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第1章
緑の男
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ロゼが旅立って1ヶ月が過ぎ森には雪が降り始め、エトたちは薬草園を閉じていた。そんな頃、冒険者ギルドに一人の男が尋ねてきた。
「人を捜しているのだが、聞いてもいいだろうか?」
受付にはムカイがいた。サムは休憩中だ。
「俺に分かることがあれば答えるが…」
「ありがたい。分かることだけでいい」
「じゃあ、あっちのセットに座っていてくれ。受付を変わってくる」
ムカイは端にある4人掛けのテーブルとイスに向かって指差した。サムを呼び戻し、レオンにも声をかけた。教会の紹介状を持っていたからだ。先に教会に行った後、冒険者ギルドに来たようだ。
「人捜しのようで依頼いたしますかな?」
レオンは自己紹介をした後、ギルドに依頼するか聞いた。
「い、いや…金がない。捜すのは自分でする。似た人物を見かけなかったか聞きたいんだ」
「おお、そういう事でしたか」
レオンはムカイを睨む。そんなことで俺を呼び出すなと言っているのだろう。
「わかる範囲でお答えしますよ」
「ありがたい。…実は数年前に娘が攫われまして。下町のみんなや兵士たちは家出だろうと言って取り合ってもくれなかった。私は一人でようやくユロランからイージュレンまでたどり着いたわけです」
レオンとムカイは視線を交わした。家出だろうと思われた。
「大変でしたな。どんなお嬢さんで?」
「髪は銀髪で瞳は紫、背の高い女の子だろうと思います」
「だろう…というのは?」
「もう4年前の話しですので予想です。私は裕福ではないので少しずつ働きながら移動するしか術がありませんでした。お願いします。今あの子がどんな状況でいるのか…」
芝居掛かっている。ユロランから4年掛けてこられたようだ。駅馬車で15ベニーの金額で?歩いたとしても2・3日もあれば着ける距離なのに4年?
あんまり関わりたくないなと思うレオンとムカイだ。それは教会でも一緒だったのだろう。面倒くさいのでギルドに回されただけだ。
「あ~、お嬢さんのお名前は?」
なにか質問はないかと探りながら聞いてみる。
「ミルといいます」
「あ~、可愛らしいお名前だ!今はおいくつで?」
「たぶん、今年14歳になったかと…」
「あ~、…」
ずいぶん大きいな…4年前にいなくなったのなら10歳か…まあその歳なら攫われたと思うかもしれんが…
ムカイと受付から聞いているサムが微妙な顔をしている。
「あ~、ミルと言う女の子は調べんとわかりませんが、この街にはいないのではないかな?4年前でもこの街に来たことがあれば教会やなんらかのギルドに登録しないと働けません。私もずっとここで働いてますがね、紫の瞳なんてそんな独特な少女がいたならば覚えていますよ。王都にいかれては?」
早く追い出したい。
「はあ…教会でもそう言われました。」
「ではそのように…」
レオンとムカイは席を立とうとしていた。
「では冬の間こちらで働かせて頂きたいのですが…」
やっぱりそうなるか…レオンとムカイは座り直す
「あ~今までどのような仕事を?」
「花屋でしたが…その後は農家や飲食店で下働きなどをしていました」
「はあ、ではどこか探しましょう…スズカをいいですか?」
レオンは男からスズカを貰いサムに渡す。
「もう冬になりますから…きびしい所しか無いかもれませんぞ」
「なんの精霊付なのか聞いても?」ムカイが聞く
「…そ、それは…」
サムが登録を終え、男にスズカを返した。
「また、明日来られては?なにか人手不足の仕事があれば紹介しましょう」
「わかりました。どこか安い宿はありますか?」
「ギルドのアパートが空いてますよ。5階ですが。そちらでよろしかったら」
男は手続きをし、別のギルド職員とともにアパートに向かった。
「変な男が来たな…サムなんか仕事あるのか?」
「いや、どうだろう。それより、あの男は精霊なしだ」
「え?おい!!そんな奴この街にいさせていいのか!」
「落ち着けレオン。生まれつきだ。ちゃんとスズカに生まれつきの精霊なしと教会の印があった。」
「そ、そうか。生まれつきの精霊なしなんて初めて会ったぞ」
「そんなこと言うと精霊が逃げるぞ」ムカイだ。
「ああ、そうだったな」
レオンは小さな炎を大きな掌に出す。大丈夫のようだ。ほっとするレオン
ピストル弾のおかげで小さな炎を出すのもうまくなった。昔はロウソクに火を着けるだけで、よく家具を焦げさせていた。
今はお昼過ぎのためフロアには3人だけだ。みんな休憩中だ。
「レオン。違うかもしれないが…捜している娘ってロゼじゃないか?」
小声でサムがレオンに言っている。
「ああ、俺もそうかもと思ったな」
ムイも同意した。
「ん?しかし紫の瞳と言っていなかったか?」
「…最初に合ったときのロゼの瞳は紫だったような気がするんだが」
サムが独り言のように言う。それにはムカイも驚いた。
「確かか?」
「いや…次に会ったときは青かったし、しかも濃い青だったから見間違えかと思っていたんだがね…キレイな紫の瞳だと印象があったんでな…いやなんとも言えんな」
「ムカイ、お前はなんでロゼと思ったんだ?」
「単純に年齢が合ってるじゃないか。ロゼは今14歳だと言っていた。しかも男の恰好をしていて実は女の子だった。親から逃げている。どう考えてもロゼだろう…紫の瞳はわからないが…」
「逃げている…そうだったな。あの男にギルドのアパートを使わせてまずかったかな」
サムがしまったという顔をしている。
「いや、大丈夫だろう。青い瞳のロゼだ。関係あるとは思うまい」
