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第1章

ローズレッド

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レイジュ様の所で温泉に2人で入っている。
足湯だ。
「バルは今仕事をしてるの?」
「今は王宮の外で素材の取引をしている」
「私の他にも素材を買ってたの?」
「もちろん、王宮では様々な研究が日夜行われている。その素材や研究発表も各国で行われている。素材はあればあるほどいい。遅れをとると国が衰退するかな。ルクセルボルン王国はトップクラスの国だ。遅れを取るわけにはいかない」
 へぇ学会みたいのがあるのか。学会で発表しようと思っていたことがあったな。
…なんだっけ?あ~メモしておけばよかった。もう忘れちゃった。てへっ

「だから俺はまあ、一般人にはなったが同じ仕事を任されている。個人で貴族に戻されるかもな。必要とされるならばと、ありがたくお受けすると思うが…」
 しがらみから抜け出したのにまた戻るのか…もの好きなヤツ

「ロゼはもう素材集めはしないのか?」
「ん~錬金の素材は取りに行くからそのついでなら頼まれてやらんでもないかな」
「そうか…でも可愛いワンピースを着て女性らしくなってきたのに冒険者の話になるとまた男っぽくなるな。悩ましい所だな」
 おまえが悩むな…

ロゼは今、ガウチョパンツではなく冬用の可愛らしいワンピースを着ている。
「可愛いワンピースを着ていたら確かに女の子に戻るな。でね、もう買って来なくいいから。こっちに来るたびに服やら靴やら買ってくるけどもういいから」
闇の日になるたびにバルはロゼに似合いそうな物を色々買ってくる。

「巷では俺にいい人が出来たのではないかと噂がたっているよ。はは」
 笑いごとなのか?
「いいんだ。買って上げたいんだ。自己満足だ。付き合ってくれ」
 なんのこっちゃ?
「バルがいいのならいいが…」
「男性口調になっているぞ」
 ほっといてくれ

 可愛いワンピースを着て普通に生活していると、どんどん馴染む。日本のことや50代だったことが夢だったんじゃないかと今では思うほどだ。
こうやって生活していって自然と忘れて行くことなのかもしれない。
こちらの人間になって来ているのだろう。

「バル、お母さんに会ってみようと思ってる。どうすればいい?」
「…そうか、兄さんには言わない方がいいかもしれないな。義姉上だけに知らせてみよう」

「いいのか、本当に」
バルは心配そうにロゼをのぞき込む。
「いつかは会いたいと思っていた」

「わかった。ここで会うのはどうだろうか?」
「ここはダメ。集落の方にしてくれ」
「なんでレイジュ様の所はダメなんだ?」
「ここは私の隠れ家だ。まだよく知らない人には教えない」
「っぷ、そうか。では集落に呼ぼう」
「なんで笑うんだ」
「いや、可愛いとこあるなって思って。ぷぷ」
??

 なんで笑うんだ。ここは私の憩いの場だ。どんな母親かも分からないのに教えるわけないだろう。

ココイズ3号集落の教会で会うことにした。

 教会は今ではメール便が置いてあることで郵便局のようになっている。
しかし、その扉の奥は椅子があり人々が祈る場所もあるが、今では祈る人はいない。この小さな教会では精霊石は置いていない為なかなかお布施も集まらない。集落の人が精霊と契約するときは王都まで出向いているようだ。今は神父さんが一人でこの集落の教会を守っている。

1週間後か、1ヶ月後かと思っていたら明日の昼2の音に決まった。

 神父さんに頼み、昼2の音から昼3の音までを貸し切りにしてもらう。お布施を納めれば結婚式やお葬式などでも使われているようである。


 明日か、ずいぶん早いな。まぁ長くドキドキしなくて済むからいいけど。
なにを着よう、バルから買ってもらったドレスにルキのお下がりもある。
紫の瞳に合うドレス。
 久しぶりに自分の紫の瞳に戻し鏡を見ながらドレス選びをする。
靴は『ロムト』で買ったお洒落なブラウンのブーツにしよう。このブーツは一目ぼれをして買ったんだった。まだ一度も履いてない。
 やはりワンピースだろうな。このピンクはどうだろうか。ピンクなんか似合わないと思っていたが若い今しか着られない。これはバルが選んでくれた、ローズレッドのワンピース。鮮やかな紫みの赤色、ザックリ言うと濃いピンクだな。

 青み掛った銀髪に紫の瞳。ローズレッドのワンピース。甘々だろうか?
に、似合っているかな?
『すごく似合ってるよ!』
精霊たちが褒めてくれる。

 当日、約束の音が近づき、選んだワンピースを身に纏う。髪をセットし薄くメイクもする。メイク道具もバルが買ってきた。
宿の部屋を出るとバルがいた。宿の中に転移してきていた。
「似合っているよ」
と褒めてくれた。
バルと一緒に教会の扉の前まで転移する。すでに母親は来ているのだとか。

 死んでいると聞かされ、父ジョセフには冷たくされ寂しく一人で過ごした日々、母親の面影も知らぬまま14年生きてきた。

 心臓の音が外まで漏れているんじゃないかくらい激しく波打つ。
バルは教会の扉を開ける。
「開けるよ」
バルは外で待っているからと一人で教会に入る。

 教会に入ると、吹き抜け部分の窓から自然光が一人の女性を照らしている。金色の髪に一筋の紫色が混ざっている髪をアップにして豪華なドレスと装飾品を身に纏っている。この小さな教会には似つかわしくない人物だ。
 顔立ちはメイクをしたロゼにどことなく似ていた。
「ミルなの?」
「はい…」
声が強張る
「素晴らしいわぁ、さすが紫の血筋」

「すごい精霊の数ね。闇の精霊も8体もいるのね。負けたわ。わたくしなんてたったの5体よ」
??
「ずいぶん、闇の精霊を酷使しているのね。フフフ」
???
「わたくしに全部ちょうだい?」
!!!

母はロゼよりも光の大きな白の精霊を従えていた。
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