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第3章

募集中

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 今日はセドとデートだ。セドも独身だし騎士団の第1部隊所属のエリートだ。一応ね。まあ、カヤの飯屋にご飯を食べに行くだけだけど、新作の料理を試食させてもらえるらしい。楽しみだ。

 転移してある程度歩いて、騎士団の稽古場まで向かう。

 なんで稽古場で待ち合わせなのだ。現地集合でよくないか?まあ行ったことがないからいいんだけど。

 あまり街中を歩くことはないリリスは道に詳しくない。ちょっとずつ違う道に迷いながら騎士団第1部隊の稽古場に到着する。稽古場に着くと女のコたちが数人いる。ファンの人や婚約者を待っている人のようだ。所謂出待ちという奴だろう。
 なぜかみんなドレスアップをしている。リリスといえば、いつもの魔女のように装っている黒のワンピースだ。華やかな女性たちの中で浮いた存在になっている。

「リリス、こっちだ」
 セドが騎士団の練習着なのか白のパンツに赤のトップスを着ている。
 派手だな…
「まだ着替えてないの?」
「今練習が終わったんだ。着替えてくるから待っていてくれ」
 この時間に来いと言わなかったか?カインが来ることになっていたから少し遅れたわけだが…

 少し汗ばんでいる身体を赤い髪をなびかせて颯爽と歩いている。それを見てた女のコたちはきゃあと騒いでいる。

 おや?なんだセドって人気あるのかな?じゃあなんで私とこんな所で待ち合わせをして飯屋に向かうんだ。お目当ての人がいてヤキモチを焼かせよう作戦じゃないだろうな。そんなのに利用するならぶっ飛ばしてやる。

「待たせたな」
 爽やか風を演出している。白いシャツに黒のパンツだ。男性は特にそれ以上の服はない。白いシャツにはフリルが付いているが…
「リリスは黒のなんて着るのか…黒は未亡人が着る服装だと知っているのか?」
「知っているわよ。でもこれは私の仕事着なの。着替える予定だったんだけどちょっと店を出るのが遅れてしまったから着替えられなかったのよ。まさかセドの着替えに待たされるとは思わなかったしね」
「あ…悪い。その…俺も稽古が長引いて…着替えてくるか。俺は待っているぞ」
「別にいいでしょ。ニールのお店に行くだけなんだし。もうお腹空いちゃったわ」
「そ…だな」
「でも女のコたちはなんかみんなドレスアップしてるのね。今日はなにかある日なの?」
「いや、いつもあんな感じだよ」
「いつも…?」
「お、お目当ての人とかいるんじゃないのか?」
「ああ、なるほどね」
 セドはセットした髪は崩した。
 
 食事をして帰る時にまた食事に行こうと誘われた。今度は休みの日に別の店にするよと言われた。黒のワンピは可哀そうだったかな。

 次の日、お店「ポポス」にジンが来た。
「やあ、リリス。リリスのお店ってなかなかの雰囲気だね。入るのに躊躇したよ」
「あら、キシたちのパーティー依頼ね。今日は休みなの?」
「ああ、今日は休みだったんだけど、それより君でもデートするんだね。昨日はセドが美貌の未亡人と待ち合わせてデートをしたと持ち切りだったよ」
 どうして休みなのに昨日の話の噂がわかるのだ。
「デートぐらいするでしょ。独身なんだし。花婿募集中よ」
「え?」
「え?」
「募集中なのかい?」
「は?それはそうでしょう?独身ですもの」
「いや…貴族の間では君に近づくと大変なことになるとか…色々となんかその…」
 バルかな?キースかな?
「貴族はお断りよ。私は貴族に嫁ぐ気ないし」
「ああ、そういうことか。なら俺でもいいんだな?」
「なにが?」
「候補だよ!花婿募集中なんだろう?」
「今は仕事中なのでナンパはお控えください」
「わかった。また来るよ」
 ジンは10歳くらい年上だったよね…悪くはいないけど、白ちゃんがランランしているのが気になる。まあ、契約している訳ではないから本人の意思ではないのだろうか…

