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第一章 ウルベス・ジディアラーツ
第13話 キャラクター専用イベントを前倒しします
しおりを挟むさて、彼との散歩は非常に楽しいし有意義なのだが、ただ遊びに来たわけではなかった。
ここには、あるイベントを消化しにきたのだ。
「ラブ・クライシス」では攻略対象の好感度で、バッドエンドルートに行くかハッピーエンドルートに行くか決まるのだが、それ以外でもエンド分岐が起こる事があるのだ。
それがこの今の状況。
このアイリーンの花畑を訪問するという出来事は、ゲーム内にあったウルベス様専用の大きなイベントだ。
通常のイベントとは異なり、選択肢の重みや好感度の増減が激しくなるため、ここでヘタを打つと、一気にバッドエンドになりやすくなってしまう。
更にイベント中には絶対に間違えられない分岐点があって、そこで間違った選択をしてしまうと、どんなに好感度をあげていようとも、問答無用でヤンデレ化した攻略対象の手によって殺害されてしまうのだ。
だから今回の私は……私が一週目で死ぬ事になった「隠し攻略対象に刺殺される」イベントが来る前に、早めにそれらイベントを消化する事にしていた。
というわけで私達は、その時が来るまで散歩したり、あらかじめ用意しておいたというウルベス様のお弁当を食べたりして、(表面上は)平和なお出かけの時間を満喫した。
「ウルベス様は、意外と手料理がお上手なのですわね」
その中でも驚きなのが、彼の自炊能力の高さ。
「そうか。他の所がどうかは知らないが、私が所属する部隊では、剣の修行ばかりにあけくれた者達が多いからな」
雰囲気からして細かい事が好きそうな彼は、騎士団の中でも調味料の加減などが得意で、彼の作った食事はかなり他の者から有難がられているらしい。
所属するところが違うお兄様から聞くほどなので、よっぽどだろう。
ちなみに私の自炊能力は平均だ。
致命的な程悪くはないが、賞賛されるほどでもない。
こういう時は女性であるこちらが用意するのが、乙女ゲームとしては普通の事なのだろうが、ウルベス様が楽しんでいるようなので、謹んで手料理疲労の場から降りさせてもらう事にした。
決して自信がなかったり、前に作ってみた料理がとても食べられない何かになってしまったわけではない。
私の自炊能力は普通なのだから。
そして、二時間程が経った時だ。
「む……これは?」
ウルべスが周囲の変化を感じ取って、横で歩いていた私の腕を掴んだ。
「婚約者殿、私の傍から決して離れないように。どうやら招かれざる存在が……無粋な客が来てしまった様だ」
イベントの発生だ。
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