70 / 110
第3章
世界の中心
しおりを挟む
キースは護衛をすると言い、少し離れた所に移動した。
「この泉は世界会議で公表しよう。そして独占を禁ずることも…」
「よろしいのですか?」
貴族たちは反対するだろう。せっかくのヒース様の泉を独占できる環境にあるにも関わらず手放すのだから。
「結局ここはまだ誰にも知られていない秘境だ。バルはここの位置を確認出来ているか?」
「え?いえ…」
「ここはまさに世界の中心たる場所だ。おいそれと来ることは出来ない。昔の記述では、我が国の王族は確かにこの場所に来ていた。森の中のどこかに転移用のガゼボがあるはずだ。もう何百年も放置しているからどうなっているか分からないが…
他の国がこの泉のことを知っているとは思えない。滅んでは新しい国が出来ているのだ、古い文献などはもう残っていないだろう。我らのように長い歴史の国はそう多くない」
陛下は目を閉じふうとため息を漏らす。
「では、ガゼボを捜しましょう」
「いや、城のガーデンにガゼボがあっただろう?あそこが最初の場所だ。そこから転移すればいずれ、いずれここに着くはずだ。いいのかね、リリス嬢。この場所にはもうこれなくなるよ?」
「え?いや、来ますけど」
「ん?世界の皆に明け渡すのでは?」
「渡しますが、私も来ますよ」
「まさか、王族専用にするおつもりですか?」
「し、しかし、転移なしにどうやって行くのだ。平民にはムリだろう」
「公開だけしてあとは、ほっとけばいいんじゃないですか?」
どういう地理なのかはよくわからないが、頑張ればみんな来れるようになれるのではないかな?人間というのはすごいのだ。行きたい場所があれば自力で行くだろう。かつて「日本人は世界のどこにでもいる」という言葉を聞いたことがある。探求心があれば行くだろうし、誰かひとりでもルートを確保すれば数年かで来るよ。王家がどうにかしなくてもね。公開だけしてあとはほっとけばいい。でも世界樹が育つ場所だしどうするかだよね。
『世界樹はそんなやわではない。おぬしがようやく切り倒したものをそこら辺の者がどうすることもない、ほっとけばいい』
頭の中にいないはずのレイジュ様の声がする。たまになにか考えていると昔同じ質問をしたかのように思い出される。もちろんそんな質問したことはない。
レイジュ様は私の身体の中にいるのかもね…
バルは数個の瓶に泉の水を入れている。陛下に言われて持って帰るようだ。王宮の錬金術師に鑑定してもらうのだろう。もうキキがしているけどね。
キキによると泉の水はやはり数時間経つと劣化するらしい。リリスは時空収納に入れて持ってきていた為ものすごく新鮮な泉の水だった。だがキキはすぐに調べなかった。1日経ってから調べたのだ。リリスがきちんと説明をしないからだが。
そして、泉に来たときに水を持って帰ったキキだったが、やはり新鮮ではない。今度はリリスに頼み収納をさせて貰う。収納から瓶を取り出しすぐに調べた。やはり濃厚な魔素とエリクサーによく似た成分で不思議な水だが、2日後には魔素も薄くなり普通の水になり3日後の朝には蒸発していた。高級ポーションも長期保存は出来ないがそれ以上だ。冷蔵しても保温しても結果は同じだった。
泉から城に戻り、挨拶をすませ、リリスたちは自分たちの邸に戻ろうとする。
「泉の件は公表する。誰の物でもないことを世界会議で印を結んで世界中の住民全員に利用件があることを発表しよう」
陛下はそれが1番いいと決断したようだ。
「それがいいと思います」
リリスは安心した。にっこりと笑いよかったと言う。
「それが片付けば私は王位を退く」
「そうですか」
皆はえ?っという顔になるが、リリスは結構どうでもいい…
「…第1王子が婚姻をしただろう?私はちょっと長すぎたと思っているんだ。王子がちょっと結婚が遅くて私が早かったからね」
「そうですか」
「興味ないかね」
「ええ、まあ」
「自分の国の王位のことだよ?」
「なんと言えば満足するのでしょうか?」
「それで…私は平民になろうと思っている」
「「え?」」
それには近くにいる全員が声を上げた。リリスは眉をしかめる
「ああ、だからリアンと呼べとか紛らわしい事を言ったんですね」
平民になるからファミリーネームで呼んでいいよ、と言っていたのだとリリスは理解する。
「紛らわしいとは…」
「陛下がそんなことを言うから父も母も変だったし、御立場があるのだからもう少し口に気を付けた方がいいのではないですか?」
「リアンと呼んでほしいのは正直な気持ちだよ」
「では、リアン。あなたは平民になってどうするんですか?なにをするんですか?なにか豊かな才能でもあるんですか?奥さんもいないのにどうやって生活して生きて行くんですか?貴族に残って新しい王様を支えてあげた方がリアンらしいと思いますけど」
「やはり、そう思うかい?」
「誰だって思っているでしょう。態度だけデカくて仕事も生活面でも面倒を掛けられたらたまったもんじゃない。大人しく貴族をしていてくれた方がましです」
「君が平民からやり直せと…」
「あら?私のせいにするんですか?」
「いやそうでは…」
「私は関係ありません。ご自身の事はご自身で責任を取ってください」
リリスにガツンと言われ少々凹んでしまった陛下であった。
なんだろう、あの威風堂々としていた陛下はどこへ…
バルは世界会議の件と退位の件で大忙しだ。やはりバルは夕食に来ない。
