異世界転生したら、なんか詰んでた 精霊に愛されて幸せをつかみます!

もきち

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第2章

先駆者

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 キキは王都にある実家のポーション専門店に復帰した。元々親の代からポーション屋ではあったが、優秀過ぎるキキには物足りなかったようだ。高級付与師の資格を得てからも質の悪い素材を使っていてはどんなに技術を磨いてもポーションの質が上がらないと嘆いていたとか。
 それがイージュレンから取り寄せた素材を使うと質が上がった。今はイージュレンが「熱い」との事で両親の反対を押し切りイージュレンに移住を決めたのだ。そして、戻って来たら両親から怒られた。そんなことより、さっさと結婚しろとどやされたのだ。

 キキもまだまだ親には頭が上がらないらしい。

「キキって何歳?若く見えるけど、ザリと同期って言ってたよね?」
「ザリとは同期だけど、私は優秀だったから一発合格よ!ザリなんて7・8回は落ちてるって言ったわ。ほほほ」
「で、何歳?ザリの歳も知らないし、ザリは40歳前だった?じゃあ30歳くらい?」
「…人には言いたくないこともあるわ」
「歳が?なんで?キキは可愛いし、どんな錬金術師より優秀なのにたかが歳のことで卑屈になるの?変なのぉ」
 ちょっと子供ぽく言ってみた。大好きなキキだ。年齢ごとき気にしてほしくない。

 今日はキキを「リリス」に招待している。アイスとカフェオレを頼んでこれからの事を相談したくて呼び出したのだ。

 私の前世は52歳で独身だった、はっきり言ってあまり自慢出来る人生ではなかった。キキほど優秀なら独身だろうと友達が少なかろうと関係なかったことだろう。
 この国ではスズカもなく学卒もない、親から愛されなかったという事実が恥ずかしかった。前世から引き続き自分を否定さているかのように思っていた。だから嘘を重ねたのだ。まぁ人それぞれってことね。

「……ぃよ」
「え?」ぼんやりとしていたらキキが何か言った。
「…4…ぃよ」
「え?」34歳?なんだ若いじゃん

「54歳よ!!」
 …えー?同世代?いやいや、見えないし。ある意味モンスター

「はぁ、錬金アカデミーを受けたのはもう40歳の頃よ。それまでは実家を手伝ったり、冒険者をしたりしていたわ。その頃にレオンとも知り合ったの。私が若かった頃は、錬金アカデミーは女子禁制だったのよ。だから中級の資格しか取れなくて。でも絶対男より私の方が優秀でしょ?だから高級を取りたいからアカデミーに入れてくれって直談判をしたの。
 でもダメだった。女のくせにって。女は黙って男の帰りを待ってろって言われたわ。親にも言われたし、だから結婚もしないで腕を磨いていたのよ。
 国にも抗議したわ。王様に手紙を出したり、そうしたら今の国王様が規則を変えてくださって女性も通えるようになったのよ。
 それが、あなたが産まれた頃よ。私は女性高級付与錬金術師第1号になったの」

「すごい!!そんなすごい人だったの?キキって」
「すごくないわよ。親は男に混ざって恥ずかしいって、結婚して孫の顔が見たかったって言うだけなんだもの」
 ああ、時代なのだろうな
「あ~孫ね…キキは兄妹はいなかったの?」
「いるわよ。6人兄弟の末っ子よ」
「じゃあ孫はいるでしょ?」
「孫はいるわよ。私の子供が見たいって事よ」

 キキがいなかったら私も錬金術アカデミーに行けなったかもしれないな。
キキは時代の先駆者ね。こんなすごい人の弟子なんて私ってラッキーね

「ロゼは…いえ、リリスは錬金アカデミーに入りたいの?」
「ロゼでいいよ。リリスなんて可愛すぎて私に似合わないよね」
「なに言ってるの。素敵な名前よ。今のあなたにすごくピッタリの名前だわ」
 キキは自分の名前に照れているリリスに素直に褒めた。ロゼに親がいないのならキキは自分の養子に迎えようかとも思っていたのだ。

 今のリリスは髪も伸び、両親と一緒に食事もきちんと取っているためなのか、女性らしいふっくらとした輪郭にもなっている。誰ももう男の子だとは思うまい。以前はのロゼは痩せていて、一人で生きているせいなのか目つきも鋭かった。そして、どこかなにかを諦めている感じがしたのだ。
 しかし、今では両親のもと普通の幸せそうな15歳の美少女だ。並んで歩くと身長差があり過ぎてどっちが大人か一瞬迷う事はあるだろうが。
「そう…かな?」
 えへへと少し赤くなるリリスは可愛かった。

「で?錬金アカデミーは本当に入りたいの?ザリに言われただけでしょ?その頃は男だって思われていたし、今は女の子なんだから好きな人と結婚って道もあるのよ」

「あ~まぁそうなんだけどね。別に好きな人も今はいないし、私には高級の資格は難しいかもしれないけど、学校に行ってみたいんだ。ほら、私学卒の試験は受けたけど学校自体行ってないし、どんな感じか味わいたいんだよね」
 ははと笑うリリスだったが、ちょっとお涙ちょうだいである。
「そ、そうよね。リリスは学校に行ったことがないのよね…」
 あっちょっとしんみりしちゃった。この世界のって最初に付くんだけどね。

 バルにはあの後、貴族に戻って公爵になったことの経緯を手紙で受け取った。
 そして、街の新聞で婚約したことを知った。あの事件のことは公爵の妻が嫉妬に駆られて近親者の子供を攫ったことのみ公表された。誰の子というのはもちろん知らされてはいないが、その事件のせいで公爵が変わったことは知らされた。そして、婚約のことを知ったのだ。

 少し胸がチクリとした。

 この国にも新聞はある。主に王族関連のことで話題になるが、貴族のスキャンダルも後ろのぺージに記載される。どこぞの子爵が不倫をして修羅場だの、どこぞの伯爵に隠し子がいただの、どこの国でもこの手のネタは大好きである。今回は王族関連だったため、トップページだ。


 この事件の子供がリリスであることはキキやルキは知っている。瞳の色は闇の精霊を使い青い瞳にしていたことは打ち明けていた。2人はびっくりしていたが生い立ちを考えると仕方がなかったのかと考えた。
 しかしそんなことで2人は態度を変えなかった。

 バルは忙しそうで会えずにいる。キキやルキからはあの駅馬車の停留所に一緒にいた叔父と言っていた人ははどうしたのか、と聞かれたがその叔父が公爵になったと言ったらびっくりしていた。

 バルはいい奴だったが、まだ恋をしていたかどうかは分からない。ルーイやザリの時もそうだが、ちょっといいなと思っていたら居なくなったり、詐欺師だったり、公爵になっていただけだ。

 失恋というほどでもないやい、と思っている。
ルーイは王都にいるようだが、どこにいるかは分からない。王都は広いのだ。
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