上 下
54 / 90

〇54 悪役令嬢が気に入らない人間を必殺ノートに書きこんでいったら、なぜか改心していた

しおりを挟む

 私の名前はノエル。
 ノエル・フロイヤーよ。
 そこそこの財力がある、プリティーな女の子。

 可愛くて優秀でとってもすごくて、何でも持っているように見えるけど、友人には恵まれていないのよね。

 私の家の、名家な気族の力を利用するだけ利用して、それで私がちょっと怒ったらすぐ逆ギレ、開き直り。
 ほんっと、最低だわ。

 ここ、乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢に転生してるんだけど。

 原作の悪役が闇落ちしちゃう気持ち、すっごくわかる。

 だから、今日からこのノートに、気に入らない人間の名前を書き込んでいく事にするわ。

 だって、社交界に参加すると、ものすごくむかつく子たちがいるから、むしゃくしゃしちゃうのよ。

 私は悪役令嬢。将来、邪神と合体してラスボスになるすごい女の子なんだから。

 あとで大逆襲しちゃうんだから。

 その時に悪い子たちを成敗するため、忘れずに書き記ておかないと!





 そういうわけだから、私は今日から必殺ノートに書きこんでいくわ。

 一人、二人、三人。うふふ。楽しくなってきちゃった。

 私の家が数年前まで落ちぶれた家だったからって、よく馬鹿にしてくれたわね。

 貴族の端っこの端っこのような存在ってなによ!

 ありんことか、みじんことか言ってられるのも今のうちよ!

 馬鹿にしすぎじゃない!?

 言われた方はずっと覚えてるんだから、大きくなったら邪神と融合してぺちゃんこよ! 覚えてなさいよ。

 うふふ、さーてどうやってお料理してあげましょうかしらねー。

 断罪方法もついでにおまけに書いちゃうんだから。






 わたしはあーくやく、れーいじょうー。

 とってもすりりんぐー、でばいおれんすー。

 前世の記憶というものは便利ね、未来の事が色々分かるから、流行を先取りよ!

 ちょっと、おかげで私の家家は力をだいぶつけてきたわ。

 うふふ、もう貴族らしくない貴族とか言わせないんだから。

 みすぼらしい端っこ貴族だなんて言わせないんだから。

 私のお家を馬鹿にしてきたやつがいたら、家の権力と財力を使って、ぎったんぎったんにしてやれるわよ。

 けれど、それでもまた生意気言う子がいるものよね。

 あいつらの名前はちゃーんとは覚えてるんだから、この必殺ノートに書きこんでやるわ。

 百一人、百二人、百三人……。

 え?

 数が多い?

 そんなに気に食わない人間がいるのかって。

 権力とかお金を持つと、そういう人たちが多くなるものなのよ。

 ほんと、困っちゃうわ。

 わっ、私の心がせまいわけじゃないんだからね!







 ふぅ、もうすぐ原作が始まる頃だわ。
 
 邪神と融合するのも時間の問題ね。

 もうすぐすごく強くなって、今まで馬鹿にしてきた奴を、震え上がらせるの!

 そして、土下座して謝罪してる人たちを、まとめてぎったぎたにしてやるわ!

 今まで陰口叩いてきた人間を、コテンパンにできるってなんてすばらしいの。
 
 待ち遠しい!

 うーん。でも、前世の記憶って全部思い出せていないのよね。

 おとめげえむの悪役令嬢は最後どうなったのかしら?

 ここのところ、前世の記憶を思い出す回数が減って来たから、次はいつ思い出せるのかしらね。

 ……。

 考えても分かんないからまあいっか。

 なんとかなるでしょ。

 とりあえず恒例の必殺リストをつけなくちゃ。

 千一人、千二人、千三人……。

 え、やっぱり多いって?

 そんな事ないわよ。

 これくらい普通、普通。







 ええええええ、何でそうなるの!

 邪神と、融合できない!

 嘘でしょ?

 邪神を封印していた祠にいってみたけど、何も起きないじゃないの?

 お留守になっちゃってるじゃないの!?

 どうなってるのよ。

 これじゃあ困っちゃうわ。

 私の計画が!

 華麗なる逆襲計画が!

 何で?

 原作と何が違うのかしら。

 やっぱりお金をもうけちゃった事かしら?

 それで、お家を大きくしすぎちゃった事かしら。

 その影響で、ちょっと困った人たちに施しとかしちゃったせいかしら。

 そのついでに、病院とか建てちゃったりしたせいかしら。

 原作にあった悪役令嬢っぽさがなくなっちゃったのかも。

 うわああああん。邪神と合体するの楽しそうだったのに。

 はぁ、これからどうしよう。

 まあ起っちゃった事はしょうがないわ。

 気持ちを切り替えていきましょ。

 幸いにも、原作と違って私のおうちはそこそこの大きさ。

 お金の力と権力を使えば、自力で何とかなるでしょ!






 乙女ゲームのシナリオが結構進んでいるけど。

 これは非常事態よ!

 うっそー。

 敵が、いない。

 悪い子が、いない・

 ちょっと、どうなってるのよ!

 ちょっと前まで、千人くらいいたでしょ。

 リストにずらずら書く、くらいいたでしょ。

 なんで皆、改心しちゃってるの?

 私の味方側になっちゃってるの?

 あの時は間違っていましたとか、やり直しますとか。

 人間のゴミみたいだった人まで、目がキラキラしちゃってる。

 おかしいでしょ。

 楽しみに待ってたのに。

 やり返すの、悪役令嬢っぽいくどうやろうって、ずっと練ってたのに。

 こんなのあんまりだわー。

 ヒロインはにこにこだし、攻略対象達は順調に攻略されてるし、邪神はなぜかいないし。

 もう、原作がめちゃくちゃよ!







 俺、必殺ノート。

 転生したら、なんか悪役令嬢のノートになってた。

 こういうのって、普通悪役令嬢の使用人とか幼馴染とか、ダチに転生するのがセオリーなんじゃね。

 なんで無機物なんだよ。

 はぁ、っつっても転生しち待ったもんは仕方がない。

 さくっとノートライフを送って、快適な生活を追求してみるか。

 さてさて、ノートな俺は何ができるんだ?

 必殺ノートスキル?

 ふむふむ。そんなのがあるのか。

 このノートに名前を書かれた人間は、改心します。

 ノートスキルを使えば使うほど善人になっていきます。

 ノートに転生した人間が、一日一回頭の中で人名をとなえるとスキルを重ね掛けすることができます。

 ふむふむなーるほど。

 どうせ暇だし、ノートだし動けないし。

 適当にやってみるか。

 みょんみょんみょん。

 なんてやってたら、悪役令嬢が書き込む内容が、だんだん困ったものになってきたな。

 まあ、いいじゃん。

 邪神なんてもん、合体しないに越したことないんだし。

 おっ、あたらしいスキルがゲットできたぞ。

 なになに。

 改心した者達の現状を確認できます?

 むっ、脳裏に映像が浮かんでくる。

 へー、この世界ってこんな風になってるのか?

 魔法学園に、魔物に、聖獣に。

 改心した一人は旅をしているみたいだな。

 あっ、なんか祠っぽいものの一部をもって、神社っぽい場所に向かってる。

 あー、これかあ。

 悪役令嬢が書いてた邪神の奴。

 祠っぽいものの一部、めちゃくちゃ浄化されて、黒い靄が少なくなっていってるな。

 うん、まああれだ。

 終わりよければすべてよしだ。

 良かった良かった。




「どうしてこうなるのよおおお、私の夢にまで見た悪役令嬢ライフ、誰か返しなさいよおおおお!」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...