上 下
39 / 110
第2章

相談

しおりを挟む
 秋も夜になると少し冷え暖炉に火が灯る。ルキは明日早いからと帰って行った。残った4人で暖炉の近くに座り談笑している。

「キキに相談があるんだった。素材なんだけどどうしょうかって。イージュレンのエトに薬草園を広げてもらって王都まで配達するのはどうかって思うんだけど」
「薬草園はいいとして配達は2ヶ月掛れば薬草も新鮮ではなくなるわ。王都で買った方が新鮮よ」
「王都の薬草はどうなっているの?誰か作ってるの?」
「新鮮な物がほしければ、若い冒険者が結界の近くで詰んでくるだけよ。でもどんなに早くても2日は掛るわ。後は、乾燥させた物を農家から仕入れているわね。森に近い農家が結界魔石を自腹で購入してエトと同じように育てているけど、王都まではやっぱり時間が掛るから」
「あ~イージュレンの領主が持っていた。マジックバックって作れないの?劣化しない奴」
「あんなのおとぎ話級よ。そんな簡単に出来ないわ」
「キキなら作れる?」
「え?素材があれば挑戦したいわね…」
「時の精霊と契約してなくても作れるの?なにがいるの?」
「…まず魔石、大きな紫の魔石よ。時の精霊と契約してる者にしか作れないわ。リエやリリスは時の精霊と契約していると思うけど、でもダメ。魔石に魔力を落とすのに何年も掛るわ。少しずつ魔石に落とさないとその人が死んじゃう。だからマジックバックを作るのは10年単位よ。しかも大きな容量なら尚更ムリよ。それに早く魔力を込めないと魔力が消滅しちゃうし、はっきり言って今ある物もどうやって作ったかも想像したくないわ。だからその方法は諦めて」
「…」
 なんかいい物があるな

リリスは自身の収納から取り出しコロンとキキの前に転がした。
「これはどう?」
「…」
キキはサッと拾い、なにかのレンズでそれを見る
「こ、これ…」
キキは真っ青である。
「ロゼ!これどこで手に入れたの!こんな濃い紫の魔石!魔獣の魔石ではないでしょ?紫の魔獣なんてしらないし。これに魔力を落とした人は生きてるの!?」
キキはリリスに詰め寄る。

「大丈夫みたい。お母さんの故郷で生きてるみたいよ」
母の国、なんだっけ?ニールヴォン…?ニールヴァンス王国
「その紫の魔石はまさか…」
リエは息を吞む。

「えっと、誰だっけ?お母さんのお姉さん?ジュリエ…」トではなく…
 
「ジュリエッタ」
リエは真っ青だ。キースはリエを抱き寄せる。
「そうそう。その人の魔力…」
 おや?
みんなが紫の魔石を凝視している。

 あれ?見せてはいけない奴だった?バルが持ってろって言ってたけど早く処分してほしいんだけど。こんなの持っていたくない。

「ど、どどどどうやって手に入れたの?」
 バルみたいになってる
「えっと…」
青くなっているキースとリエを見る。2人の目が真剣だ。

 しまったな。そんなにいやな存在なんだな。そりゃそっか、子供を誘拐されたんだもんね。あの女の話をして辛さが蘇るかも、自分から言い出したんだけど。あ~キキと2人の時に言えばよかった。
 でもキキが知っていて両親が知らないとかは避けたい。

 リリスは当事者だが、攫われた先が…産まれた先が…の違いしかないのであまりつらさが身に染みていない。ジュリエッタに関してもあまり関わっていないせいか割とどうでもよく、まったくもって興味がない存在なのだ。キースとリエに至っては、トラウマだろう。耳にも入れたくないほどの存在なのかもしれない。
 

「リリス、いいの。おしえて。私たちのことは気にしないで」
キキはハッとなる。
「ごめんなさい。私ったら…」
「いえ、きちんと聞きたいわ。おしえてリリス」
リエがリリスを抱きしめる。

 リリスはおよそ1年前の集落で合った出来事を話す。まだ去年の秋の出来事だ。大まかな事は伝えていたが細かくは言ってない。魔力を奪ったなんてもちろん言ってない。

 詳細はジュリエッタが母だと思って会ったが、なんだか襲ってきそうだったので時を止めたのだ。母ではないと知り、事情がわかるまで逃がさない為に魔力を奪ったのだった。後で必要なら返そうと思っていたのだ。

「え~と、母だと思って会ったのになんかそんな雰囲気ではなくて攻撃されそうだったからその時に魔力を奪ったの…だってなんか怖かったから…」
 時を止めれることは誰にも言っていない。この国ではそんな発想がないので言うと混乱しそうだ。なので、なんとなくぼかす。こういう時は子共に戻るに限る。成人してるけど…、でも怖かったのは本当だ。

「わかるわ。怖かったのよね。いいの。いいのよ。ジュリエッタにはいいの」
抱きしめてくれる母。母はリリスのことをなんでも肯定してくれる。

「リリスは他人の魔力を奪えることが出来るのね。そっちの方が大問題なんだけど…そんなこと他の人に言ったり、魔力を奪ったりしてないでしょうね?」
キキは大きな力を持つリリスが心配になる。両親は過保護だし。

「そんなことは言わないし、やらないよ。あれは緊急事態!」
 中身がおばさんなのだ、怒りに任せて人に苦しみを味合わせるなどしないし、その力を誰かに自慢したいとかもない。若い時ならば私だってそれなりに自慢したくて、うずうずしただろうけどね。キキは中身が自分と同世代だと知らないから心配だよね。15歳の力がある子供が野放し状態なのだ。そりゃ心配だ。

「私は魔力が多すぎて身体がつらかったの。だから魔石に魔力を入れてたのよ。そうこうしてたら奪うことも出来た…」
 色々と端追って、辻褄が合わないことを言っているのはわかっている。しかしキキにはまだレイジュ様のことを言ってない。

「ん~もういいわ。リリスに関しては私には手に負えそうもないわ。キースとリエにまかせる。でも決して他の人にはしてはダメよ。それよりこれは…」
 匙を投げられてしまった…
「バルにさ…あっ今の公爵?あの人に渡そうとしたんだけどロゼが持ってろって言うんだよ。私だって持っていたくはないしさぁ。早く処分したいんだよね」

「処分って…」キキは頭を抱える。
公爵ってああ、ロゼ、リリスの叔父って言っていた停留所で見たあの童顔の人…
「そ、その公爵様に連絡は出来る?これを使っていいのか」
「手紙を書いとく」
どうしてロ、リリスは事も無げに…公爵様をそんな適当に…
またキキは頭を抱える。

 紫の魔石はキキ預かりとなった。やっとなんとなく触りたくない魔石がリリスの収納から消えてくれた。助かった。


 しばらくすると、バルからメール便が届きいた。
「使ってよし」

 キキに証拠としてメール便を見せる。

 バルよ、レイジュ様の件はどうなった。

しおりを挟む
感想 297

あなたにおすすめの小説

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。