異世界転生したら、なんか詰んでた 精霊に愛されて幸せをつかみます!

もきち

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第2章

冬になる前に

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 キキはマジックバックの製作と講習の準備で大忙しだ。リリスも出来ることは手伝いをし勉学に取り組み、両親とともに泉に通う日々が続いた。
まさにスローライフだ。

 雪がちらほらと舞ってくるようになった頃、リリスとリエは暖炉の近くでまったりとしていた。父キースが仕事から戻ってきた。

「ただいま、リエ、リリス」
 意気揚々とキースはリビングに入って来た。

 キースは真っ直ぐにリリスの所にきてハグをした。
「グっ」
 リエより未だになれない。

「ああ、ごめんよ、リリス。力が入り過ぎてしまった」
「だ、大丈夫だよ」
 キースはもっともっとハグをいっぱいしたい所だが、リリスが女の子ということもありなかなかハグも出来ない。リエから「リリスが怖がるから」と止められている。そう、リリスから見えれば知らない大人の男性なのである。

 焦ってはダメだとリエから言われていたが、俺の可愛い娘リリス、もっともっと抱きしめたい。
と、キースは思っている。色んな物を買ってきては甘やかすことでストレスを発散しているのであった。

「どうしたの?今日はいつもよりなんだか嬉しそうね」
 リエがキースに話を戻す。キースはいつも目の前のことに夢中になると話の途中でも忘れてしまう。
「そうだ!リリス喜べ!あの男を捕まえた!」

 え?
 あの男とは
「緑の男だよ、リリス」
 わかっています。ジョセフだ。 

「なんとしても冬が始める前に捕まえたかったのだ。これでゆっくり冬を楽しめるよ」
 冬にはなにがあるのだろうか?

 キースは第5部隊の隊長である。その権限をフル活用し部隊をフル総員して動かし、夏頃からジョセフを捜索していたのだとか。

 えーー!父ちゃん…職権乱用…

 王都にはまだ入っていないことなどは分かっていたので集落を徹底的に捜したのだとか。集落といってもイージュレンから王都まで24の集落がある。大きい集落から小さい集落があり、1つ1つ潰していったのだとか。なかなか成果が出なかった為、第1部隊の参謀を引っ張り出しどこに潜伏しているか予想を導き出し、とうとう見つけ出したのだと言う。大丈夫それも訓練の一環だ!とキースは言う。

 ほぇ~執念…でもジョセフは確かに色々やらかしていたのだろうが、あのジュリエッタに食い物にされた被害者でもある。そんなにしてやらんでも…

 リリスは今が幸せなので色々辛い目に合わされたことなど忘れている。が、両親からすれば、可愛い我が子を無理やり押し付けられようともそんな扱いをしていたジョセフは許せない。レイジュ様の泉で初めてリリスから幼少の話を聞き、こっそりと怒り狂っていたのだ。リエはキースに見つけるまでリリスにハグ禁止まで言われていたのだそうだ。

 そういえば、リエがいる所では、あまりハグはされなかったような…

 ジョセフは捕まり拘束されているだと言う。
 罪名は結婚詐欺罪

 アミに対して結婚するとうそぶき、大金を巻き上げたとされる。しかし、イージュレンに来る前から色々とやらかしているそうだ。

 ジョセフはなぜだかモテる。男の色気が駄々洩れのようで近くに白の精霊でも付いているのかというくらいモテていた。イージュレンでロゼがモテていたのは白の精霊のせいでもあったのかもしれない。
 少しくたびれているイケオジは、娘のミルがいなくなった後の春にユロランの下町から姿を消した。なんてカッコイイ表現ではあるが、実際はきちんと商人ギルドで花屋を廃業する書類を作成し提出していた。家も不動産ギルドに出向き、きちんと書類を提出し鍵を返して家を出たのだ。近所の人たちには一言も挨拶などなかった為、ミルがいなくなってジョセフもいなくなった、ような感じがしたのだろう。

 その後、ジョセフは馴染みの女性らの所で子供が行方不明になったと言い、泊めてもらったり、数百ベニーの金を貸してもらったり、装飾品を勝手に質に入れたりと、色々と数人の女性たちに迷惑を掛けながら王都に向おうとしていたらしい。ユロランに問い合わせると被害届が出されている。

 ジョセフはリタが消えた後、男手一つでミルを育てた。再婚の話もあったが子供のために再婚はしなかった。それはバルの聞き込みでの近所の人たちの評判だ。
 しかし、近所の人たちはリタから捨てられたのだとわかっていた。きっとかわいいミルがいるので戻ってくると信じて待っているのだと、そう思われていた。
 その後、ミルが学校にも行かず、家の手伝いのため一人で馬車に乗っていたりと、そんな姿を見るたびに、やはり男手一つでは女の子を育てるのは難しいのではと噂になっていた、そんなときにミルが姿を消した。

 ジョセフは、ミルが消えた後とミルが作ったわずかな金も使い果たし、働くこともせず花屋を廃した。そのときに祖父が花屋を開業する際に収めていた金が入った。その金で両親の所に行こうと思ったのだ。女たちに子供を捜していると言うのは形だけだった。

 ジョセフはリタが消えてミルは自分の子ではないと薄々と思い出させていた。5歳の誕生祭や学校に行く手続きなど手間の掛ることをする気にはなれなかった。悔やまれるのは金払いのいいあの女を逃がしたことだ。その時にミルだけは逃がさないと決めた。あの女も自分の子供がいるのだからいつか必ず戻ってくる。その時に金を吹っ掛ければいい。それまでは目一杯こき使ってやる。そう思っていた。
 しかし、ミルが出て行ったことであの女に金をせびることも出来なくなった。

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