 騎士団は闇の日が休みではなく、それぞれ平日が休みになっている。みんなが同じ日に休みだといざという時、困るもんね。

 そしてリリスは、なぜか隔週の闇の日にリアンとお茶会をしている。リエやキキにも一緒に来て貰い必ず1人では行かないようにしている。時間にして2時間もないが、毎回リリスは行くことになるので最近ちょっとメンドクサイ。

 今日はルキと一緒だ。ルキは王都で注目の食器職人だ。
「やあ、いらっしゃい。今日はめずらしい茶葉が手に入ってね。菓子はカフェ「リリス」の焼き菓子だよ」
 相変わらず、大きな白ちゃんがピカピカ光っている。ルキはリアンに尊敬のまなざしを送る。惚れさせる一歩手前に止めてはいる。そこはリアンの白ちゃんの腕の見せ所なのだろう。
「リアン、私の前でその方法はやめてって言ったよね?」
「それはそうだが初対面だとどうしてもね…」

 リアンは実は気が小さい。最近はわかったが人見知りでもあるようだ。大きな白ちゃんがリアンを守っているだけだ。それを大いに政治に活用するのは全然かまわない。しかし、友人や母までその餌食にしてほしくない。

「そんなことをするならもう来ないわ」
 よし、これを理由にもう行かないでおこう。

「待ってくれ。もうしないから…」
 気の弱いリアンをいたぶるのは悪くない。なにげにリアンもそれを望んでいる。Mかな?

「リリスなんのこと?ベネディクト公爵様に失礼よ」
 マキシミリアン国王は退位後、マキシミリアン・ディ・ベネディクト公爵となっている。この国は王が退位しても上皇とかはない。また貴族に戻るだけだ。この国は王族の公爵が大渋滞だ。

「いや、ルキ殿いいのだ。それと気軽にリアンと呼んでくれていい。ベネディクト公爵など長すぎる」

 リエも戦闘態勢でお茶会に臨んだが大きな白ちゃんに敗れた。多少合った憎しみもキレイに流れてしまっていた。憎しみは持っていても腐るだけでいいことなんてないからいいけど、それ以上の揺さぶりは禁止だ。いくら本人の特性とはいえ私は見えているわけだし、リエも見えている。それ以上するともう来ないよとリアンの白ちゃんに思考を送ったのだ。
 キキはただただ緊張していたのであまり被害はなかった。キキはわりとなんでも無視するので大物だと思う。

 ルキとも気軽に話をして、帰る際にはいつも高価なお土産を貰う。そしてリリスの手を取りまた2回後の闇の日にと約束をして返されるのだ。

 ルキはベネディクト公爵がリリスの手を取り、次回のお茶会の約束をしているのを見てびっくりしている。
「ねぇリアン様はリリスを気があるの?」
「そうみたい」
「そうみたいって…ど、どうするのよ」
「別にどうもしないよ。好きになれば受けるし、他にいい人がいれば断るし」
「そんなんでいいの?」
 もう退位している。結婚を急かされてはいないはずだ
「いいんじゃない?」
「リリスは大物ね。リアン様に求婚されれば舞い上がっちゃうわ」
「なによ。ルキはキシがいるじゃない」
「そ、それはまた別の話じゃない?」
 真っ赤な顔をしている。なにが別なのか
「リアン様のような上級貴族からのお申し入れなんてもうおとぎ話よ?」
「リアンはおじさんよ」
「渋いというのよ。リリスはまだ若いからあの渋さがわからないのね」

 分かってます。中身がおばさんだからリアンのようなシブオジなんて理想だけど白ちゃんがいつもランランと輝いているのが気に入らない。あれを見ると冷めるのだ。
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