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第80話 **クラルテ*エピソード3**

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 クラルテは初めてルイに話しかけたのである。もっと話が弾むかと期待したがルイも自分の事など興味がないのだろうとそれ以上は話をしなかった。ルイは品物を届ける際はクラルテの所に使いをやらせ、自分自身では行かなくなった。ドレスを指摘されて傷ついたのだ。


 ルイの生活は学院にも行かせて貰いえない、おこずかいは無い、オシャレも友達とランチだって行けない日々、たまに散歩に出れば開発を急かされる。ロザージュにたまに遊びに来てもらってもロザージュにも学院の友達が出来て話は合わなくなっていた。
   そして、婚約者のマピオンはルイが何をしても気に入らないようで、ルイの顔も見に来ない。お茶会や誕生日会を開いても男女の取り巻きたちと訪れ、バカにし料理をめちゃくちゃにして帰って次の年からは来ないとか当たり前になった。その度にルイが両親から怒られるのだ。

 そんな時、ルイが発明した物を第四王子が改良して売っていることを知る。マピオンの事で資金難でもあった家計を少しでも足しに出来ないかとこちらに回して貰いたいと第一王子に願うもあれは第四王子が発明したものでこちらに権利がないと、言われてしまう。さすがにおかしいと第一王子に盗聴器を仕掛けたのだ。 
   クラルテに知られてしまうとすぐにバレてしまうのでまずはユリトスに仕掛けたのだ。案の定、ユリトスはルイに入るお金を横取りしていた。しかし、マピオンとの結婚式が近づいていた。結婚したらもう家族からは、なにも言われなくなるだろうとルイは我慢した。これだけお金を稼げているのだから第一王子が守ってくれるに違いないと、まだ希望を持っていたのだ。


「え?行方不明?」
 クラルテは弟の結婚式に出席したが相手がルイでない事に驚いた。忙しそうにしている城の筆頭執事のヨニエルを捕まえて話を聞いた。

「はい、何でも第五王子様が、式の一ヶ月前に婚約破棄をされまして、あの方と結婚するという話になりまして…」
 式が終わり、披露宴パーティーに幸せそうに並ぶふたりを見ながらクラルテはルイの事を想いやった。

「で、見つからないのか?」
「はい、特に誰も捜してもいませんので…噂によると娼婦館に売られたとか…いえ、あくまでも噂ですが…」
「…な、、」
 言葉が出なかった。
「娼婦館…」
 なぜ、娼婦館に売られるのだ。金なら腐るほど入っていたはずだろう。最後に見たルイの顔を思い出す。いつも古いドレスに痩せた身体、瞳には生気がなく、あんな素晴らしい発明をしていたのにちっとも楽しそうではなくつまらなそうだった。

 クラルテは自分の詰めが甘かった事を悟った。ルイには金がビタ一文入っていなかったのだろう。もちろん、ルイの親にもだ。だから両親はルイを娼婦館に売るという選択をしたのだろう。
 クラルテは王都にある娼婦館を数件回った。しかし、ルイの灰色の髪に黒い瞳である目立つ特徴の女性を指名する事は出来なかった。売れっ子だのなんだのと紹介をされたが、遊ばずに帰った。
 手を回し、王都中、国中を捜させたがルイの所在は分からなかった。きっと国を出たのだろうと結論を出した。


 なぜ、もっと思いやれなかったのか、ビアンカに金が渡らない事は予想出来たはずだ。しかし、金づるであるビアンカを兄たちは捜しているようだ。ビアンカが戻ったら私と結婚させるよう兄に言おう。そうすれば今度こそビアンカを守れる。


 いつものようにクラルテは棟に引き篭もる。あれもこれもビアンカの発明品だ。大雑把で魔力が豊富な彼女しか作り出せない品物だ。作品を見る限り本来のビアンカは大らかな人だったはずだ。なのに最後に見たのは俯く彼女だった。

 どうやったら助け出せる?




 数ヶ月経つ頃、城の雰囲気がおかしいと感じたクラルテは筆頭執事のヨニエルを呼び止めた
「なにかしているのか?」
「さすが第四王子様ですね。第四王子様は第五王子様の元婚約者様を覚えていますか?あの時ずいぶんとご心配されていた様子でしたが…」

「もちろん覚えている…いったい何をしている」
「…実は」
 脱出計画を打ち明ける。ロザージュには王族には最後だとも言われていたが、ずっとクラルテを見て来たヨニエルは味方だと確信していた。

「元気でいるのか…たくましいな」
 少し安堵したクラルテがいた。
「…」
「なんだ?」
「いえ、第四王子様もお優しいなと…いえ、申し訳ございません」

 ヨニエルは頭を下げた。
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