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〇21 溺愛される妹、蔑ろにされる私、お守り石の絆

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「この世界のどこかで私達を見守っていてくださる天使様は、綺麗な石を通してこちらをみているんですって。だからはい、お姉ちゃんからのプレゼントよ。きっとこれを持っていれば、天使様から加護をもらえるはず。良い事がたくさん起こるはずよ」





 誕生日を祝われているのは、私の双子の妹。
 けれど、私は祝われてはいない。

 私は使用人の服をきせられて、部屋の外の廊下を掃除しなければならないからだ。
 どうして私は愛してもらえないのだろう。
 どうして妹はあんなに愛されているのだろう。

 両親に笑顔を向けられながら、プレゼントをもらっている妹が憎かった。

 誕生日ケーキなんて食べた事ない。
 誕生日プレゼントも、もらった事ない。
 一緒にいてくれる人もいない。

 産まれてきてありがとう。生きていてありがとう。
 なんて言ってくれる人なんていない。

 誰からも望まれていなかったのなら、望まれる事がないなら、なぜ私は生まれてきたの?







 私は両親にまったく似ていない。

 双子の妹は、両親に似ているのに。

 だからその結果、妹は愛されて、私は愛されなかった。

 妹が私に、綺麗な飴玉のお菓子をくれるって言った時の、両親の怒り用といったら。

 思い出すだけで、背筋が冷たくなる。

 私達双子の運命は、もう何があっても同じにはならない。

 まったく別のものになってしまった。

 無邪気に遊んでいた子供の頃のように、一緒に目を輝かせて綺麗な石を探したり、積み木を並べたり、絵本を読み合う事はないのだ。

 そうした事実が導き出すのは悲劇。

 きっと、そうなる事はきっと、必然だったのだろう。
 
 悲しい誕生日から一か月後、私は馬車から捨てられてしまった。

 珍しく両親と一緒に出掛けられる。

 そう聞いてはしゃいでいた私は、どことも知れない山の奥地で馬車から降ろされ、そのまま置き去りにされていった。

「天使様がお前は悪魔の子だから、虐めなさいといっていたのよ」
「そうだ。神様がお前を悪だと言うから。仕方なくこうするんだ。恨むんじゃないぞ」

 そんな意味の分からない言葉を吐いて。

 私は、自分の愚かさに泣きそうになった。

 一時でも愛情を期待してしまった分だけつらかった。

 そこに、旅人達が通らなかったら。

 ずっと泣いて、膝を抱えていただろう。






 私は旅人達に拾われた。

 親切な人に拾われて、どうにか生きのびる事ができたようだった。

 その人達は、子供を亡くしたばかりだという。

 だからなのだろう、私を実の子供のように育ててくれた。

 私は彼等に恩を感じていたため、どうにかそれを返したいと思った。

 だから猛勉強をして、国の一番の学校に入学したのだ。

 そこには妹もいた。

 けれど、妹は私の事に気が付かなかったようだ。

 私の名前は、特にめずらしい物ではなかったから、そのせいかもしれない。

 在学中に私が妹を意識したのは、一回だけ。

 なぜなら、妹は特に私に絡んでくることはなかったからだ。






 学校で様々な事を学んだ後は、国の中心部で働くことになった。

 外交にかかわるところだ。

 そこには妹も一緒に入っていたようだったけど、担当する仕事が違ったため、あまり接することはなかった。

 外交員のサポート役として、様々な国に赴いた私は、色々な国のよい所を叱咤。

 だから、自分の国をよくするために、積極的に取り入れるべきものについて調べて、他の担当とも連携をとった。

 そこで数年働くうちに私はすっかりベテランの凄腕外交員と呼ばれていた。

 というのもその頃には、一人で外交員の仕事をこなすまでになっていたのだった。

 仕事の合間に妹の存在を思い出した私は、彼女がどうなったか他の者達に聞いてみた。

 すると彼女は激務に耐えかねて一か月でやめたと言う話を聞いた。

 私の働いている所は、いつも人が足りない。

 求められる能力が高いし、仕事の量も多い。

 だからなのかもしれない。

 私は特に妹に対して思う事はなくなっていた。

 生活は充実していた。

 そのため、子供の頃に抱いていた憎しみは、すっかり消え去っていたからだ。






 しかし、妹の忘れ物を届けるために、元の家に向かった時にそれは起こった。

