異世界転生したら、なんか詰んでた 精霊に愛されて幸せをつかみます!

もきち

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閑話

その8 ❀ 貴婦人の日記2 ❀

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 ドレスは少し手直しをしました。産後でまだお腹が出ています。お恥ずかしいですけど仕方がないのです。

 披露宴パーティー当日、私は緑色のドレスにしました。お腹が目立たないように胸の方にクビレを持って来てレースでお腹を隠しました。うまくやれたと思います。


 お相手のお邸にはすでにたくさんの方がお見えになっていて一般の方の披露宴パーティーだというのにキレイに着飾っているご婦人が多く、私なんかよりエレガントな方がたくさんいました。どこが派手なドレスは目立つのですか?これだから男性の言葉は信用できません。お二人の姿は遠くにあり、訪問された順に挨拶をされているようです。奥様は真っ赤なドレスでひと際美しく理想の花嫁です。
 だからディルイに早く行こうと言いましたのに。

 しばらくすると音楽隊の音色が変わりました。なにか始まるようです。バル様とはまだ挨拶出来ていません。やはり元婚約者ですからなにかと気まずいのでしょうか。

 音楽隊の音色に合わせてゆっくりと登場されたのは、バル様にエスコートされた花嫁様です。真っ白なドレスを着た花嫁様は、美しい銀髪をまた真っ白な細やかな刺繍が施してしている長いレースで覆い、そのレースはドレスより長くエレガントです。
 首元からデコルテまで細やかなレース、そして身体のラインにぴったりと合わせたスタイルの良い方にしか着こなせないドレスです。
 ウエストをこれでもかというほど細く見せ、裾はまた細やかなレースが歩くごとに見え隠れする。なんとも優雅です。なんと美しい…雪の女王様のようです。静寂の後にわぁと歓声が聞こえてきました。

「なんと、あれは…下着ではないのか…目のやり場に困る。叔父上はなぜあんなドレスを許したのか…」

 ディルイは、頭の固い古い貴族のような事を言います。いくつなのでしょう?

「叔父上は…」
「ディルイ、黙っていて!」
 批判の声を出しているディルイや、男性をよそに女性たちはその花嫁の美しさに目が釘付けになっていました。

「まあ、なんと美しい」
 男性を押しのけて女性たちは花嫁に群がります。
「真っ白なドレスなんて…白のお衣装なんて初めて見たわ、リリス。素敵よ」
 真っ赤な髪をしたキレイな人が花嫁に声を掛けています。
「ありがとう」
 花嫁はにっこりと笑顔でお礼を言っています。笑顔もなんて可愛らしい。
「白いお衣装は外国では花嫁の色なのだそうよ。だからリリスも白のドレスを着てみたいって、初めて我が儘を言ってくれたから、頑張ったわ」
 あの女主人です。バル様のお顔を見ると花嫁しか見ていませんでした。本当にうっとりとなさっているご様子。ではあの女主人の事はお忘れになったのですね。よかったです。身代わりとして結婚なさっていたらと思っていましたが杞憂でした。

「外国では白のドレスが花嫁の色なのですね。下着のかと思いましたよ」
 ディルイは独り言なのか、大きな声で言うものだから皆がこちらを見ています。
「ディルイ、今はそんな事を言うものではないわ。失礼よ!」
「ああ、そうだった。申し訳ございません。叔父上」
 叔父上?なんとバル様と花嫁様がこちらに向かってきます。どうしましょう。

「ディルイ、来てくれたんだね。ありがとう。パティアンヌ殿、今日は来て下さって感謝いたします」
 もう、一般人のバル様。私に丁寧に話されます。美しい奥様…バル様は面食いのようです。私のことなど忘れてしまうのは当たり前ですね。

「ディルイ様、パティアンヌ様、今日はお越し下さりありがとうございます。産後間もなくというのに出向いて頂きありがとうございます。お酒以外にも果実の飲み物もたくさん用意しております。ぜひ、楽しんでいってくださいませ」
「ええ、ありがとうございます」
「パティアンヌ様、素敵なドレスですわね」
 花嫁様はにっこりと笑い、バル様と他の来賓客の方へ行ってしまわれました。私のお腹隠しのドレスを褒めて下さいました。嫌味で言われたわけではないと思います。

 白いドレスは誰が広めたのか、あっという間に主流になりました。婚礼の際のお祝いの衣装に、白色を好む女性が増えたのです。数年遅れて貴族の間でも着用する方が増えました。白色のドレスは特別感があって披露宴パーティーにはピッタリだと思うようになりました。もちろん、伝統の赤いドレスも着用します。

 バル様と奥様は披露宴パーティー後、国を出て行かれました。ディルイはその方がいいだろうと言っていました。バル様の奥様は魔力が豊富な方なので貴族で取り合いが始まると心配していたのです。バル様はそれを見越して国を出ようとお決めになったのかもしれません。旅をしながらのんびりと過ごすのも、長く離れていたご両親への配慮もあるのかもしれません。

 今頃、どちらに居るのでしょう。数年ほどするとあの披露宴パーティーに使われたお邸が売りに出されていました。どこかの国で移住なさったのかもしれません。いつかまたこの国に戻って来られることがあるのでしょうか。
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