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閑話

その2 選ばれし者

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 俺はボロのギルドアパートに住んでいる。今の仕事は魔力供給だ。魔力供給なんてお貴族様ぐらい良質の魔力持ちしか出来ない仕事だ。

 教会に月に1回顔を出し、魔力を提供している。魔力は3分の1ほど取られるがそこまで苦痛ではない。次の日になれば半分ほど戻り、2日後にはすべて戻っている。

 その給金は国から貰っている。1回の給金は金貨2枚だ。有難い。魔力供給をするのは月1回と決められている。それはムリをする人が増えるので月1回しか魔力供給が出来ないのだ。しかし抜け穴もある。違う教会にいけば魔力供給が出来るのだ。しかし、教会は近くに2件しかない。14日ほどして違う教会に行く。それが今の仕事だ。
 なにもしなくても毎月金貨4枚も入る。ボロアパートだが居心地は悪くない。月10銀貨3枚で暮らせるのだから。ギルドからはそこに住んでいるのだからギルドの仕事をしろと言われている。仕方ないので3日に1回はギルドに出向き軽い仕事をこなしている。なんたって「選ばれし者」だからな。変われば変わるものだ。花屋だった頃は月に10銀貨5・6枚稼げたらいい方だった。


 ある日、ミルから手紙が届いた。驚いた。思い通りにならない事があったら殴っていた。今思えばよく死ななかったものだ。だから連絡を寄越すなんて信じられなかった。手紙の内容は結婚するのだそうだ。お元気ですか、だと?そんな言葉どこで覚えた。あのミルも20歳になるという。行方が分からなくなったは10歳の頃だった。金づるが居なくなったと当時は思ったものだった。もう10年

 しかし、こうして手紙を貰うと胸が詰まる。10年我が子として家に置いていたのだ。我が子ではないとなんとなく分かっていたが。そして手紙の最後には精霊なしだが魔法は少し使えるとも書いてある。念じれば火が付くかもしれないし、風が起こるかもしれない。と書かれていた。何のつもりでこんなバカげた事を書いてきているのだ。精霊なしで魔法が使えるわけがない。しかし、期待する。幼い頃から魔法が使えなくて悔しくて羨ましかった。
 竈に向かい念じる。「火を起これ」するとボォと火を起こせたのだ。「水を出ろ」ジュと火を消した。信じられない。しかし、3回目に風を起こした時に記憶が無くなった。気が付くと火がたかれた暖かい竈近くの長椅子に寝かされていた。

「おい、ジョセフ。どうしたんだ。竈の前で倒れていたぞ?」
 同じアパートの住民に助けられていた。
「いや、ちょっとムリをしてしまったようだ」
「気を付けろよ」
 男はそういうとコップ1杯の水をくれた。
「ああ、ありがとう」
 そうムリをした。初めての魔法で浮かれてしまった。ミルの手紙には日に3回くらいは出来るのではないかと書かれていたが、昨日魔力供給を行ったばかりだった。

 胸が痛い…

「うっぐっ」

 ひどい生活をさせていたのに俺にこんな手紙をくれるのか…どこかで精霊なしでも魔法が使えると聞いたのだろう。それを教えてくれた。俺はミルになにも教えていないのに…
 俺は俺は…どうしてあんなひどい事をした…親らしい事をすればよかった。そうすればミルの花嫁姿を見れたかもしれない。幸せそうな姿を…

 勝手に卑屈になって、小さなミルに八つ当たりをした。


 倒れている所をわざわざ長椅子に寝かせてくれて、気が付くのを待ってくれていた。住民は親切だ。それは昔からだった。当時は精霊なしの俺を憐れんでいるのかと、勝手に恨んだ。違ったのだ。ただ親切にしてくれていただけなのに。俺はバカだ。ミル済まなかった。

 俺を許してくれ
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