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第3章

世界の中心

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 キースは護衛をすると言い、少し離れた所に移動した。

「この泉は世界会議で公表しよう。そして独占を禁ずることも…」
「よろしいのですか?」
 貴族たちは反対するだろう。せっかくのヒース様の泉を独占できる環境にあるにも関わらず手放すのだから。
「結局ここはまだ誰にも知られていない秘境だ。バルはここの位置を確認出来ているか?」
「え?いえ…」

「ここはまさに世界の中心たる場所だ。おいそれと来ることは出来ない。昔の記述では、我が国の王族は確かにこの場所に来ていた。森の中のどこかに転移用のガゼボがあるはずだ。もう何百年も放置しているからどうなっているか分からないが…
 他の国がこの泉のことを知っているとは思えない。滅んでは新しい国が出来ているのだ、古い文献などはもう残っていないだろう。我らのように長い歴史の国はそう多くない」
 陛下は目を閉じふうとため息を漏らす。

「では、ガゼボを捜しましょう」
「いや、城のガーデンにガゼボがあっただろう?あそこが最初の場所だ。そこから転移すればいずれ、いずれここに着くはずだ。いいのかね、リリス嬢。この場所にはもうこれなくなるよ?」
「え?いや、来ますけど」
「ん?世界の皆に明け渡すのでは?」
「渡しますが、私も来ますよ」

「まさか、王族専用にするおつもりですか?」
「し、しかし、転移なしにどうやって行くのだ。平民にはムリだろう」
「公開だけしてあとは、ほっとけばいいんじゃないですか?」

 どういう地理なのかはよくわからないが、頑張ればみんな来れるようになれるのではないかな?人間というのはすごいのだ。行きたい場所があれば自力で行くだろう。かつて「日本人は世界のどこにでもいる」という言葉を聞いたことがある。探求心があれば行くだろうし、誰かひとりでもルートを確保すれば数年かで来るよ。王家がどうにかしなくてもね。公開だけしてあとはほっとけばいい。でも世界樹が育つ場所だしどうするかだよね。

『世界樹はそんなやわではない。おぬしがようやく切り倒したものをそこら辺の者がどうすることもない、ほっとけばいい』
 頭の中にいないはずのレイジュ様の声がする。たまになにか考えていると昔同じ質問をしたかのように思い出される。もちろんそんな質問したことはない。

 レイジュ様は私の身体の中にいるのかもね…

 バルは数個の瓶に泉の水を入れている。陛下に言われて持って帰るようだ。王宮の錬金術師に鑑定してもらうのだろう。もうキキがしているけどね。

 キキによると泉の水はやはり数時間経つと劣化するらしい。リリスは時空収納に入れて持ってきていた為ものすごく新鮮な泉の水だった。だがキキはすぐに調べなかった。1日経ってから調べたのだ。リリスがきちんと説明をしないからだが。
 そして、泉に来たときに水を持って帰ったキキだったが、やはり新鮮ではない。今度はリリスに頼み収納をさせて貰う。収納から瓶を取り出しすぐに調べた。やはり濃厚な魔素とエリクサーによく似た成分で不思議な水だが、2日後には魔素も薄くなり普通の水になり3日後の朝には蒸発していた。高級ポーションも長期保存は出来ないがそれ以上だ。冷蔵しても保温しても結果は同じだった。


 泉から城に戻り、挨拶をすませ、リリスたちは自分たちの邸に戻ろうとする。
「泉の件は公表する。誰の物でもないことを世界会議で印を結んで世界中の住民全員に利用件があることを発表しよう」
 陛下はそれが1番いいと決断したようだ。
「それがいいと思います」
 リリスは安心した。にっこりと笑いよかったと言う。
「それが片付けば私は王位を退く」
「そうですか」
 皆はえ?っという顔になるが、リリスは結構どうでもいい…

「…第1王子が婚姻をしただろう?私はちょっと長すぎたと思っているんだ。王子がちょっと結婚が遅くて私が早かったからね」
「そうですか」
「興味ないかね」
「ええ、まあ」
「自分の国の王位のことだよ?」
「なんと言えば満足するのでしょうか?」
「それで…私は平民になろうと思っている」
「「え?」」
 それには近くにいる全員が声を上げた。リリスは眉をしかめる
「ああ、だからリアンと呼べとか紛らわしい事を言ったんですね」
 平民になるからファミリーネームで呼んでいいよ、と言っていたのだとリリスは理解する。
「紛らわしいとは…」
「陛下がそんなことを言うから父も母も変だったし、御立場があるのだからもう少し口に気を付けた方がいいのではないですか?」
「リアンと呼んでほしいのは正直な気持ちだよ」
「では、リアン。あなたは平民になってどうするんですか?なにをするんですか?なにか豊かな才能でもあるんですか?奥さんもいないのにどうやって生活して生きて行くんですか?貴族に残って新しい王様を支えてあげた方がリアンらしいと思いますけど」

「やはり、そう思うかい?」
「誰だって思っているでしょう。態度だけデカくて仕事も生活面でも面倒を掛けられたらたまったもんじゃない。大人しく貴族をしていてくれた方がましです」
「君が平民からやり直せと…」
「あら?私のせいにするんですか?」
「いやそうでは…」
「私は関係ありません。ご自身の事はご自身で責任を取ってください」

 リリスにガツンと言われ少々凹んでしまった陛下であった。

 なんだろう、あの威風堂々としていた陛下はどこへ…

 バルは世界会議の件と退位の件で大忙しだ。やはりバルは夕食に来ない。
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