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第3章
秘密の話
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「リリス…この国の王子にあの態度はいけないわ」
「アカデミーでは関係ないと聞いている」
夕食に招待されたキキはリリスに注意するも全然聞き入れてもらえない。
「キキ殿、無駄だ。俺だって散々注意しているのに「アカデミーでは関係ないと聞いている」しか言わない頑固者だ」
また、バルがいる。
「バル、ひとん家に来て悪態を付かないで。いったい毎日なにしにうちに来てるのよ」
「いいだろ!城は気苦労が多いんだ!ここに来ると和むんだよ!」
「家で和めよ」
「家はひとりなんだよ!」
「だから結婚すればよかったのに!いい顔をして婚約者を別の男に譲るなんて女からしたらちょっとムカつく。こっちを見ろ!と年上の余裕を見せつけてもよかったんじゃないか?」
「う…」
「そんなんじゃいつまでたっても独身だな。フフン」
リリスはご機嫌だ
「リリス…公爵様にもそれなの?」
「ここは私の家よ。私の態度がいやなら来なければいいのよ」
「キキ殿、いいのです。イージュレンからの付き合いだ。リリスの事はよくわかっている」
「そ、そうなのですか…。公爵様がいいのでしたら…」
キキは困惑する。公爵など王子と同じくらい天上人だ。
「キキ殿、この家に居るときは気軽にバルと呼んでくれて構わない」
「えっ?」
キキはキースとリエを見る。2人はいつもの事なので頷いている。
「で、では、失礼ながらバル様と呼ばせて頂きます」
「キキそんな事より、お願いしていた水質調査はどうなったの?」
「そんな事って…ここで話していいのね?」
キキは周りを見渡す、リリスは謎が多い、念のため確認する。
「もちろん、お父さんもお母さんにもバルも大丈夫よ」
「そう…ふう、リリスあれはなに?あんな水質、実際では見たことないわ」
キキはリリスに関してもうびっくりし過ぎて逆に冷静でいられる。いちいちびっくりしていたら身が持たない。
「あれは、世界樹から出ていた温泉?水?かな」
リリスはバルを見る。「ねっ」と当たり前のように言うリリスにバルは気の毒そうにキキを見る。
「せ、世界樹…?」
「そう、後で案内するよ」
「お、お願いするわ…」
世果樹…数ヶ月前に何者かによって伐採され、新しく種を植え世界は救われた、とか世界中で噂になった出来事。世界樹の存在だっておとぎ話だと思っていた者たちからは、これもなにかの政治的戦略だろうと言われていた。だけど、森の魔素は薄くなり狂暴な魔獣は本当に居なくなった。世界樹の白い幹でお焚火をし、世界中の森は安定した。しかし今では冒険者の仕事がなくなり素材も不足気味になり世界樹を伐採したことは間違いではなかったかと言われている。
でも伐採しなければ狂暴な魔獣によりスタンピードが起こっていたと言われるとなにも言えない。国は伐採した者を「救世主」と呼んでいる。しかし伐採した者は謎のままだ。本当の所なにが正解だったのかわからない。リリスは世界樹に関わっているの?春先、リリスは魔力切れを起こし寝込んでいたわね…
「リリス、言えない事があるのなら言わなくてもいいけど…あなたが世界樹を伐ったという「救世主」なの?」
食卓がシンと静まり返る。やはり聞いてはいけなかったのだろうか…しかし話の流れ上それしか考えられない。リリスの力は未知数だし…でも私が聞いてはいけなかったのかもしれない。じゃあ私の前でそんな話しないでよ。
「そうよ」
ゴクンとリリスから聞こえる。
リリスは料理を口に頬張り過ぎて話が出来なかっただけでキキが思っている緊張感はない。
「そうよって秘密ってわけじゃないの?」
キキはリリスからの簡潔な物言いに納得できない。
「秘密よ。でもキキに秘密にする意味がないわ。キキは私の師匠なわけだし。これからも色々と協力をお願いすると思うしね」
「そ、それはだ、大丈夫なことなのかしら?」
キキはちらりとバルの方を見る。
バルはにこりと笑顔をキキに送る。
「キキ殿、心配はいらない。リリスがあの「救世主」なのは俺しか知らない。陛下も名前は承知しているが顔までは知らない。これから先も誰も知ることはない。よってキキ殿が心配していることはなにもない」
「そ、そうなのですか…」
リリスがあの「救世主」だったことは国家秘密でもないのね。王様も貴族も知らない。公爵のバル様のみご存じだということ。全然理解出来ない。国を挙げての事ではないの?そもそもなぜ、リリスなのか?この世界樹の水というのは…
「キキ、世界樹を伐採したのは私、でもそれは国から言われたからとかではないわ。その主から頼まれたの。世界樹を伐らないと魔素が増えて、そのままにしておくと世界樹も朽ちて枯れるから、その前に伐ってほしいって。今はまたそこに新たな世界樹が育つの。私は魔力が豊富というだけで選ばれたの。たまたまよ。伐れる者がいれば誰でもよかったの。たまたまあの場所に行けて、伐れる事さえ出来れば誰でもよかったのよ」
