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〇57 悪役令嬢は善人に変わらなければならない
しおりを挟む私はどうやら、乙女ゲームの世界で、悪役令嬢にうまれてしまったようだ。
モブでも、ヒロインでもない。悪役令嬢に。
第二の人生はお先真っ暗になってしまった。
しかも、悪い事はそれだけじゃない。
前世の記憶を思い出したのが、様々な人物に嫌がらせをした後だった。
全二部あるうちの、過去編が終了してしまった後だ。
だからいま登場人物達の、私への好感度はおそらくー100くらい。
ここから挽回できるだろうか。
いや、しなくてはならない。
悪役令嬢が変わらないまま、原作が終了してしまうと、断罪エンドになって、死亡してしまうから。
この現実でそんな事が起こったら、大変だ。
うわっ、私の第二の人生難易度高すぎ。
しかし、記憶を取り戻す前の私。
本当にとんでもない事をしたわね。
ヒロインの形見を壊すし。
攻略対象1からヒロインへの贈り物を横取りするし、
攻略対象その2の手柄は横取りするし、
攻略対象その3がヒロインに会いに行けないように建物に閉じ込めるし。
散々な状態じゃない。
でも嘆いてばかりではいられないわ。
断罪エンドを回避するために、頑張って行動しなくちゃ。
そういうわけで、私は色々とやってみた。
謝罪の手紙を出したり、慈善活動に精力的にとりくんだりとね。
私は元の悪役令嬢じゃなくて、心を入れ替えて変わった。
って、そうきちんと示さないと。
始めはみんな疑心を抱いていたわ。
何か企んでるんじゃないか。
あやしいって。罠に違いないって。
でも、何事も続けるものね。
時間がたてば、徐々に疑いははれていったわ。
でも、これだけじゃ心もとない。
-100の好感度が、-10とかゼロに戻ったくらいじゃ。
歴史の修正力が働いて、濡れ衣とか着せられちゃうかもしれないし。
そういうわけで、私は味方を集める事にしたわ。
グループからはぶられている子とか、虐げられている子とか。
恩をうっておく感じに。
変わりものが多かったけれど、手を差し伸べた子たちは基本はいい子だったわ。
ちょっと我が強かったり、こだわりが強すぎたりするけど、将来の事を考えればそんな子たちとつきあうなんて、なんてことない。
そんな中、原作が開始。
シナリオ第2部の開幕ね。
私は、登場人物達と極力関わらないように立ち回ったわ。
声をかける時でも、極力第三者を経由したり。
一緒のグループになった時は、近寄らないようにしたわね。
だから、原作の様にヒロインを虐めるなんて事は、しなかったのに。
「あの人がロッカーを汚しているのを見たわ」
「悪口を言っていました」
「机に落書きをしてたわよ」
なぜかヒロインへの虐めは起きていて、なおかつその犯人が私にされてしまった。
私は、断じて何もしていないというのに。
困ってオロオロしていたら、友人たちが私をかばってくれた。
「この人は、そんな事をする人じゃありません。私が仲間外れにされていた時、手をさしのべてくれた人なんですから」
「そうだよ。誰にも理解されない僕を理解してくれた、懐の広い人なんだから」
「口下手なわたくしをいつも気遣ってくれる人が、誰かに意地悪なんてできるはずがありませんわ」
ものすごく自分勝手な理由でつるんでいた私にとっては、若干心が痛い。
けれど、それで濡れ衣を着せられることは回避できたようだ。
再調査の結果、ヒロインに嫌がらせをしていた真犯人があきらかになって、私は無事に悲惨な結末を回避できた。
良かった。
これで、シナリオの流れとか運命の修正力 におびえる日々から解放される。
ほっとした私は、悪役の汚名を返上できたとばかりに思っていた。
しかし、まだ苦難の道は続くようで。
「改心したなんて俺は騙されないぞ。きっと猫をかぶっているに違いない」
新しい攻略対象が出てきて戦慄した。
彼は本編後に発売されたファンディスクに登場する攻略対象だ。
悪役だった過去の私ともきっちりかかわっているし、私はその時にきっちり迷惑をかけていた。
それでもあえて、その存在に今まで目をつむっていたのはーー
「ファンディスクが二つあって、どっちもイフなんて、どうしてややこしいものを発売したのよ開発スタッフは!!」
そういう事情があったからだ。
「ふん、おまえがかぶっている猫の皮は、俺がはいでやる!」
とほほなことに、
私の善人への道はまだまだ続くみたいだった。
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