「この泉は世界会議で公表しよう。そして独占を禁ずることも…」
「よろしいのですか?」
貴族たちは反対するだろう。せっかくのヒース様の泉を独占できる環境にあるにも関わらず手放すのだから。
「結局ここはまだ誰にも知られていない秘境だ。バルはここの位置を確認出来ているか?」
「え?いえ…」
「ここはまさに世界の中心たる場所だ。おいそれと来ることは出来ない。昔の記述では、我が国の王族は確かにこの場所に来ていた。森の中のどこかに転移用のガゼボがあるはずだ。もう何百年も放置しているからどうなっているか分からないが…
他の国がこの泉のことを知っているとは思えない。滅んでは新しい国が出来ているのだ、古い文献などはもう残っていないだろう。我らのように長い歴史の国はそう多くない」
陛下は目を閉じふうとため息を漏らす。
「では、ガゼボを捜しましょう」
「いや、城のガーデンにガゼボがあっただろう?あそこが最初の場所だ。そこから転移すればいずれ、いずれここに着くはずだ。いいのかね、リリス嬢。この場所にはもうこれなくなるよ?」
「え?いや、来ますけど」
「ん?世界の皆に明け渡すのでは?」
「渡しますが、私も来ますよ」
「まさか、王族専用にするおつもりですか?」
「し、しかし、転移なしにどうやって行くのだ。平民にはムリだろう」
「公開だけしてあとは、ほっとけばいいんじゃないですか?」
どういう地理なのかはよくわからないが、頑張ればみんな来れるようになれるのではないかな?人間というのはすごいのだ。行きたい場所があれば自力で行くだろう。かつて「日本人は世界のどこにでもいる」という言葉を聞いたことがある。探求心があれば行くだろうし、誰かひとりでもルートを確保すれば数年かで来るよ。王家がどうにかしなくてもね。公開だけしてあとはほっとけばいい。でも世界樹が育つ場所だしどうするかだよね。
『世界樹はそんなやわではない。おぬしがようやく切り倒したものをそこら辺の者がどうすることもない、ほっとけばいい』
頭の中にいないはずのレイジュ様の声がする。たまになにか考えていると昔同じ質問をしたかのように思い出される。もちろんそんな質問したことはない。
レイジュ様は私の身体の中にいるのかもね…
バルは数個の瓶に泉の水を入れている。陛下に言われて持って帰るようだ。王宮の錬金術師に鑑定してもらうのだろう。もうキキがしているけどね。
キキによると泉の水はやはり数時間経つと劣化するらしい。リリスは時空収納に入れて持ってきていた為ものすごく新鮮な泉の水だった。だがキキはすぐに調べなかった。1日経ってから調べたのだ。リリスがきちんと説明をしないからだが。
そして、泉に来たときに水を持って帰ったキキだったが、やはり新鮮ではない。今度はリリスに頼み収納をさせて貰う。収納から瓶を取り出しすぐに調べた。やはり濃厚な魔素とエリクサーによく似た成分で不思議な水だが、2日後には魔素も薄くなり普通の水になり3日後の朝には蒸発していた。高級ポーションも長期保存は出来ないがそれ以上だ。冷蔵しても保温しても結果は同じだった。
泉から城に戻り、挨拶をすませ、リリスたちは自分たちの邸に戻ろうとする。
「泉の件は公表する。誰の物でもないことを世界会議で印を結んで世界中の住民全員に利用件があることを発表しよう」
陛下はそれが1番いいと決断したようだ。
「それがいいと思います」
リリスは安心した。にっこりと笑いよかったと言う。
「それが片付けば私は王位を退く」
「そうですか」
皆はえ?っという顔になるが、リリスは結構どうでもいい…
「…第1王子が婚姻をしただろう?私はちょっと長すぎたと思っているんだ。王子がちょっと結婚が遅くて私が早かったからね」
「そうですか」
「興味ないかね」
「ええ、まあ」
「自分の国の王位のことだよ?」
「なんと言えば満足するのでしょうか?」
「それで…私は平民になろうと思っている」
「「え?」」
それには近くにいる全員が声を上げた。リリスは眉をしかめる
「ああ、だからリアンと呼べとか紛らわしい事を言ったんですね」
平民になるからファミリーネームで呼んでいいよ、と言っていたのだとリリスは理解する。
「紛らわしいとは…」
「陛下がそんなことを言うから父も母も変だったし、御立場があるのだからもう少し口に気を付けた方がいいのではないですか?」
「リアンと呼んでほしいのは正直な気持ちだよ」
「では、リアン。あなたは平民になってどうするんですか?なにをするんですか?なにか豊かな才能でもあるんですか?奥さんもいないのにどうやって生活して生きて行くんですか?貴族に残って新しい王様を支えてあげた方がリアンらしいと思いますけど」
「やはり、そう思うかい?」
「誰だって思っているでしょう。態度だけデカくて仕事も生活面でも面倒を掛けられたらたまったもんじゃない。大人しく貴族をしていてくれた方がましです」
「君が平民からやり直せと…」
「あら?私のせいにするんですか?」
「いやそうでは…」
「私は関係ありません。ご自身の事はご自身で責任を取ってください」
リリスにガツンと言われ少々凹んでしまった陛下であった。
なんだろう、あの威風堂々としていた陛下はどこへ…
バルは世界会議の件と退位の件で大忙しだ。やはりバルは夕食に来ない。
268
お気に入りに追加
5,493
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。