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閑話
その6 とあるご令嬢の日記 ✿2✿
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「パティ、おめでとう。あなたもようやく婚約が決まったのね」
棘のある言い方をしているのは同級生のアンジュークです。
「ええ、ありがとう。アン」
立場もよく似た同級生でしたが、美人で華もあり魔力も豊富なアンはすでに婚約者が10歳の頃からいらっしゃいました。一度その方とは婚約を解消されましたが、違う方と最近またご婚約を果たされました。お相手は同じ王族の方ですが系列は違います。私のバル様は王族の直系になります。
「お相手はあの独身貴族であられるジョニルバール様とか…等々ご結婚を決断されましたのね。まさか、お相手がパティだなんてびっくりしましたけど」
「なかなか結婚を承諾なさらないようだったので、陛下から直々にお話をされたとか」
もうひとりの同級生カノンワーズです。
「ジョニルバール様はお優しい方、陛下からのお話を断れなかったのでは?」
同級生のエンリエッタ
3人は顔を寄せ合いクスクスと笑っています。不快です。
3人ともご婚約をされ近くご結婚なさる方達です。お相手の方を見ても、私がバル様と結婚したら立場は私の方が上になるのですが分かっていないようです。
「ごきげんよう、皆様。ああ、パティ!婚約おめでとう。嬉しいわ。よかったわね」
今日は、親友メアリーグレイの披露宴パーティーです。親友は一足先に結婚を果たしました。
「アン、カノン、エリ。ジョニルバール様とご婚約を果たしたパティが羨ましいからって嫌味を言っても仕方ないわよ。しかもジョニルバール様と結婚すればパティの方が位は上よ。もうそんな口聞けなくなるのよ」
「な、なによ。羨ましいだなんて…メアリーご結婚おめでとう。では皆様参りましょ」
「はあ、困ったものね…でもパティ本当によかったわ。しかもあのジョニルバール様よ。本当によかったわね」
「ええ、ありがとう。でもあのってなに?」
「やだ、知らないの。ジョニルバール様は女子の中でも憧れの存在よ。お優しいし、あのお顔、王族だし、少しくらい背が低いからってなんの問題はないわ。しかも今では陛下の側近よ。大出世よ。パティはお母さまが早く亡くなられたから心配していたけど、ご家族はちゃんと考えてくれていたのね」
「ありがとう、メアリー」
ずっと放っておかれたわ。今回の件はたまたまだと思うわ。それにしてもバル様はおモテになるのね。知らなかった。歳が離れすぎているなんて大した事ではないみたい。
バル様とは手紙を交わし、お茶会の為に邸へご招待したりしましたが、来て下さったのは最初の1回だけでした。日が経つにつれ手紙は一方通行、お茶会はドタキャンが続きました。
あまりにも悪いからと部下のディルイ様が邸にまで断りに来て下さった。
「パティアンヌ様、誠に申し訳ありません。今回もロイス公爵は急な陛下のお呼び出しにより来られなくなりました」
「へ、陛下からのお呼び出し?まぁ大変ですのね。私の事は気にしないでくださいませ」
「パティアンヌ様、ロイス公爵は今大変お忙しい身でございます。もう少し経てば仕事にも余裕が出来るかと思います。落ち込まれませんよう…」
「ありがとうございます、ディルイ様。そうだわ、ディルイ様。せっかく温かいお茶とお菓子がございますの。少し付き合って下さらない」
「いえ、私はお伝えに来ただけですから」
「いいではないですか。私、少しおしゃべりしたいのです。少しだけ、ね?」
「わかりました。では、少し…」
「ありがとうございます」
どうして、誘ったりしたのかしら。でもずっとドタキャンされている。それを部下にやらせるなんて、なんだかずるいわ。でもきっとお忙しいのでしょう。最初の頃はメール便やメッセージを短い文でも送ってくださっていたのに、最近はめっきり…婚約時期は一番楽しいものと誰が言ったのかしら。
