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〇44 昔の僕はただのわんこだった。でも今は非情な復讐鬼だ!

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 がるるっ。

 ぐるるうっ!

 僕はふくしゅーきだ!

 ひじょうでれいけつかんで、とってもやばい!

 怖い存在なんだぞ!

 だから、出会ったら怖がらなくちゃだめなんだからな!

「わんわん!」
「あ、みておかーさん、かわいいわんちゃんがいるよ!」

 ってちがーう!

 かわいがってどうするの!

 なでなでしないでっ!

 こちょこちょもだめっ!

 僕は怖いやつ!

 とってもやばい奴なんだから!

「わんちゃんばいばいー」
「あんなにしっぽ振っちゃって楽しかったのね」

 うーん、おかしいな。

 なんでみんな怖がってくれないんだろう。

 ボクは、婚約破棄されたみっちゃんのために、インサンなふくしゅーをしている最中なのに!






 みっちゃんっていうのは、ぼくの飼い主さんなんだ。

 とってもかわいくて、あととってもやさしいんだよ。

 僕よりおっきくて、日本の足であるいてて、手先がきよう。

 それでいて、いいにおいがするんだ!

 みっちゃんは、ぼくをいつもなでなでしてくれたり、遊んでくれる女の子!

 でも残念だけど、みっちゃんの一番は僕じゃないみたい。

 婚約者っていう名前の男の人が好きなんだって。

 だから僕はちょっとかなしい。

 けれど、僕は善いわんこだから、みっちゃんの幸せを応援するんだ。

 みっちゃんを困らせるような、悪いわんこにはならないぞ!

 だから、お別れの日だって涙をこらえてお見送り。

 婚約者とかいうよく分からないオスの根城に行っちゃうみっちゃんを、笑顔で見送るよ!






 でも、婚約者は悪い奴だったみたい。

 みっちゃんは泣きながら帰ってきた。

 もしかして、何か痛い事されたのかな。

 棒で叩かれちゃったりした?

 あれ、痛いんだよね。

 僕も野良犬だった時に、乱暴者っていう名前のやつにさんざん叩かれちゃったよ。

 あの時、みっちゃんに助けられなかったら、きっと大変だったな。

 あっ、もしかして!

 みっちゃんは、婚約者に餌をとられちゃったりしたのかな。

 おなかすいたら、悲しくて涙がでちゃうもんね!

 僕も小屋がなかった時は、ぐうぐうが鳴りやまなくて大変だったもん!

 婚約者めっ!

 なんてひどい奴なんだ、僕の大切なみっちゃんを悲しませるなんて!

 僕、前々から思ってたんだよね!

 あんな奴、みっちゃんにはふさわしくないって。

 みっちゃんの家に来るたびに、タバコをポイ捨てしてるし、キンゾクの嫌な匂いしてるし、キラキラしてる音がうるさいアクセサリ?とかいうのたくさん身に着けてるし。

 そんな奴より、いつもボクの小屋に餌を置いてくれる、幼馴染っていう名前のオスの方がよっぽど頼りになるよ!

 あいつはみっちゃんが乱暴者にイジワルされてた時、助けてくれてたもん。

 それに、僕の散歩してくれてたみっちゃんは、幼馴染が来てくれた時に安心してたし!

 よーし、みっちゃんを泣かせた婚約者には、僕が復讐するぞ!

 僕は、がんばって小屋を抜け出して、婚約者の根城へと向うよ!

 途中、死神とかいう名前の変な奴に出会ったけど、無視してやった!

 だって、ボク忙しいんだもん。

 けいやくとか、ざまぁの手伝い、とか難しい言葉使われても分かんないし!

 そういえば、みっちゃんが前に話してくれたおとぎ話で、なんかそういうのあった!

 人間のふくしゅーの手伝いをする「死神」がいるって言ってたな。

 でも、代わりに魂とられちゃうんだって。

 だったら、いいや!





