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〇04 レベル上げすぎ令嬢、強すぎて乙女ゲームの世界で実在を疑われる
しおりを挟む高校生の少女ミクリは、乙女ゲーム「カオティック・ワールド」をプレイしていた。
しかしその「カオティック・ワールド」は乙女ゲームだが、バトルファンタジー要素もあるためレベル上げをこなさなければならない。
そのためミクリは、苦労しながらも数か月かけて、主人公のレベルを最高レベルまで引き上げていた。
そんなミクリだが、ある日昼寝をして起きると、唐突にその「カオティック・ワールド」の世界に転生していたのだった。
「異世界転生って、本当に起こるのね」
呆然としたミクリは、一時間くらい放心状態になった。
しかもミクリは、主人公の貴族令嬢になっていたのだった。
おまけに、自分が育てたレベル200の脳筋仕様という有様で。
ちょっと岩をなぐったら、粉々になるくらいのステータスだ。
お貴族様、(自分の家だが)の庭で岩を前に実験してみると驚愕の結果になった。
「この岩だけ特別にやわらかかった、とかじゃないわよね?」
確かめるために他の岩も殴ったけれど、すべてこなごなだ。
当然ミクリはその状況に驚いた。
しかし、状況はまったなしだった。
十代半ばで記憶を思い出したミクリの目前には、すぐに原作開始の時期がせまっていた。
「とりあえず、今知ってる情報まとめないと、あと何すればよかったかしら」
ノートにまとめながら状況を確認、そうして右往左往するなか、あれよあれよという間に原作に突入し、その果てでラスボスと戦う事になっていた。
最終決戦の舞台。ラスボスの他に周囲にいるのは、パーティーの仲間達。
他の攻略対象達だ。
ラスボスこと、邪神にのっとられた悪役令嬢は闇落ちした目で、どんよりとこちらを見つめている。
ここから、死力を決した戦いは始まるはずなのだが。
ミクリの「えいっ」という渾身の拳骨で、頭を叩かれたら、その悪役令嬢はすぐに正気を取り戻したらしい。
「あれ?」などという顔で、辺りをキョロキョロ見回している。
すると、一応武器持ってみただけ、という態度の攻略対象達が「やっぱりね」という顔で頷きあった。
ヒロインは聖属性を身にまとって戦っている。レベル200ともなると、長々と戦闘せずとも、一撃ですんでしまうらしい。
拍子抜けだった。
数か月後、「カオティック・ワールド2」のシナリオが始まった。
続編である。
発売されたゲームやアニメや漫画なども、人気が出るとよく2がでる。
大抵は1がすごいとその人気を超えられずに、勢いをなくしていくのだが、「カオティック・ワールド」は強かった。
2も大人気となったため、購入してそのゲームもプレイしていたのだった。
データ引継ぎ要素があったので、レベルも引き継がれている。
そういうわけでミクリは、2の隠し攻略対象が悪魔にのっとられた場所まで赴いた。
とうぜん仲間はいる。これまでの攻略対象と、新しい攻略対象を従えていた。
故郷の国では、悪魔退治に兵士を出そうかという案が出たが、攻略対象達の「いや、大丈夫だろ」という発言で消失。
まさかの少人数での攻略となった。
原作でも援護に数百人の兵士がいたのだが、そんなものは「必要ない」と攻略対象達全員が意見完全一致させて発言したので、モブたちはお留守番となったのだ。
さすがに主人公と言えども、そこまで強くはないはずだ。
どうなってもしらない、と思いながら現地に行ったミクリ達は悪魔と退治するのだが。
また「えいっ」で悪魔が昇天。
取りつかれていた隠し攻略対象が「あれ?」という顔で目を覚ますことになった。
討伐は一瞬。
攻略対象達は構えすらとってない状況だった。
しかも、終わったら「どこの店に食いに行く?」とか「親父の店手伝わねーと」とか話し始める始末。
緊張感が完全に行方不明だ。
さらに半年後「カオティック・ワールド3」と「カオティック・ワールド4」のシナリオが起きた。
「1」と「2」とは違って、「3」と「4」は別々の国で同時進行でシナリオが進んでいくのだ。
これにはさすがに、ミクリ一人ではかなわない。はずだ。
暴走した炎竜と水竜を鎮めなければならないのだが、一人ではどちらか一方しか相手できないのだから。
久々に、攻略対象達や兵士達が真剣な顔で対策を立てていく。
しかしそんな問題は「ワープ・ゲート(?)」が解決した。
その頃のミクリのレベルは限界突破を果たし300、全力で攻撃を放つと、空間がねじれるようになった。
力押しで、時空をゆがめるような行為が可能になったのだ。
何度も時空をゆがめる練習をしていたミクリは、時空をこえる技を体得。
「あれ、このゆがみ別の場所と通じてる?」
離れた場所にも自由自在に行けるようになっていた。
だから、炎竜と戦いながら水竜を攻撃するというアクロバットな戦法を駆使して、「えいっ」「グギャ!」「えいっ」「グギャ!」で勝利をおさめる事になった。
攻略対象達は「俺らいらなくね?」もはや、背景だった。
緊張感などもはや皆無だ。
「近くで観光でもしていくか」「だったら、あの伝説の木があるところに行ってみようぜ」と旅行気分。
ミクリは遠い目になって、どうしてこうなったのだろうと頭を抱えていた。
無駄な危険にさらされない事は良い事なのだが。
一度ならずとも、二度、三度世界を救ったミクリは、世界の救世主として長く語られることになるのだが。
あまりにも破格の強さすぎていたので、後の世では実在を疑われるようになっていた。
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