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〇14 ガラスのかけら
しおりを挟む子供のころから、自分の顔を見るのが嫌いだった。
だって、ブスだから、美人じゃないから。
この世の中にある物で、鏡は一番嫌い。
でも、光の反射でたまに顔が見えてしまうガラスも、結構嫌い。
夫が仕事をしている間、家の中の手入れをしっかりとこなすのが妻の役目。
だから、それを粛々と果たす。
けれど。
パリン。
ガラスのコップが割れてしまった。
片づけないと。
破片を踏んづけたら大変だから、床の上を丁寧にしっかり掃除しないといけない。
だってあの人が「お前は真面目に頑張るくらいしか取り柄がないんだから」って、言ってたものね。
でも。ああ、いやだ。
ガラスは割れやすいから、買いたくないっていったのに。
それをあの人が無理やりレジに持っていくから。
「俺の言う通りに選べば間違いないんだ」って、言って。
本当に嫌になっちゃうわ。
思い込みが強いし、見栄っ張りなのよ。
家具とか食器とかを買うってなると、いつも見た目が良いのにしたいって言って。
私が何か意見しても、間違いだって決めつけてくるし。
手入れとか、掃除の事とかちっとも考えてくれない。
それだけじゃなくて「とりたてて価値のないお前を使ってやってるんだ。そんな俺につくすのが当たり前だろ」って言って、何でもおしつける。
困った人よね。
パリン。
あらやだ。
こっちも割れちゃった。
お掃除の手間が二倍じゃない。
家政婦さんでも雇って、やってもらおうかしら。
でも、家の中を知らない人に上がり込まれるのって、なんだか怖いし。
パリン。
パリン。
パリン。
ちょっとやだ。
もう、なんでこんな割れ物ばっかりなの?
いい加減文句言ってやろうかしら。
でも、文句を言ったとしても、聞く耳もたないんでしょうね。
だって、あの人そういう人だもの。
パリン、パリン、パリン、パリン、パリン、パリン、パリン、パリン、パリン……。
……。
これ、粉々にしたらどうなるかしら。
さすがにあの人も、私に愛想つかすわよね。
妻失格だって、なるわよね。
だってしょうがないもの。
割れば割っただけ、私の顔が、たいして美人でもない私の顔が、哀れな私を見つめて蔑んでくるんですもの。
もっと、もっと、顔が見えないくらい粉々にしなくちゃ。
「どうせお前みたいなブスとつきあってくれる男なんていないだろ。生き遅れる前に俺がお前をもらってやるよ。ありがたく思うんだな」
もっと。もっと。もっと。
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