 お守りのようなものがあったため、他の者達が届けた方がいいんじゃないかと言っていたのを聞いてしまったのだ。

 配達物として贈る事も考えたが、人の良い彼等は妹の様子を見てきてほしいと言いながら、たまたま暇だった私に用事を頼んでいた。

 たった一か月しか一緒に働いていないというのに、心配してくれているとは。

 妹は良い職場を捨ててしまったものだと思う。





 それで、元の家に向かった私は、妹にそのお守りらしきものを届けた。

 久々に見る彼女はひどくやつれていて、私の話をよく聞いていないようだった。

 会話をしている時も、どこか別の所を見ている有様。

 そして彼女は私が手渡したお守りを「なんだこんなもの」と言って、目の前でそれをこわしてしまった。

 それで、ついかっとなって口論になってしまい、口を滑らせた。

 むかしから貴方はそうだった。

 なんて言ってしまったのだ。

 私と違って両親から愛されていたくせに、もらったプレゼントを蔑ろにして。

 その時の感情が湧き出てしまった。

「まさか、お姉さまなの?」

 私はあわてて、その場から逃げた。

 背後では妹が「そんなわけないわ。いつもの幻覚よね」と言っているような声が聞こえてきた。

 今さら家族の事なんてどうでもいい。

 元の場所なんて戻ろうとは思わなかった。







 その後、私は何食わぬ顔で職場に戻る「お守りを届けたら、喜んでました」と報告した。

 真実は、わざわざ言わなくてもいい事だろう。

 それにしても、あのお守りの中は見ていないけれど、一体何が入っていたのだろうか。

 何か丸くて固いものが入っていたようだけれど、

 それに、人とあまり関わる事が好きではなかった妹が、外交に関する仕事に就職するなんて一体どういう理由があったのだろうか。







 その後、私は仕事姿勢が評価されて、昇進。

 外交員の鏡と言われるまでになった。

 育ての両親達も喜んで、祝いの言葉をたくさんくれたのが嬉しかった。

 住む家も少しだけ豪華になったし、お給料も増えた。

 たくさん美味しい物を食べさせてあげられるようになった。

 けれど、なぜか亡命しようとしていた妹は、国境を警備していた者に誤射されて、死んでしまったらしい。

 ありもしない化け物から逃げている様子だった、とその時の警備の人は言っていた。

 私には関係ない事だ。
 
 私はすぐにその事実を忘れる事にした。










 私は、両親に時々お菓子をもらっていた。

 世の中には、たべると楽しい気分になれるお菓子があるらしい。

 ちょっとだけ分けてもらえた私は、そのすぐにお菓子を気に入った。

 だからお姉ちゃんにも分けてあげようと思ったけれど、お父様とお母様が駄目だと言う。

 天使がとか神様がとか言っていたけど、私にはよく分からない。

 でも二人が言うならきっとそうなんだと思った。

 それから一年後、お姉ちゃんがいなくなった。

 私がお父様とお母様に「お姉さまはどこにいったの?」と聞いたけれど答えてはくれない。

 遠い所に行ってしまった、としか。

 だか私は大きくなったら、探しに行こうと思っていた。

 お姉さまは私と違って、人とすぐ仲良くなれるから、ひょっとしたら寂しい思いはしていないかもしれない。

 けれど、友達と家族は違うものだから。

 家族がいないとやっぱり寂しいかもしれない。

 だから、外交に関する仕事について情報を集めようと思った。

 けれど、仕事は大変で体調をくずしてしまった。

 お仕事が忙しいから、その反動でお菓子をたくさん食べてしまったのがいけないのかも。

 体調管理がなっていない。

 私は、見た目だけは飴玉みたいなお守り石を眺めて、お菓子を食べないようにぐっと我慢する事にした。

 この石はお姉様がくれたものだ。

 だから間違ってなくさないようにしないと。

 けれど体調は戻らず、せっかくつかみ取った仕事を辞めざるをえなくなった。

 それから私は部屋から出られなくなった。

 休んでいる間に誰かがお見舞いに来てくれたみたいだけど、どうせ夢だ。

 だって虫なんて入ったものを、わざわざ届けてくるはずがないし。

 いツモ人の顔はぼんやりとしか見えなかったけれど、その人はなんとなくお姉様にニテいる人間だったし。

 遠くにいるハズの、お姉様がここにいるわけがないンだから。

 アア、早ク体を治シテ、お姉サマにアイにいタイな。

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