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第1章
お尋ね者
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春になり、3人はあの男のことは忘れていた。最初の一週間はなんだかんだと議論をしていたが、ギルドに来ないので忘れてしまっていた。
サムが5階のアパートの鍵が1室ない事に気が付いた。誰に貸していたかと調べた所冬の前に人探しをしていた緑の男だと思い出した。部屋代は手続きの際に現金でまとめて受け取っていた。前払いの為すっかり忘れていたのだ。
ムカイが様子を見にアパートに向かった。景色はすっかり春で駅馬車ももう動いている。レオンの娘、ルキたちも王都に出発していた。
ムカイは5階にあるジョセフの部屋をノックするが返事がない。声を掛けるもやはり返事がない。ドアノブを回すと開いた。ゆっくり入るムカイ。部屋はもぬけの殻であった。
鍵はベッドの上に置いてある。
「勝手に出て行ったのか…」
とムカイが思っていると
「あーー!!」
と突然、上から声がした。
ムカイは部屋から出ると6階から女性が駆け下りる所だった。
そしてムカイの胸ぐらを掴んですごい力で揺さぶって来た。
「あの男はどこよーーーー!!わーーーん」
と泣き出した。
「ちょ、ちょっと落ち着いてなんだ?どうしたんだ!」
ムカイは女性を落ち着かせ一緒にギルドの客室に向かった。
その女性はアミと言う。1年ほど前からアパートに一人暮らしをしている女性だ。不当に離婚されたが離縁金を貰ったのでこの春から住み込みで宿に働く予定だったのだそうだ。そんな女性がどうしたと言うのだろう。
話しを聞くと緑の男に有り金をすべて取られたと言っている。
なぜ、そうなる?
話は去年の雪が降り出した頃に戻る。
宿で仕事を終えたアミは自身の部屋の6階に向かって階段を登っていた。そうしたら、ズデーンと大きな音がしたので駆け上がったのだと言う。
緑の髪、緑の瞳のちょっとくたびれたイケオジがしりもちを付いていた。なにをしているのかと思ったが6階に行こうとしていたようだ。
6階以降は女子寮で立ち入り禁止だと説明はしている。そして6階の階段にはロゼが作った水結界が張っていた。青い魔石に結界条件を付与させ6階以降は登録者のみ入れる仕組みにしていた。キキのお墨付きだ。
その緑の男は水に溺れ、ぺっと吐き出させたそうなのである。
男はジョセフと言い、その緑の瞳に見つめられすぐに恋に落ちた。
彼は生まれつきの精霊なしで妻も子供にも逃げられて寂しいのだと言った。
そして、アミも不当に離婚され傷が癒えぬままだったようで、2人は5階のジョセフの部屋で逢瀬を重ね、愛を育んだと言う。
ジョセフは自分で馬番の仕事を見つけて働いていたのだとか。商人ギルドにも働き手として提出されている。
そしてアミはこの春に結婚するからと宿の住み込みの仕事も断った。2人で暮らす部屋を決めた所で、ようやく入って来た離縁金を結婚資金だとジョセフに渡してしまった。アミは服やブーツなども数点、ジョセフの部屋に置いていた。それも含めてすべて消えていた。どうしたらいいか分からず色々と捜したが見つからず部屋で泣いていた所をムカイが来たようだ。
なぜすぐに知らせないのだ。兵士かギルドに知らせていれば駅馬車の停留所で捕まえられたかもしれない。しかしアミはお金を預けた後、自分は3日間泊まりで宿の仕事をしなければならなかったのだと言う。仕事開けで5階の部屋に戻ったらもぬけの殻だった。服屋には自分の服やブーツ、カバンが売られていたそうだ。
裏切られたのだとわかって泣いていたのだ。
レオンとムカイ、サムはなんとも言えなかった。2度も男に騙されたのだ。
まだ19歳だ。
「俺が悪かった。よく分からない男をアパートの住人にしてしまって」
サムが頭を下げた。
ギルドのアパートには6階以降女子寮になっている。まだ2年目だがこの春で満室になった。こんなに需要があるとは驚きだ。しかも、ロゼが女性の恰好をしてギルド内をウロウロしていたおかげなのか女性の冒険者が増えた。この間の冬には、剣・弓や錬金の講習に女性の姿がちらほら見られるようになっていた。
そして男しかいなかった冒険者の職員もこの春から数人女性を雇っている。
こういう時のためだ。
アミをその女性職員に任せ、ジョセフの捜索にかかる。まずは令状を作り兵士に渡す。兵士から正式に受理されればジョセフはお尋ね者だ。
しかし、ジョセフは駅馬車で3日前にイージュレンを出て王都に向かっていることがわかった。後は王都の兵士に任すしかない。
王都の門で捕まればいいのだが。ジョセフは指名手配された。
アミはまたしばらく、宿の仕事を続けてギルドのアパートに住むようだ。住み込みの件は、既に他の人に決まっていたそうだ。金はギルドから借りた。今回はギルド職員の落ち度もあり返金は半分で良いのと期間は無期限だ。
