、彼等とはぐれてしまったのだ。
「無理はしない方が良い。きついなら、私が運ぼうか」
「いいえ、お気遣いなく、それに、そんな事をしたらウルべス様が走りづらくなてしまいますわ」
「私とて男だ、君一人くらい何とでもない。こう見えても子供の頃は様々な場所を駆けまわっていたものでね、体力はある」
「まあ、頼もしい事ですわ」
微笑みつつも丁重に辞退。
とりあえず、余裕がなくなった時の為にまだ取っておく事にする。
こう見えても体力があるのは、こちらも同じだ。
私もトールの話では、子供の頃はやんちゃだったのだから。
しかし、
白々しく思いつつ私は呟く。
「幽霊なんて本当にいたんですのね」
この靄の中で逃げ回る事になった原因について、考えを巡らせた。
強制イベント。
それはこの場所に来たら必ず起こるイベントだ。
それは、私とウルベス様がこの場所に来ると、エルフに恨みを持った怨霊がこちらを呪い殺そうと襲ってくるというイベント内容。
だが、ゲームで画面越しにイベントをやるのと、実際で体験するのとは大違いだった。
これほど二次元と空想の差が分かるものはそうそうないだろう。
具体的な礼を上げると……。
冷気を感じたり視線を感じたり、気配を感じたり怨念を感じたり、あるいは背筋がつめたくなったり鳥肌が立ったり……、だ。
一週目の時は本当に驚いた。冷や汗がとまらなくなって、心臓がおかしくなったかと思うくらいの動機だった。
おどろおどろしいシーンで不気味な音楽が流れている中、安全な場所でボタンを押していくのとはわけが違う。
心霊現象のあれやこれやは強烈だ。
実際、この世界で一番最初に怨霊に遭遇してしまい追いかけられた時は、いつ心臓が止まってもおかしくないなと思ったぐらいだ。
結果的に一周目ではウルベス様がいてくれたおかげで生き残ったけれども、生きた心地がしなかったし強烈なトラウマを植え付けられた、その後も何度もその時の事を夢に見てしまったくらいだ。
怪我をしたり血が出たりするのは痛みを感じないので私は別に良いのだが、この世ならざるものに追いかけられるのは自分の体が傷つくのとは別の恐怖だった。
そんな恐怖の光景の中、私はいる。
ちょっと説明の時系列を飛ばしてしまったり、乱れてしまうのも仕方がないだろう。勘弁してほしい。
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