異世界転生したら、なんか詰んでた 精霊に愛されて幸せをつかみます!

もきち

文字の大きさ
上 下
106 / 110
閑話

その7 公爵様の憂鬱

しおりを挟む
 果たしてこれはどうしたものか…

 置き土産としてリリスは大量の宝を残していった。

「セリア、久しぶりにふたりで会いたいの…」
 などどメールが来るから、焦ってしまった。

「リリス、結婚したばかりじゃないか…」
 と、色々な妄想をしてしまった。もちろん友人としてリリスと会うことにしたのだが、俺はリリスに会った瞬間にいやな予感がした。リリスは俺の顔を見てにっこりと笑うと、大量の財宝を時空収納から取り出した。

 そうだな…二人っきりじゃないと出せないな。

 いやな予感は的中した。

「旅の資金が足りないから売りたいのだけど…よその国で売るのはダメだってバルが言うからセリアに相談しようと思って」

 脅すのだな…王族を脅すなんてリリスは破天荒過ぎる。

 確かに、これは我が国の財宝だ。初代からの金貨や王冠に王妃のネックレス…みな肖像画に描かれているものばかりだ。歴史を経て紛失したのだろうと考えられていたものが現物としてキレイな状態のまま残っている。これは歴史価値からいっても値段は付けられないものばかりだ。それをリリスは旅の資金が足りないからなどと…

 価値が分かってないのか、バル殿に同情する…。

 値段を付けられる品物じゃないと言っても金がいるの一点張り…買ってくれないのならバラバラに解体して他所で売るしかない、と。だから王族を脅すんじゃない!

 初代の金貨は一枚でも、コレクターに売れば50万ベニーにもなる品物だ。そんなものを固いテーブルの上にジャラジャラと…


 リリスが魔力の多い子だというのは分かっていた。俺と同じくらいだろうと思っていたがケタがまるで違ったようだ。どおりで父上が執着するはずだ。最初は俺の妻にと行っていたのに最終的には、自分が結婚するのだと言い出した時には父上はよほどお疲れなのだと思った。だがまさかリリスが「救世主」だとは思わなかった。

 レイジュの泉に行けるのは「救世主」だけだ。

 そして財宝を細かく調べてわかった事は、財宝の周りに良質のエリクサーが付着していること。エリクサーが付着しているという事は紛れもなくレイジュの泉から発見されたものだろう。

 リリスはこれを平気な顔で持っていたのか…

 そしてリリスからは買い取ってくれたお礼にと、天然のエリクサーが大量に入っている、これまた伝説級のマジックボックスをくれた。リリスによれば、そのまま飲むことより高級ポーションに1滴か2敵を混ぜて使った方が良いと言われた。
「なくなったら知らせて、また入れてあげる。マジックボックスの使い方はわかるよね?」
 そしてリリスはセリアの両手を取り、濃い紫の瞳でじっとセリアを見つめた。
「住民には安値で治療してやって、セリアを信じているよ」

 リリスにそんなことを言われたら、高額には出来ない。

 リリスの言う通りに高級ポーションに1滴のエリクサーを混ぜ、試しに以前魔獣の毒牙を受け動かなくなった騎士の腕にそのポーションを与えた。次の日、毒牙にやられまったく動かなくなった石のような腕が、固い衣がはがれたかのように柔らかく血が通っているのがわかる。「腕が動くぞ!」騎士は泣いて喜んだ。

 リリス、財宝よりこちらの方が宝だぞ…
支払った金は、マジックボックスの代金でも安い方だ。これでは王家の財宝はおまけではないか…

 大量にあるレイジュの泉のエリクサーは住民に安く提供することにしよう。無くなったらまたリリスがくれる言っていたしな、約束を破る方がこわい。こうなったらジャンジャン使ってやるさ。でも他国には高値で売らせてもらう。元は取らないとな。

 セリアはマジックボックス小にレイジュの泉の水を入れ、高額で取引をした。

 これくらいは許してくれリリス。その代わり貧しい国にはそんなことはしない。お金持ちの国だけだ。

 財宝は結局のところ返納してくれたに過ぎない。レイジュの泉のエリクサーが大量に入っているマジックボックス大をお礼だと無料でくれたのだから。無料で渡すようなものではないのだ。財宝の支払いだと言う事にしただけだ。


 エリクサーは飛ぶように売れ我が国は潤った。リリスに支払った金額を超えることにもなった。

 そのお金はなるべく住民に還元できるようにしよう。もちろん頑張った貴族たちも還元する。じゃないと不満が出来からね。


 これでいいだろう、リリス
しおりを挟む
感想 298

あなたにおすすめの小説

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。