「バル様が陛下に呼び出されるのは多い事なのですか?」
「そうですね、最近では毎日です。休みもありません」
「え?そうなのですね。それなのに私ったら休みの日だからとバル様をお誘いして、お疲れでしょうに…」
「いえ、パティアンヌ様はなにも悪くはありません。ロイス公爵も大変申し訳ないと心を痛めてお出でです」
ジョニバディルイ・ディ・ロイス様、バル様のお兄様のご子息様。この方も王族の方。美しい銀髪で紫の濃い瞳。お母様のジュリエッタ様が罪を犯され、アンジュークとの婚約を解消を余儀なくされました。アンは婚約解消を嫌がっていたけど、なるほど美男子です。背も高く、バル様同様お優しい方のようです。
「一体、陛下はなぜ、バル様ばかりお呼び出しなさるのかしら。陛下の周りはたくさんの方がいらっしゃいますよね。独り占めしないで頂きたいわ」
「パティアンヌ様、そのような事…しかし、今は少ない人数でなにかをしておいでです」
「え?ディルイ様もご存じないのですか?」
「はい、お恥ずかしいのですが、はじかれております」
「あ、ごめんなさい。そういう意味で言ったのではないの」
「いえ、不甲斐ないばかりです」
「…今日、どうもありがとうございました。私のおしゃべりに付き合って頂いて…」
「いえ、とても楽しかったです」
それは、私もです。
それから、バル様の休みの日には毎回、邸にご招待を致しました。言わば、お義理です。お忙しいとわかっているのに、とりあえず、手紙やお邸にご招待を致しました。いつもバル様は出席なさると言うけど、毎回ドタキャンなさいます。なんでしょう、私に対する嫌がらせなのでしょうか?でもその度にディルイ様は謝罪に来られるのです。ディルイ様は3回に1回は私の愚痴に付き合って下さるようになりました。
今ではそれが楽しみです。でもディルイ様は上司の婚約者のお茶を断れないのです。それは、分かっています。
棘のある言い方をしているのは同級生のアンジュークです。
「ええ、ありがとう。アン」
立場もよく似た同級生でしたが、美人で華もあり魔力も豊富なアンはすでに婚約者が10歳の頃からいらっしゃいました。一度その方とは婚約を解消されましたが、違う方と最近またご婚約を果たされました。お相手は同じ王族の方ですが系列は違います。私のバル様は王族の直系になります。
「お相手はあの独身貴族であられるジョニルバール様とか…等々ご結婚を決断されましたのね。まさか、お相手がパティだなんてびっくりしましたけど」
「なかなか結婚を承諾なさらないようだったので、陛下から直々にお話をされたとか」
もうひとりの同級生カノンワーズです。
「ジョニルバール様はお優しい方、陛下からのお話を断れなかったのでは?」
同級生のエンリエッタ
3人は顔を寄せ合いクスクスと笑っています。不快です。
3人ともご婚約をされ近くご結婚なさる方達です。お相手の方を見ても、私がバル様と結婚したら立場は私の方が上になるのですが分かっていないようです。
「ごきげんよう、皆様。ああ、パティ!婚約おめでとう。嬉しいわ。よかったわね」
今日は、親友メアリーグレイの披露宴パーティーです。親友は一足先に結婚を果たしました。
「アン、カノン、エリ。ジョニルバール様とご婚約を果たしたパティが羨ましいからって嫌味を言っても仕方ないわよ。しかもジョニルバール様と結婚すればパティの方が位は上よ。もうそんな口聞けなくなるのよ」
「な、なによ。羨ましいだなんて…メアリーご結婚おめでとう。では皆様参りましょ」
「はあ、困ったものね…でもパティ本当によかったわ。しかもあのジョニルバール様よ。本当によかったわね」
「ええ、ありがとう。でもあのってなに?」