 僕は婚約者の悪辣なしょぎょう(想像)にふんがいしながら、匂いをかいでいって、根城にたどりついた。

 さて、どうしてやろう!

 僕は、必死に頭をひねって考えた。

 何が復讐になるのかな?

 ボクだったら、小屋を壊されたり、お気に入りの毛布をやぶかれたり、餌を横取りされたら困るな。

 よーし、全部やってみよう!

 ボクは開いている屋敷の窓から根城の中に入り込んで、そこら辺に置かれているピカピカのツボとかヨロイとかを壊してまわった。

 パリン。バリーン。パリン。

 わっ、ばらばらになった破片が痛そう。

 踏まないようにしなくちゃ。

 あとは、そこらの部屋にあるベッドを牙で引き裂いたりもした。

 しっかりきっちりととのえられたベッドは、すごくふかふかで気持ちよさそうだったな。

 でも、僕は非情になる!

 だって復讐鬼になったから!

 えーい。

 ビリビリ。

 整えた人、ごめんね!

 後は後は、食料をたくさん食べちゃったりもしたかな。

 匂いをたどっていけばすぐに分かったよ。

 こうきゅう?なハムとかたくさんあったから、美味しかった!

 げっぷ。

 復讐って大変だなぁ。

 あっちこっち言って、色々な事やらなくちゃいけないんだもん。

 手間だってかかるし。

 これなら、生きるためにご飯探してた方がいいかも。

 でっ、でも。

 みっちゃんの為だもんね!

 みっちゃんは貴族令嬢ていう生き物だから、ぷらいどを大事にしてる。

 みっちゃん自身はそんな事いってなかったけど、幼馴染が言ってたから、きっとそうだ。

 こんだけの力があるぞ!

 って示しとかなくちゃ。

 さーて、頑張ったぞ!

 これで、婚約者はびっくり仰天するに違いない!

 驚きすぎて心臓発作を起こして、倒れちゃうかもね!

 あっ、行った傍から!

 あいつがやってきた!

「なんだこれは、一体だれのしわざだ! 物盗りでも入ったのか!」

 ガミガミ怒鳴り散らす婚約者は、周りにいる人にやつあたりしてる。

 うーん、ちょっと可哀そう。

 婚約者は悪い奴だけど、他の人は悪くない。

 僕のせいでおこられちゃうのは、何とかしてあげたいな。

 だからボクは、足元からそっと近づいて婚約者の足をカブっとすることにした。

 ほら、この歯形が犯人の証拠。

 ボクが犯人なんだぞ!

 けど、婚約者は驚いて、転んじゃった。

 その時に、近くにあったてーぶるに頭をぶつけて、そのままカエラヌ人になっちゃったみたい。

 カエラヌ人っていうのは、死んじゃったって事らしい。

 えっ、死んじゃったの!?

 そこまでやるつもりじゃなかったのに。

 でもいっか、この世は弱肉強食。

 これくらいで死ぬなら、僕がやらなくてもいつか死んじゃってただろうし。

 みっちゃんみたいに大好きで、いつも遊んでくれる恩があるわけじゃないから、そんなに悲しくないや。

 他の人に姿を見られないうちに、お家に帰らなくちゃ。






 るんるんとした気持ちで帰ったら、みっちゃんが幼馴染にはげまされていた。

 幼馴染えらい!

 あいつは、いつもみっちゃんの危機にかけつけて、僕に出いない事をやってるんだ。

 僕が人間だったら、人間の言葉を喋ってみっちゃんを励ましてあげられるんだけどな。

 仕方ないや。

 みっちゃんは笑ってる。

 ちょっとだけ元気になったみたい。

 良かったなぁ。

 やっぱりみっちゃんには笑顔が一番だ。

 僕は、疲れたので小屋に入ってお休みだ。

 明日みっちゃんと何をして遊ぼうかな。

 美味しいご飯食べた後にボールで遊びたいな。





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