「…そんな単純野郎だったらいいけどな」
ムカイは辛口だ
その冬、緑の男は冒険者ギルドに現れなかった。
「人を捜しているのだが、聞いてもいいだろうか?」
受付にはムカイがいた。サムは休憩中だ。
「俺に分かることがあれば答えるが…」
「ありがたい。分かることだけでいい」
「じゃあ、あっちのセットに座っていてくれ。受付を変わってくる」
ムカイは端にある4人掛けのテーブルとイスに向かって指差した。サムを呼び戻し、レオンにも声をかけた。教会の紹介状を持っていたからだ。先に教会に行った後、冒険者ギルドに来たようだ。
「人捜しのようで依頼いたしますかな?」
レオンは自己紹介をした後、ギルドに依頼するか聞いた。
「い、いや…金がない。捜すのは自分でする。似た人物を見かけなかったか聞きたいんだ」
「おお、そういう事でしたか」
レオンはムカイを睨む。そんなことで俺を呼び出すなと言っているのだろう。
「わかる範囲でお答えしますよ」
「ありがたい。…実は数年前に娘が攫われまして。下町のみんなや兵士たちは家出だろうと言って取り合ってもくれなかった。私は一人でようやくユロランからイージュレンまでたどり着いたわけです」
レオンとムカイは視線を交わした。家出だろうと思われた。
「大変でしたな。どんなお嬢さんで?」
「髪は銀髪で瞳は紫、背の高い女の子だろうと思います」
「だろう…というのは?」
「もう4年前の話しですので予想です。私は裕福ではないので少しずつ働きながら移動するしか術がありませんでした。お願いします。今あの子がどんな状況でいるのか…」
芝居掛かっている。ユロランから4年掛けてこられたようだ。駅馬車で15ベニーの金額で?歩いたとしても2・3日もあれば着ける距離なのに4年?
あんまり関わりたくないなと思うレオンとムカイだ。それは教会でも一緒だったのだろう。面倒くさいのでギルドに回されただけだ。
「あ~、お嬢さんのお名前は?」
なにか質問はないかと探りながら聞いてみる。
「ミルといいます」
「あ~、可愛らしいお名前だ!今はおいくつで?」
「たぶん、今年14歳になったかと…」
「あ~、…」
ずいぶん大きいな…4年前にいなくなったのなら10歳か…まあその歳なら攫われたと思うかもしれんが…
ムカイと受付から聞いているサムが微妙な顔をしている。
「あ~、ミルと言う女の子は調べんとわかりませんが、この街にはいないのではないかな?4年前でもこの街に来たことがあれば教会やなんらかのギルドに登録しないと働けません。私もずっとここで働いてますがね、紫の瞳なんてそんな独特な少女がいたならば覚えていますよ。王都にいかれては?」
早く追い出したい。
「はあ…教会でもそう言われました。」
「ではそのように…」
レオンとムカイは席を立とうとしていた。
「では冬の間こちらで働かせて頂きたいのですが…」
やっぱりそうなるか…レオンとムカイは座り直す
「あ~今までどのような仕事を?」
「花屋でしたが…その後は農家や飲食店で下働きなどをしていました」
「はあ、ではどこか探しましょう…スズカをいいですか?」
レオンは男からスズカを貰いサムに渡す。
「もう冬になりますから…きびしい所しか無いかもれませんぞ」
「なんの精霊付なのか聞いても?」ムカイが聞く
「…そ、それは…」
サムが登録を終え、男にスズカを返した。
「また、明日来られては?なにか人手不足の仕事があれば紹介しましょう」
「わかりました。どこか安い宿はありますか?」
「ギルドのアパートが空いてますよ。5階ですが。そちらでよろしかったら」
男は手続きをし、別のギルド職員とともにアパートに向かった。
「変な男が来たな…サムなんか仕事あるのか?」
「いや、どうだろう。それより、あの男は精霊なしだ」
「え?おい!!そんな奴この街にいさせていいのか!」
「落ち着けレオン。生まれつきだ。ちゃんとスズカに生まれつきの精霊なしと教会の印があった。」
「そ、そうか。生まれつきの精霊なしなんて初めて会ったぞ」
「そんなこと言うと精霊が逃げるぞ」ムカイだ。
「ああ、そうだったな」
レオンは小さな炎を大きな掌に出す。大丈夫のようだ。ほっとするレオン
ピストル弾のおかげで小さな炎を出すのもうまくなった。昔はロウソクに火を着けるだけで、よく家具を焦げさせていた。
今はお昼過ぎのためフロアには3人だけだ。みんな休憩中だ。
「レオン。違うかもしれないが…捜している娘ってロゼじゃないか?」
小声でサムがレオンに言っている。
「ああ、俺もそうかもと思ったな」
ムイも同意した。
「ん?しかし紫の瞳と言っていなかったか?」
「…最初に合ったときのロゼの瞳は紫だったような気がするんだが」
サムが独り言のように言う。それにはムカイも驚いた。
「確かか?」
「いや…次に会ったときは青かったし、しかも濃い青だったから見間違えかと思っていたんだがね…キレイな紫の瞳だと印象があったんでな…いやなんとも言えんな」
「ムカイ、お前はなんでロゼと思ったんだ?」
「単純に年齢が合ってるじゃないか。ロゼは今14歳だと言っていた。しかも男の恰好をしていて実は女の子だった。親から逃げている。どう考えてもロゼだろう…紫の瞳はわからないが…」
「逃げている…そうだったな。あの男にギルドのアパートを使わせてまずかったかな」
サムがしまったという顔をしている。
「いや、大丈夫だろう。青い瞳のロゼだ。関係あるとは思うまい」
「…そんな単純野郎だったらいいけどな」
ムカイは辛口だ
その冬、緑の男は冒険者ギルドに現れなかった。
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