「やだ、知らないの。ジョニルバール様は女子の中でも憧れの存在よ。お優しいし、あのお顔、王族だし、少しくらい背が低いからってなんの問題はないわ。しかも今では陛下の側近よ。大出世よ。パティはお母さまが早く亡くなられたから心配していたけど、ご家族はちゃんと考えてくれていたのね」
「ありがとう、メアリー」
ずっと放っておかれたわ。今回の件はたまたまだと思うわ。それにしてもバル様はおモテになるのね。知らなかった。歳が離れすぎているなんて大した事ではないみたい。
バル様とは手紙を交わし、お茶会の為に邸へご招待したりしましたが、来て下さったのは最初の1回だけでした。日が経つにつれ手紙は一方通行、お茶会はドタキャンが続きました。
あまりにも悪いからと部下のディルイ様が邸にまで断りに来て下さった。
「パティアンヌ様、誠に申し訳ありません。今回もロイス公爵は急な陛下のお呼び出しにより来られなくなりました」
「へ、陛下からのお呼び出し?まぁ大変ですのね。私の事は気にしないでくださいませ」
「パティアンヌ様、ロイス公爵は今大変お忙しい身でございます。もう少し経てば仕事にも余裕が出来るかと思います。落ち込まれませんよう…」
「ありがとうございます、ディルイ様。そうだわ、ディルイ様。せっかく温かいお茶とお菓子がございますの。少し付き合って下さらない」
「いえ、私はお伝えに来ただけですから」
「いいではないですか。私、少しおしゃべりしたいのです。少しだけ、ね?」
「わかりました。では、少し…」
「ありがとうございます」
どうして、誘ったりしたのかしら。でもずっとドタキャンされている。それを部下にやらせるなんて、なんだかずるいわ。でもきっとお忙しいのでしょう。最初の頃はメール便やメッセージを短い文でも送ってくださっていたのに、最近はめっきり…婚約時期は一番楽しいものと誰が言ったのかしら。
「バル様が陛下に呼び出されるのは多い事なのですか?」
「そうですね、最近では毎日です。休みもありません」
「え?そうなのですね。それなのに私ったら休みの日だからとバル様をお誘いして、お疲れでしょうに…」
「いえ、パティアンヌ様はなにも悪くはありません。ロイス公爵も大変申し訳ないと心を痛めてお出でです」
ジョニバディルイ・ディ・ロイス様、バル様のお兄様のご子息様。この方も王族の方。美しい銀髪で紫の濃い瞳。お母様のジュリエッタ様が罪を犯され、アンジュークとの婚約を解消を余儀なくされました。アンは婚約解消を嫌がっていたけど、なるほど美男子です。背も高く、バル様同様お優しい方のようです。
「一体、陛下はなぜ、バル様ばかりお呼び出しなさるのかしら。陛下の周りはたくさんの方がいらっしゃいますよね。独り占めしないで頂きたいわ」
「パティアンヌ様、そのような事…しかし、今は少ない人数でなにかをしておいでです」
「え?ディルイ様もご存じないのですか?」
「はい、お恥ずかしいのですが、はじかれております」
「あ、ごめんなさい。そういう意味で言ったのではないの」
「いえ、不甲斐ないばかりです」
「…今日、どうもありがとうございました。私のおしゃべりに付き合って頂いて…」
「いえ、とても楽しかったです」
それは、私もです。
それから、バル様の休みの日には毎回、邸にご招待を致しました。言わば、お義理です。お忙しいとわかっているのに、とりあえず、手紙やお邸にご招待を致しました。いつもバル様は出席なさると言うけど、毎回ドタキャンなさいます。なんでしょう、私に対する嫌がらせなのでしょうか?でもその度にディルイ様は謝罪に来られるのです。ディルイ様は3回に1回は私の愚痴に付き合って下さるようになりました。
今ではそれが楽しみです。でもディルイ様は上司の婚約者のお茶を断れないのです。それは、分かっています。
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