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第3章
好きな人と結婚をする
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年が明け、バルとリリスは正式に婚約をする事になった。教会で婚約の儀式を行うのだ。急いで国を出る必要が無くなり結婚してから旅に出ることにした。
婚約の儀式は、本当はそんなに必要ではないのだが、バルは王族という事もあり教会に積極的にお布施をしなければならない立場という事で、儀式を行う事にしたのだ。
儀式には両家の両親と顔を合わせ、教会で婚約として印を結ぶのである。解消したければまた教会に行かねばならない。なので婚約も貴族ぐらいしか最近は行わない。両家共々に印を結び婚約が成立する。
貴族ともなると、相手側がお家取り潰しなどがないかぎりは、勝手に婚約解消や破棄など非人道的な事は出来ないように教会で印を結ぶ事になっている。儀式を行う際にお布施は絶対で安くもない。儀式の時に嫁ぐ側のお相手の方に結婚の支度金としていくらか渡す。
そしてそれはなんらかの理由もなしに解消または破棄した場合は、支度金は戻ってこない。そうすることで簡単に解消や破棄をさせないようにしている。
そうならない為に、両家が納得をして教会に出向き印を結ぶのだ。バルは今回の婚約の儀は3回目だ。バルは2回も婚約・解消を繰り返している。お金もすいぶん掛かったことだろう。バルはこの2回の経験があるのでスムーズに進むがリリスは初めての事ばかりで目線があっちこっちと落ち着かない。教会でトイレを借りて迷子になっていたりする。
バルはそんなリリスを見て、なんとも可愛らしいと思う。魔力は誰よりも豊富で腕力は男のそれ以上で勇ましく、堂々としている。自分の方こそ守られている感じではある。でもリリスは気にしない。弱い男がキライだとか背の低い男はカッコ悪いとか思っていない。自分を見てくれている。
思えば、結婚というのを考えた事がなかった。親に決められ婚約をして婚姻を果たす。それが当たり前であった。初めて会った人と結婚するなど当たり前であったのだ。両親も祖父や兄もそうだった。父からも結婚してそれから恋愛が始まると言われていた。母もやさしい父を結婚して好きになったと言っていて幸せになっている。結婚はそういうものだと思っていた。
しかし、父は癒の精霊付であった。「お前も癒があればいいのだが付かない場合は苦労するかもしれんな」と言われた事を思い出す。なんの事だが今まで分からなかったが、そういうことであった。しかし、母は幸せなのだ。幸せならばそれでいい。「好きな人と結婚をする」リリスからその言葉聞いてなにを言っているのか理解出来なかった。結婚してから好きになるのではないのか?平民と貴族の違いなのかとも思った。
前の婚約者殿がディルイと仲良くなり婚約を解消した。ディルイの方がお似合いだと思ったのだ。仕方がないのだ自分が放っておいたから相手の婚約者殿が心変わりをしたのだ。自分が悪いと思いあっさりと解消した。今に思えば解消する理由を捜していたように思う。婚約者殿の意向など聞いたことがなかった。そして、名前も顔も朧気であった。なんとも自分はひどい事をしたことだろうか…
リリスからは婚約解消した俺の事をバカじゃないかと言っていたが、結婚はしたかったがそういう事じゃないとも思った。そういう事じゃないとはどういう事だと自分で疑問にも思っていた。
しかし、好きな人と結婚をする。リリスと婚約の儀を行う際にその意味がやっと理解出来た。
俺は好きな人と結婚をする。
▽
「え?婚約の儀?なにそれ?」
「バルのご両親と顔合わせをして教会で印を結ぶのよ」
「バルのご両親?うわっゴリゴリの貴族じゃない?えー緊張するなぁ」
「ゴリゴリ?」リリスはたまに変な言葉を使う。バルは意味を聞いてもよく分からない。
「大丈夫だよ。俺がこんな歳だ。早く誰でもいいから結婚しろと言わていた。リリスなら喜ばれるよ」
キースはまだ下級貴族のままだ。バルも貴族を廃していない。婚約の儀を交わしバルのご両親を安心させ、その後に貴族を廃する予定なのだ。
初めて会ったバルの両親は、「貴族である」という感じの貴族であった。しかし、ずいぶんと前に現役を退いてからは静かに暮らしていたようで話し方など穏やかであった。
「リリス殿、この度は不肖の息子ながら結婚を決めてくれてありがとう。何度も婚約を解消してもう結婚は出来ないのでないかと心配していたのです。本当によかった」
バルの母はリリスの手を取り、バールをよろしくと何度も言った。
「バール、ようやくまた婚約を果たしたな。今度こそ結婚するのだぞ。リリス殿、よろしくお願いする」
バルの両親はいい人だった。
「父上も昔は、兄上と感じが似ていたが田舎で静かに暮らすようになって穏やかな性格になったようだ」
ふたりは婚約を交わし、あとは準備を整え結婚するだけとなった。
精霊が戻ったリアンから手紙が届いていた。精霊を戻してくれた事のお礼とひどい事をして申し訳なかったと謝罪された。それとバルと今後何もしないと印を結んでいるので安心してほしいと、そしてまた精霊なしになるのが嫌なのでもうなにも仕掛けない事を約束してくれた。そして、国を出る事を考え直してほしいとも書いてあった。それはちょっと楽しみになって来ているので無理かもしれない。