後味の悪い事件である。ジョセフは精霊なしのため「精霊が去る」という抑制が効かない。
こんな事例はめったにないのである。
「しかし、精霊なしになったり、精霊なしが現れたり、こんなことは、この2・3年に集中しているな。あの男がロゼのオヤジならロゼ関連ばかりだ。あいつ街を出てからも迷惑掛けやがって」
レオンは腕組をしながら悪態をつく。
今回の件はロゼにしたらとんだとばっちりである。
サムが5階のアパートの鍵が1室ない事に気が付いた。誰に貸していたかと調べた所冬の前に人探しをしていた緑の男だと思い出した。部屋代は手続きの際に現金でまとめて受け取っていた。前払いの為すっかり忘れていたのだ。
ムカイが様子を見にアパートに向かった。景色はすっかり春で駅馬車ももう動いている。レオンの娘、ルキたちも王都に出発していた。
ムカイは5階にあるジョセフの部屋をノックするが返事がない。声を掛けるもやはり返事がない。ドアノブを回すと開いた。ゆっくり入るムカイ。部屋はもぬけの殻であった。
鍵はベッドの上に置いてある。
「勝手に出て行ったのか…」
とムカイが思っていると
「あーー!!」
と突然、上から声がした。
ムカイは部屋から出ると6階から女性が駆け下りる所だった。
そしてムカイの胸ぐらを掴んですごい力で揺さぶって来た。
「あの男はどこよーーーー!!わーーーん」
と泣き出した。
「ちょ、ちょっと落ち着いてなんだ?どうしたんだ!」
ムカイは女性を落ち着かせ一緒にギルドの客室に向かった。
その女性はアミと言う。1年ほど前からアパートに一人暮らしをしている女性だ。不当に離婚されたが離縁金を貰ったのでこの春から住み込みで宿に働く予定だったのだそうだ。そんな女性がどうしたと言うのだろう。
話しを聞くと緑の男に有り金をすべて取られたと言っている。
なぜ、そうなる?
話は去年の雪が降り出した頃に戻る。
宿で仕事を終えたアミは自身の部屋の6階に向かって階段を登っていた。そうしたら、ズデーンと大きな音がしたので駆け上がったのだと言う。
緑の髪、緑の瞳のちょっとくたびれたイケオジがしりもちを付いていた。なにをしているのかと思ったが6階に行こうとしていたようだ。
6階以降は女子寮で立ち入り禁止だと説明はしている。そして6階の階段にはロゼが作った水結界が張っていた。青い魔石に結界条件を付与させ6階以降は登録者のみ入れる仕組みにしていた。キキのお墨付きだ。
その緑の男は水に溺れ、ぺっと吐き出させたそうなのである。
男はジョセフと言い、その緑の瞳に見つめられすぐに恋に落ちた。
彼は生まれつきの精霊なしで妻も子供にも逃げられて寂しいのだと言った。
そして、アミも不当に離婚され傷が癒えぬままだったようで、2人は5階のジョセフの部屋で逢瀬を重ね、愛を育んだと言う。
ジョセフは自分で馬番の仕事を見つけて働いていたのだとか。商人ギルドにも働き手として提出されている。
そしてアミはこの春に結婚するからと宿の住み込みの仕事も断った。2人で暮らす部屋を決めた所で、ようやく入って来た離縁金を結婚資金だとジョセフに渡してしまった。アミは服やブーツなども数点、ジョセフの部屋に置いていた。それも含めてすべて消えていた。どうしたらいいか分からず色々と捜したが見つからず部屋で泣いていた所をムカイが来たようだ。
なぜすぐに知らせないのだ。兵士かギルドに知らせていれば駅馬車の停留所で捕まえられたかもしれない。しかしアミはお金を預けた後、自分は3日間泊まりで宿の仕事をしなければならなかったのだと言う。仕事開けで5階の部屋に戻ったらもぬけの殻だった。服屋には自分の服やブーツ、カバンが売られていたそうだ。
裏切られたのだとわかって泣いていたのだ。
レオンとムカイ、サムはなんとも言えなかった。2度も男に騙されたのだ。
まだ19歳だ。
「俺が悪かった。よく分からない男をアパートの住人にしてしまって」
サムが頭を下げた。
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そして男しかいなかった冒険者の職員もこの春から数人女性を雇っている。
こういう時のためだ。
アミをその女性職員に任せ、ジョセフの捜索にかかる。まずは令状を作り兵士に渡す。兵士から正式に受理されればジョセフはお尋ね者だ。
しかし、ジョセフは駅馬車で3日前にイージュレンを出て王都に向かっていることがわかった。後は王都の兵士に任すしかない。
王都の門で捕まればいいのだが。ジョセフは指名手配された。
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こんな事例はめったにないのである。
「しかし、精霊なしになったり、精霊なしが現れたり、こんなことは、この2・3年に集中しているな。あの男がロゼのオヤジならロゼ関連ばかりだ。あいつ街を出てからも迷惑掛けやがって」
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