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〇88 乙女ゲーム エンド
しおりを挟むリアリティがない。
この世界はまるでモノクロのようだった。
知ってる光景に、知ってる人物、知っているセリフに知っている言動。
まるで、よくできた劇の中に放り込まれたようだった。
だから、まともに生活なんてできるわけがない。
私は、なぜか気が付いたら別の世界にいた。
でもそこは、私がプレイした乙女ゲームの世界だったのだ。
乙女ゲーム転生というやつだろう。
はじめはワクワクした。
その世界で、私が主人公の立ち位置にいると知った時は、ドキドキもした。
恋愛ゲームの世界だったから、好きなキャラに会えると思って胸が高鳴った。
けれど、興奮は一瞬。
私の熱は冷めていった。
まるで映画。まるで劇。
いいや、それらよりもたちが悪い。
それらは見るのをやめる事ができるのだから。
でも、私は逃げる事が出来ない。
周囲のすべてを予定調和で囲まれてしまっているのだから。
映画の中の、劇の中の登場人物が、どこに逃げるというの?
私は、この気持ちの悪いゲームのシナリオが終わるまで、ひたすら息を殺してじっとしていることにした。
そして、最後のイベント。
恋愛ゲームとしての多くは、告白でしめられる。
想いが実ってめでたしめでたし。
けれど、自分の殻にこもって過ごしていた私には、そんな相手はいない。
やがて、誰とも思いを通わせることなく、原作シナリオのすべてが終わった。
ああ、これでやっと解放される。
そう思った瞬間。
世界が暗闇に包まれた。
「ねぇ、これ変わったゲームだったね。主人公の性格がずっと暗いし。マルチエンディングなのかな? 何かフラグ立てそこねた?」
「攻略サイト見てみようか。あれ、これシナリオが違う。もしかして偽物買っちゃったとか? えーやだぁ。高かったのにぃ。気味悪いし捨てちゃおっか」
「そうだね。面白くなかったし」
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