「主というのは…?」
「世界樹の精霊、精霊の王かな?」
「アカデミーでは関係ないと聞いている」
夕食に招待されたキキはリリスに注意するも全然聞き入れてもらえない。
「キキ殿、無駄だ。俺だって散々注意しているのに「アカデミーでは関係ないと聞いている」しか言わない頑固者だ」
また、バルがいる。
「バル、ひとん家に来て悪態を付かないで。いったい毎日なにしにうちに来てるのよ」
「いいだろ!城は気苦労が多いんだ!ここに来ると和むんだよ!」
「家で和めよ」
「家はひとりなんだよ!」
「だから結婚すればよかったのに!いい顔をして婚約者を別の男に譲るなんて女からしたらちょっとムカつく。こっちを見ろ!と年上の余裕を見せつけてもよかったんじゃないか?」
「う…」
「そんなんじゃいつまでたっても独身だな。フフン」
リリスはご機嫌だ
「リリス…公爵様にもそれなの?」
「ここは私の家よ。私の態度がいやなら来なければいいのよ」
「キキ殿、いいのです。イージュレンからの付き合いだ。リリスの事はよくわかっている」
「そ、そうなのですか…。公爵様がいいのでしたら…」
キキは困惑する。公爵など王子と同じくらい天上人だ。
「キキ殿、この家に居るときは気軽にバルと呼んでくれて構わない」
「えっ?」
キキはキースとリエを見る。2人はいつもの事なので頷いている。
「で、では、失礼ながらバル様と呼ばせて頂きます」
「キキそんな事より、お願いしていた水質調査はどうなったの?」
「そんな事って…ここで話していいのね?」
キキは周りを見渡す、リリスは謎が多い、念のため確認する。
「もちろん、お父さんもお母さんにもバルも大丈夫よ」
「そう…ふう、リリスあれはなに?あんな水質、実際では見たことないわ」
キキはリリスに関してもうびっくりし過ぎて逆に冷静でいられる。いちいちびっくりしていたら身が持たない。
「あれは、世界樹から出ていた温泉?水?かな」
リリスはバルを見る。「ねっ」と当たり前のように言うリリスにバルは気の毒そうにキキを見る。
「せ、世界樹…?」
「そう、後で案内するよ」
「お、お願いするわ…」
世果樹…数ヶ月前に何者かによって伐採され、新しく種を植え世界は救われた、とか世界中で噂になった出来事。世界樹の存在だっておとぎ話だと思っていた者たちからは、これもなにかの政治的戦略だろうと言われていた。だけど、森の魔素は薄くなり狂暴な魔獣は本当に居なくなった。世界樹の白い幹でお焚火をし、世界中の森は安定した。しかし今では冒険者の仕事がなくなり素材も不足気味になり世界樹を伐採したことは間違いではなかったかと言われている。
でも伐採しなければ狂暴な魔獣によりスタンピードが起こっていたと言われるとなにも言えない。国は伐採した者を「救世主」と呼んでいる。しかし伐採した者は謎のままだ。本当の所なにが正解だったのかわからない。リリスは世界樹に関わっているの?春先、リリスは魔力切れを起こし寝込んでいたわね…
「リリス、言えない事があるのなら言わなくてもいいけど…あなたが世界樹を伐ったという「救世主」なの?」
食卓がシンと静まり返る。やはり聞いてはいけなかったのだろうか…しかし話の流れ上それしか考えられない。リリスの力は未知数だし…でも私が聞いてはいけなかったのかもしれない。じゃあ私の前でそんな話しないでよ。
「そうよ」
ゴクンとリリスから聞こえる。
リリスは料理を口に頬張り過ぎて話が出来なかっただけでキキが思っている緊張感はない。
「そうよって秘密ってわけじゃないの?」
キキはリリスからの簡潔な物言いに納得できない。
「秘密よ。でもキキに秘密にする意味がないわ。キキは私の師匠なわけだし。これからも色々と協力をお願いすると思うしね」
「そ、それはだ、大丈夫なことなのかしら?」
キキはちらりとバルの方を見る。
バルはにこりと笑顔をキキに送る。
「キキ殿、心配はいらない。リリスがあの「救世主」なのは俺しか知らない。陛下も名前は承知しているが顔までは知らない。これから先も誰も知ることはない。よってキキ殿が心配していることはなにもない」
「そ、そうなのですか…」
リリスがあの「救世主」だったことは国家秘密でもないのね。王様も貴族も知らない。公爵のバル様のみご存じだということ。全然理解出来ない。国を挙げての事ではないの?そもそもなぜ、リリスなのか?この世界樹の水というのは…
「キキ、世界樹を伐採したのは私、でもそれは国から言われたからとかではないわ。その主から頼まれたの。世界樹を伐らないと魔素が増えて、そのままにしておくと世界樹も朽ちて枯れるから、その前に伐ってほしいって。今はまたそこに新たな世界樹が育つの。私は魔力が豊富というだけで選ばれたの。たまたまよ。伐れる者がいれば誰でもよかったの。たまたまあの場所に行けて、伐れる事さえ出来れば誰でもよかったのよ」
「主というのは…?」
「世界樹の精霊、精霊の王かな?」
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