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〇22 ばけもの子供の物語 迷
しおりを挟む世界のどこかに、要らない子供をすてる迷路があるんだよ。
そこに捨てられた子供達は、さんざん彷徨った後で、ばけものに食べられちゃうんだって。
そんな噂を聞いた事がある私は、すぐにその迷路に捨てられている事に気が付いた。
ああ、私って大人達にとっては要らない人間だったんだな。
すぐに事の次第を理解した。
現場を見ていなくたって、どんな事を言って、どんな風に私を捨てたのか、すぐに分かった。
食いぶちを減らすために、仕方なく。
なんてきっとそうじゃない。
愛情はあるけど、生活がまわらないから泣く泣く。
なんて事でもない。
ただ、要らなかったんだろうな。
私は人と違って、髪の色が真っ白。
とても目立つ存在だから。
今は誰かにイジメられたりしていないけれど、将来もそうなるとは思えない。
だから、きっとそれが理由で捨てられたのだろう。
私は森の中を歩いていく。
できそこないの、裁縫の失敗作みたいな、つぎはぎされたヘンな木の間を、縫う様にして。
その木々はたまにケタケタ笑い出すけれど、怖いという感情はわかなかった。
「かわいそうに、かわいそうに」
どこからか哀れむ声がする。
「もうすぐ死ぬよあの子。もうすぐだ、もうすぐだ」
どこが嗜虐心に満ちた声が聞こえてくる。
けれど、その声のどれにも、感情は動かなかった。
やがて、ひときわ大きな木の前にたどり着いた。
そこには、長い髪の男の子が眠っている。
私と同じヘンな色の髪をしていた。
紫色だ。
私が近づいたら、その男の子が目をぱちりとあけて、髪の毛をざわざわ動かした。
紫色の髪の毛が蛇に変身していく。
けれど、私の髪の毛を見て、「あっ」と声をもらした。
蛇だった髪の毛はすぐに元に戻ってしまった。
男の子は安堵した様子で、「なんだ仲間かぁ」と屈託なく笑った。
私は何がおかしいのか分からないけれど、なぜか「あはは」と笑ってしまった。
男の子は「ようこそ」と、笑いかけてきた。
「ここは要らない子供達が捨てられる迷路の森だよ。普通なら食べちゃったり殺したりしちゃうところだけど、仲間は殺せない。歓迎するよ」
私はどうやら仲間と認められたらしい。
心が少しだけ動いた。
普通なら不気味がるところなのに、ぜんぜんそんな気持ちにはならない。
ああ、ここにいればも捨てられる事はないんだな。
そう思ったからだろうか。
私の髪の白蛇が、私の感情を表すように、ざわっとうねった。
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