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第3章

次男坊

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 なぜかバルが一緒に夕食を共にしている。最近は世界樹の件も終わり、通常の公務になっているらしい。公務事態はそんなに忙しくなく、バルは夕食時によく現れる。そして、4人でレイジュ様の泉に行っているのだ。

「次男坊って…マクシミセリア様か?」
「長い名前だったね。セリアって言ってた」
 百均か

「バルも名前長かったよね。覚えてないけど」
「王の元に生まれた王族は、王になれば初代からのファーストネーム「マクシミ」を受け継ぐ。俺の父はマクシミジョニル、マクシミリアン陛下の叔父になる。俺の父親は公爵になったから「ディ」が付く。「ディ」が付くのは王族出身という意味だ。俺の名前はジョニルバール・ディ・ロイスだ。公の場でバルと呼ぶなよ」
 公の場ってなんだ?

「バルのお兄さんの子供もジョニルが付いてなかった?トールを受け継ぐのでは?」
「兄はジョニラトールな。王になった者はファーストネーム「マクシミ」を受け継ぐが、なれなかった者はファミリーネームを受け継ぐ。ファミリーネームとはジョニルの部分だ。陛下はリアン。俺の父はジョニルだったが…ジョニを受け継ぐ。俺の子もな…」
「ジョニジョニうるさいな」
「だな…。リリスも貴族だろう?ちゃんと貴族の事を勉強しろよ」
 気が向いたらね
「というか…バルはなんでいつもここで夕食を取ってるの?最近よく来るね」
「むっ来ちゃ悪いのか。泉にいきたんだよ」
「私はいいけど、世間からは私目当てに通っていると思われない?婚約者がいるんじゃなかった?」
「婚約者…は、いるが…」
「なんだ、話を聞いてやろか?」
 ニヤニヤするリリス
「…いや、…」
「なんだ?」
 キースとリエは黙って2人の会話を聞いている。
「ふう、最近ディルイと仲がいいんだよ」
 誰だ
「誰それ」
「ああ、兄の次男坊だ。ジョニバディルイ。俺の部下なんだが…例のレイジュ様の件では、俺が一人忙しくしていた時期にどうやらディルイと仲良くなったようなのだ」
 ほーお
「まぁ、婚約者をほっておいた俺が悪い」
 はぁ
「婚約を解消してしようかと思っている」
 ほほお
「いいのか?王様からの直々の紹介じゃなかった?」
「よく知っているな。そうだが仕方ない。陛下もわかってくださる」
 へえ
「ディルイは19歳の時に婚約者がいたがあの事件で解消された。俺の婚約者殿も17歳でまだ若いのだ。俺なんかより若いディルイの方がお似合いだよ。婚約を解消しても半年ほど経てば、とくに問題もない。2人の幸せが大事だよ」
 相変わらず、お優しい…

「でも結婚したかったんだろう?」
「そうだけど、違う人を思っている人と結婚なんていやだよ。可哀そうだし。それにディルイは長身のイケメンなんだよ。若い子はそういうのに向くだろう?」
 確かに…バルは背も低いしもうおじさんだしな…

「そんなことより、セリア様はなんと?」
「は?知らないよ?ああ、なんか私がイージュレンで冒険者をしていた時の話が聞きたいのかも。もうすぐ3級の試験なのに余裕だよね。優秀なの?」
「え?陛下の息子ならみな優秀だろう」
「でも4回受験落ちたって…」
「いや、王子としての公務もあるから受かっただけでもすごいんだ」
「そうなんだ…」
「また無視したのか。セリア様だぞ」
「アカデミーでは関係ないと聞いている」
「そ、それはそうだが…」
「私は3級の試験勉強で忙しい。これからも無視する」
「宣言するなよ…」



「やあ、ドルフェス、今日もキレイだね」
 リリスがカフェ「リリス」でランチの後に復習をしていたらまた次男坊がやって来た。
「いつもここの席を陣取っているね。怒られない?そうかここはドルフェス家のカフェだったね。店名も娘の名前を付けて「リリス」、とても愛されているね」
 なんだろう?喧嘩を売られているのだろうか?

 リリスがいつも使っている席は一番奥のトイレに近い場所だ。よっぽどじゃないとその席は使用しないので陣取っていても文句は言われない。逆にもっと人通りがある場所に通そうとする。

「ごきげんよう。どうしましたか?」
「いや、ただの挨拶だよ?」
「今のが?」
「…そ、だね」
「私の父は活躍をして、母はお店が繁盛しているので貴族の仲間入りをさせていただきましたが私はただの一般庶民です。今のが挨拶とはちょっとよくわからないわ」

「それは失礼したね。正直に言うと君と話すきっかけがほしかっただけだよ」
「ああ、その言い方をされるとわかるわね」
次男坊が勝手に席に座って来た。
「また、冒険者の話を聞きたいの?卒業してからって言わなかったかしら」
「ほんの雑談でもダメなのかい?」
「雑談といっても…」
「ドルフェスはとても有名なんだよ。あの事件抜きでも、いつも颯爽としているし長い足で大股ですごい速さで廊下を歩いているだろう?あまり女性があんな速さでは歩かないからね。もっと優雅にゆっくり歩いたほうがいいのでは?」

「何のために?」
「え?」
「何のために、ゆっくりと優雅に歩くのよ?私は人ごみが嫌いだから、その群れから出ようと早く歩いてるの。それにいい教授のクラスも急いで取りに行かないとすぐに埋まってしまうのよ?優雅になんて言ってらんないわ」
「それはこれから僕が取ってきて上げるよ?ドルフェスはゆっくりと後から来るといいよ」
「は?なんであなたからクラスを取ってもらわないといけないのよ?自分の事は自分で出来ますけど?」
「貴族の女性はそう言うものだよ?」
「教えて頂いてありがとう。でも必要ないわ」
「どうしてそんなに頑ななの?」

 男でいても女でいても頑なと言われるな…なぜだ?

「…あなたとは話が合わないみたい。合わない人と話をしても無駄だと思うわ」
 リリスは立ち上がると、次男坊は手を出す。
「必要ないわ。私は貴族にはならないので、アカデミーを卒業したらあなたとはそれから先、会う事もないでしょう。では、ごきげんよう」

 リリスは颯爽と大股で歩いて帰った。
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