ザ・ライト文芸(女性向け) 短編まとめ場所

透けてるブランディシュカ

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〇37 歌ヶ崎小鳥は歌えない

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 歌ヶ崎小鳥は歌えない。

 小鳥のように綺麗な声を持っていても。歌えない。

 彼女は幼い頃から歌うのが好きだったが、ある時を境に歌えなくなった。

 それは、家族の死が原因だった。

 彼女の母親は、彼女の歌を愛し、常に褒めていた。

 だから小鳥は母親のために、毎日歌っていた。

 けれど母親が亡くなってから、歌う意味がなくなってしまった。

 歌に感情が宿らなくなって、それは歌とは呼べないものとなった。

 周囲は小鳥になんとか歌わせようとしたが、声を発してもそれは以前のような美しい歌にはならなかった。

 小鳥は歌うのを諦めて、そのまま生きるのだと思っていた。

 しかし、変わるかもしれない、一つのきっかけがあった。

 ある日、小鳥は一人の女性と出会った。

 その女性は、小さい頃に見た歌唱コンクールのことをずっと覚えていた。

 そこに出場していたとある女の子の歌が、凄く綺麗で忘れられないと。

 もう一度聞きたいと、その女性は言った。

 小鳥と女性は仲良くなって、友人となり、誕生日会を一緒に過ごすくらいの仲になった。

 小鳥は、仲良くなった友人のためなら、もう一度歌えるような気がした。

 だから、友人の誕生日が来るのを心待ちにしていた。

 しかし友人は、ちょっとした事故に巻き込まれて亡くなってしまった。

 小鳥は、ついにそれから先も、歌うことができなくなってしまった。


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