婚約の儀式は、本当はそんなに必要ではないのだが、バルは王族という事もあり教会に積極的にお布施をしなければならない立場という事で、儀式を行う事にしたのだ。
儀式には両家の両親と顔を合わせ、教会で婚約として印を結ぶのである。解消したければまた教会に行かねばならない。なので婚約も貴族ぐらいしか最近は行わない。両家共々に印を結び婚約が成立する。
貴族ともなると、相手側がお家取り潰しなどがないかぎりは、勝手に婚約解消や破棄など非人道的な事は出来ないように教会で印を結ぶ事になっている。儀式を行う際にお布施は絶対で安くもない。儀式の時に嫁ぐ側のお相手の方に結婚の支度金としていくらか渡す。
そしてそれはなんらかの理由もなしに解消または破棄した場合は、支度金は戻ってこない。そうすることで簡単に解消や破棄をさせないようにしている。
そうならない為に、両家が納得をして教会に出向き印を結ぶのだ。バルは今回の婚約の儀は3回目だ。バルは2回も婚約・解消を繰り返している。お金もすいぶん掛かったことだろう。バルはこの2回の経験があるのでスムーズに進むがリリスは初めての事ばかりで目線があっちこっちと落ち着かない。教会でトイレを借りて迷子になっていたりする。
バルはそんなリリスを見て、なんとも可愛らしいと思う。魔力は誰よりも豊富で腕力は男のそれ以上で勇ましく、堂々としている。自分の方こそ守られている感じではある。でもリリスは気にしない。弱い男がキライだとか背の低い男はカッコ悪いとか思っていない。自分を見てくれている。
思えば、結婚というのを考えた事がなかった。親に決められ婚約をして婚姻を果たす。それが当たり前であった。初めて会った人と結婚するなど当たり前であったのだ。両親も祖父や兄もそうだった。父からも結婚してそれから恋愛が始まると言われていた。母もやさしい父を結婚して好きになったと言っていて幸せになっている。結婚はそういうものだと思っていた。
しかし、父は癒の精霊付であった。「お前も癒があればいいのだが付かない場合は苦労するかもしれんな」と言われた事を思い出す。なんの事だが今まで分からなかったが、そういうことであった。しかし、母は幸せなのだ。幸せならばそれでいい。「好きな人と結婚をする」リリスからその言葉聞いてなにを言っているのか理解出来なかった。結婚してから好きになるのではないのか?平民と貴族の違いなのかとも思った。
前の婚約者殿がディルイと仲良くなり婚約を解消した。ディルイの方がお似合いだと思ったのだ。仕方がないのだ自分が放っておいたから相手の婚約者殿が心変わりをしたのだ。自分が悪いと思いあっさりと解消した。今に思えば解消する理由を捜していたように思う。婚約者殿の意向など聞いたことがなかった。そして、名前も顔も朧気であった。なんとも自分はひどい事をしたことだろうか…
リリスからは婚約解消した俺の事をバカじゃないかと言っていたが、結婚はしたかったがそういう事じゃないとも思った。そういう事じゃないとはどういう事だと自分で疑問にも思っていた。
しかし、好きな人と結婚をする。リリスと婚約の儀を行う際にその意味がやっと理解出来た。
俺は好きな人と結婚をする。
▽
「え?婚約の儀?なにそれ?」
「バルのご両親と顔合わせをして教会で印を結ぶのよ」
「バルのご両親?うわっゴリゴリの貴族じゃない?えー緊張するなぁ」
「ゴリゴリ?」リリスはたまに変な言葉を使う。バルは意味を聞いてもよく分からない。
「大丈夫だよ。俺がこんな歳だ。早く誰でもいいから結婚しろと言わていた。リリスなら喜ばれるよ」
キースはまだ下級貴族のままだ。バルも貴族を廃していない。婚約の儀を交わしバルのご両親を安心させ、その後に貴族を廃する予定なのだ。
初めて会ったバルの両親は、「貴族である」という感じの貴族であった。しかし、ずいぶんと前に現役を退いてからは静かに暮らしていたようで話し方など穏やかであった。
「リリス殿、この度は不肖の息子ながら結婚を決めてくれてありがとう。何度も婚約を解消してもう結婚は出来ないのでないかと心配していたのです。本当によかった」
バルの母はリリスの手を取り、バールをよろしくと何度も言った。
「バール、ようやくまた婚約を果たしたな。今度こそ結婚するのだぞ。リリス殿、よろしくお願いする」
バルの両親はいい人だった。
「父上も昔は、兄上と感じが似ていたが田舎で静かに暮らすようになって穏やかな性格になったようだ」
ふたりは婚約を交わし、あとは準備を整え結婚するだけとなった。
精霊が戻ったリアンから手紙が届いていた。精霊を戻してくれた事のお礼とひどい事をして申し訳なかったと謝罪された。それとバルと今後何もしないと印を結んでいるので安心してほしいと、そしてまた精霊なしになるのが嫌なのでもうなにも仕掛けない事を約束してくれた。そして、国を出る事を考え直してほしいとも書いてあった。それはちょっと楽しみになって来ているので無理かもしれない。
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