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〇03 グラス・メテオ ー星と寿命とお姫様ー

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 この世界の星には寿命が定められている。
 崩壊してく事が決まっている。
 その星に根付いた「ホロウ」が寿命を吸い取って、私達を滅ぼそうとしているから。






 私はお姫様、とっても偉い人。
 だから、みんな私に頭をさげなくちゃいけないのよ。

 もちろん、お姫様だから守られて当然。
 皆から、よいしょされて当然なのよ。

 でも、お姫様はとっても大変。

 いつも自信満々にしていなくちゃいけないし、いざとなったらみんなを助けなくちゃいけないの。

 だって私が一番偉いから、そうするのは当然のことなの。

 でも、そんなお姫様がピンチになったら、誰が助けてくれるの?

 よく分からないけれど、たぶん王様とかそういう存在ね。

 あ、でもこの世界には王様はいないんだった。

 みんなぽっくりいっちゃったのよね。
 おじいちゃんおばあちゃんだったの。

 寿命って怖い。

 たまに遊んでくれるいい人達だったのに。
 寿命を分けれたら一日くらい分けてあげたのに。






 私は、今日もお姫様。

 皆を困らせたりしてるちょっとおてんばさん。

 でも、いざという時は頑張るから大丈夫よ。

 明日から頑張る!

 え、それ駄目な方のセリフ?

 そんな事ないわよ。

 本当にその時が来たら頑張るんだから。

 本当の本当だってば!

 そんな頑張り屋さんな私は、今日もお仕事に精を出すわ。

 民達の言葉を聞いて、悪い所を改善。

 悪だくみしている人は、探して成敗しなくっちゃ。

 うん、とっても優しいお姫様ね。

 私ながら、ほれぼれしちゃうわ。

 だから、お仕事終わったらご褒美くれなきゃ、すねちゃうんだから!






 私は今日もお姫様。

 皆を困らせていた巨大な怪物ホロウを倒してあげたわ。

 皆の魔法で、いっせいに「えいっ」てやったのよ。
 私は号令係。
 我ながら、ほれぼれする発声だったわね。

 そしたら、その怪物が飛び散ってバラバラになって、世界中に散らばっちゃった。

 星みたいに光ってきらきらって。

 綺麗だけど、何だかとっても不安。

 よくない事が起こりそうで、ちょっと怖いわ。

 各地では、アクア・ホロウとかフレア・ホロウとか新種の怪物が誕生しているらしいし。

 これ、まずい事とかじゃないわよね。

 大丈夫かしら。

 ねぇ、あなたはどう思う?

 いつもみたいに、頭いい感じの推論聞かせて。






 私は、どうにか今日もお姫様。

 でも、ちょっと危ない感じ。

 皆を守れないお姫様って、お姫様じゃないと思うの。

 例の怪物がたくさん暴れまわって、たくさんの人が困ってるみたい。

 星の寿命ががんがん減っていってるみたいなの。

 どうにかしてあげたいけれど、解決方法が分からないわ。

 困っちゃう。

 どうしよう。

 あなたでも解決方法が分からないのね。

 じゃあ、誰にも分からないじゃない。

 ううっ、本当に大変だわ!







 私はお姫様よ。

 でもだからって、こんな時に特別扱いされるのは嫌なの。

 私だけ生き残るなんてだめよ。

 皆が頑張ってるのに、自分の事だけ考えられないわ。

 逃げてくださいって、言われても。

 逃げてどうするのよ。

 国民がいなかったら、お姫様はお姫様じゃないんだからね。

 だから、最後まで戦うの。

 だって、私はお姫様。

 皆を助けるのが、上に立つ者の役目でしょ。

 だったら誰がお姫様を助けるんだって?

 そんなの、今はどうでもいいでしょ。

 だって、そんな人この世界にはいないんだから。

 私より偉い人、皆死んじゃったじゃない。

 何でも解決してくれる頭の良い人なんて、いないじゃない。







 私はお姫様。

 でも、もうじきお姫様じゃなくなるわ。

 この命を使って、化け物たちの行動をとめるの。

 星魔法っていう特別な魔法なんだって。

 生きるものの寿命を使う代わりに、莫大な威力が出るの。

 きっと使ったら、しわくちゃのおばあちゃんになっちゃうんだわ。

 え?

 そういうのじゃない?

 難しいのはよく分からないわ。

 うぅ、やっぱり死ぬのはこわい。

 すごく体がふるえちゃう。

 でも、我慢しなくちゃ。

 皆を助けるためには必要な事なんだから。

 でも、ちょっとだけだけど。

 でも。

 もし、おとぎ話のような勇者様みたいな人がいるなら。

 こんなどうしようもできない状況になっても、私を助けにきてくれるのかしら。





 


 私は、お姫様なんだから。

 もう、ばかばか!

 国民は守られてなくちゃだめでしょ!

 どうして、私の身代わりになろうとするのよ。

 頭がいいから?

 理由になってない!

 私が怖がりだから?

 違うもん!

 最後の言葉、なんて言わないで。

 そんな顔しないでよ。

 身代わりになる方法見つけるくらいだったら、皆で生き残れる方法探しなさいよ!

 ほんとばか!

 頭なんか、ぜんぜんよくないじゃない!








 私はお姫様よ。

 あの決戦の日に命をつかって、お姫様をやめるつもりだったのに。

 でも、その代わりに……。

 世界も、皆も救われたけど。

 こんなんじゃ、笑えない。

 お姫様の仕事できない。

 お姫様は、いつも笑って皆を元気づけてあげなくちゃいけないのに。

 え?

 助ける方法があるの?

 聞かせて。

 何でもするわ!

 大丈夫。今度はもう怖がったりしない。

 だって、怖い事なんてあの日あった事以外ないもの。






 私はお姫様。

 皆のお姫様。

 私がお姫様になるためには、皆がいなくちゃだめなの。

 その皆には貴方だって入っているんだからね。

 だから、もう勝手に死んだりしないでよ。

 どうやったのかって?

 寿命を使う星魔法を、頑張って改良してみたの。

 すっごく大変だったんだから。

 一個でも間違えると、私とか協力してくれた人が血まみれになっちゃうけど。

 いたたたた!

 怒らないでよ。暴力反対。

 うう。

 助けてあげたのにぃ。

 なんで、笑ってるのよ?

 私の事、みくびってたって?

 もうっ。

 私はお姫様なんだから、これくらい当然よ。

 えらいえらい?

 すごいすごい?

 そんな子供に言うみたいに。
 もっとちゃんと褒めてってば。

 でも、許してあげる。

 私は、お姫様なんだから、寛容な所をみせないとね。

 そうそう、まだ言ってなかったわね。

 助けてくれて、ありがとう。

 そして。

「おかえりなさい」


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