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第1章

北の門

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 時は秋に戻り、北の門に着いたロゼとバル。
ロゼはほぼ下町から出たことがなかった為、北の門の繫華街に酔いしれた。北門はこの街の中では、豪華な造りだ。ちょっと質素なパリの凱旋門のようだ。
 街の建物もカラフルで凝っている。色々な店が立ち並んでおり、帽子や靴、鞄の専門店などがある。最近話題の『ロムト』という靴屋も大盛況だ。エトのお兄さんたち、ロトとムトの店のようだ。今日はお祭りなのかと思うほど街は人通りが多く活気がある。レストランのメニュー表にはステーキセットやバーガーセットなどもあった。

 バーガー?!ハンバーガーか?
あの背の高いハンバーガーかな?は?105ベニー?高っ!

 バルは見慣れているのだろう普通だと言う。今日は北門近くに宿を取り明日出発することにした。あまり宿にも泊まったことがなかった為ロゼは喜んだ。いつもならお金がもったいないとどこかの森で野宿だ。
 宿を探すことにするが2人はひどい身なりをしていた。ジョセフの古着だ。バルはいやがったが下町出身に見せるために無理やり着せた。このままでは宿には入れない。いくらお金を持っていようとこの恰好では、受付で止められてしまう。
 北門の服屋に行くことにした。最初、店に入ると店員からいやな顔をされたが、バルが紫の瞳を見せるとなにか事情がおありなのかと接客をしてくれた。

 ロゼは下着やドレスを買った。バルは持っていた服に着替えることにした。最初店員は、ロゼが女性だとは気が付かずに紳士服を進めていたがバルにドレスをと言われ慌ててドレスを選んだ。バル持ちだ。

 金額を聞いたロゼは貴族の服はこんなに高いのかと思ったが、これは裕福な商人用の服でそんなに高くないとバルは言った。しかも古着だ。

 服ってこんなに高いのか…1枚998円でトップスを買っていた身としてはこの値段はえげつない。

 服屋の店員により、キレイに着飾ってもらった。
青色が掛った銀髪に濃い青の瞳に合うようなシンプルなワンピースドレスだ。髪は成人女性と思われたのかアップにされ、薄くメイクを施す。
 立派な貴婦人だ。

 バルの手を取り、宿に向かう。宿では兄妹として泊まることにした。
とても豪華な宿だった。3mもあるような大きな黒い重厚な扉にタイル張りの床。白い壁には細かな細工が美しく各所に精霊王が祭っている。

 部屋に案内されると貴族のような服はやはり性に合わない。すぐにブラウス・ガウチョパンツに着替える。

「なんだ。もう着替えてしまったのか、キレイだったのに」
 バルはにやにやしている。
「中年男が若い女に向かって、にやにやとしていたらキモイぞ」
「誰が中年だ!」
 中年の自覚がないのか…
「こんないい宿ではなく、もう少し庶民的な所でもよかったんじゃないのか?」
 部屋は2部屋あり、豪華なリビング付きだ。部屋には憧れの天井付レース盛沢山の豪華なベッドだ。
「ここは宿ではなく、ホテルと言うんだ。まあちょっと高いが今日だけだ。ちょっとロゼが都会で楽しいそうにしていたから泊まらせてやりたかったんだ」
バルは照れくさそうに言う。
「甘いぞ、バル。俺に金貨の100枚を取られたのを忘れたのか。一般人になったら不安だぞ!」
「う、うるさい。ここは素直にありがとうと言うんだよ!」
「そうだな、ありがとう」
素直に言うロゼ。本当はすごくうれしかったのだがやはり照れくさい。

「ぐっこのタラシめ!それにもう一般人だよ。それにしてもロゼ、まだ口調が男っぽいぞ。王都に着く前には直せよ」
なぜか、顔を赤らめるバルだった。

 ホテルの近くで夕食を取る。久しぶりにレストランで食事をするので緊張した。マナーなどは前世と変わりがないようだが、バルがしたことを同じようにマネしていく。たまに時ちゃんがちがうちがうそれはスープ用のスプーンよ!とか注意してくれる。

 貴族めんどくせー

 次の日の朝、朝2の音で北門を出発した。2ヶ月間の長旅になるので駅馬車は庶民用とお金持ち用と貴族用に分れていた。貴族用は黒光の光沢が美しい豪華な10人用の駅馬車だ。小奇麗な冒険者の護衛が就いている。
 庶民用は木製で作られた座り心地が悪そうな20人用の駅馬車だ。護衛なんていない。大きさも貴族の駅馬車と変わらない。バルはお金持ち用の駅馬車に乗ろうとしていた。
 確かに安くても庶民用の駅馬車はあまり乗りたくない。おしりが痛そうだし、隣が近い。お金持ち用の駅馬車は庶民用より、ちょっとキレイに見せている木製だ。でも14人用だ。護衛もいる。バルがスズカでチケットを2枚購入している。

「ロゼ、スズカを見せて」
 街を出る者はみんなスズカで確認をしなければならない。これはユロランで経験済みだ。
「バル、私の分は自分で出すのに」
ドレスも買ってもらった。
「姪っ子にお金出させるなんていやだよ。無くすなよ」
木片を渡される。
 姪っ子だって。血は繋がってないのに。

 チケットは紙ではなくキレイに削った木片だった。それに行先と期間が焼き印されている。
期間は1年だ。1年の間はこのお金持ち用の駅馬車に自由に乗り降り出来る。

 王都行きの駅馬車は割と快適だった。背もたれは少し斜めになっていて、椅子にはクッションが敷いてあり、そのクッションに座ると少し浮いた。風の魔法が付与されているクッションだそうで背もたれにも付いていた。クッションに風の付与が付いてない人もいる。値段で変わるのだそうだ。

 やばい、さりげない気遣いに惚れそうだ。血は繋がっていないしな。

惚れっぽいのはあいかわらずだ。
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