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第78話 **クラルテ*エピソード1**
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ピティナスピリツァ王国、第四王子のクラルテは第一夫人の三男であった。第二夫人に長男がいた為、三男ではあったが第四王子となった。すでに第一王子のユリトスや第二王子のロロイカがいた為、跡継ぎに関しては蚊帳の外で実母からもあまり相手にされていなかった。
クラルテはその寂しさからいつも城の書庫にいた。たくさんの書物を読み漁り、魔術関連に興味を持った。そして、自身も魔術を考えたり、魔石を使ってなにか武器を作り出そうとしていた。その日もクラルテは書庫に行く為に中庭を横切っていた。
中庭には、ふたりの兄ユリトス、ロロイカと小さな女の子が遊んでいた。灰色の髪の色をした小さな女の子は豊富な魔力で王子たちの願いを効き入れていた。
「今度は寝ながらトイレが出来るようにしてくれよ」
「第二王子様、さすがにムリですよ~」
「おまえはそんな下らない事に魔法を使うな。では、そうだな。こっちからあっちまで行けるような物を作ってくれ」
(どこで〇ドアを作ったらいいかしら?)
「ん~ちょっと考えてみます」
「なんで兄上のは良くて僕のはダメなんだよ!」
「お前のは下らないからだよ!」
城の中庭で中学生くらいの男の子が幼稚園くらいの子と遊んでいる。大きな子が小さな子にあれを作れと言っているさまは滑稽であった。
しかし、楽しそうに兄弟で魔法を作り出している事に羨ましさもあった。
(僕もあそこに混ざりたい…)
クラルテはこの時八歳ではあったが、母に疎まれていたからなのか精神的に大人びていた。自分から甘えて声を掛ける時期はとうに過ぎていた。いつも見るその光景に目を背けるしかなかったのだ。
クラルテには家庭教師はいたが教育係りは付いていなかった。跡継ぎではないのだからとの処置ではあったのだろうが、接点が無いとの事で兄たちからは親戚の子扱いだった。同じ父と母の子で有りながら兄弟としての待遇が上ふたりとはまったく違っていた。
いつも中庭で遊んでいる灰色の髪の子が作っている魔法には心が惹かれた。魔法といえば攻撃するもの、自身を守るものだと思っていたが灰色の髪の子の魔法はまったく戦う要素のないものばかりだった。
本のページが勝手に捲れる魔術具、髭が凄く伸びる魔法薬、散らかった部屋をキレイにしてしまう混合魔法、便利生活魔法からどうでもいい魔法まで色とりどりだった。クラルテはいつのまにか兄たちと遊ぶ灰色の髪の子を陰から見ていた。
しかし、数年後、灰色の髪の子は城に来なくなった。教育係りが懐妊したという事だった。新しい教育係りにもクラルテは外され、やはり本ばかり読んでいた。
書物を読んでいると試したくなる。灰色の髪の子が来なくなってつまらなくなった事もあり、灰色の髪の子のような魔法を自分でも作りたくなった。そこで母や父に城の端にある、使われていない棟を使わせてくれと最初で最後のおねだりをした。
「父上、母上、城の隅にある使っていない棟を使いたいのですが」
母は三番目の子供は女の子が良かったと本人を目の前で言う人だったので「その容姿で女の子だったら、さぞかし美しい姫になった事だろうに、魔術に興味を持つなんて」と、呆れていた。しかし王の父からは「好きに使えばよい」と投げやりの返事を貰った。投げやりではあったが、承諾は得た。好きに使わせて貰えると思うと心が躍る。クラルテは十二歳になっていた。
クラルテは棟を使うようになってまず開発されている魔術具や様々な魔法薬を一から作った。書を読んでいて自分の方がもっと簡潔に作れると思っていたからだ。
元からあるレシピよりクラルテが練り直したレシピの方が簡潔に作れるし効き目も倍増する事が分かった。そして改良したレシピを次々に公開した。
各国から特許権が上書きされクラルテに資金が入って来るようになった。元の開発者とトラブルになりかけたが、折半にすることで折り合いがついた。それを知ったピティナスピリツァ王国の貴族たちはクラルテにすり寄って来た。
今までは王位継承権がほぼなく、実母の王妃からも可愛がられていない第四王子に誰も見向きもされなかった。しかし資金が第四王子に入っている事が分かると娘を差し出して金と権力を手に入れようとすり寄って来たのだ。しかし、クラルテはそれを大いに利用した。
「娘はいらないから、「虹の橋のオウム」の黄色のトサカ部分の羽を拾ってきてよ」
黄色い部分は貴重部位なのでなかなか手に入らないのだ。
「む、娘はいらないと…?」
「役にも立たない娘なんかいらないよ。それより魔法薬に使えそうな素材の方がよっぽど有難いよ。橋の近くに一枚くらい落ちているだろうからさ、拾って来てよ」
「…承知いたしました」
「急いでね」
クラルテは貴重部位や入手困難な素材をすり寄って来た貴族たちにお願いする事にした。
クラルテはその寂しさからいつも城の書庫にいた。たくさんの書物を読み漁り、魔術関連に興味を持った。そして、自身も魔術を考えたり、魔石を使ってなにか武器を作り出そうとしていた。その日もクラルテは書庫に行く為に中庭を横切っていた。
中庭には、ふたりの兄ユリトス、ロロイカと小さな女の子が遊んでいた。灰色の髪の色をした小さな女の子は豊富な魔力で王子たちの願いを効き入れていた。
「今度は寝ながらトイレが出来るようにしてくれよ」
「第二王子様、さすがにムリですよ~」
「おまえはそんな下らない事に魔法を使うな。では、そうだな。こっちからあっちまで行けるような物を作ってくれ」
(どこで〇ドアを作ったらいいかしら?)
「ん~ちょっと考えてみます」
「なんで兄上のは良くて僕のはダメなんだよ!」
「お前のは下らないからだよ!」
城の中庭で中学生くらいの男の子が幼稚園くらいの子と遊んでいる。大きな子が小さな子にあれを作れと言っているさまは滑稽であった。
しかし、楽しそうに兄弟で魔法を作り出している事に羨ましさもあった。
(僕もあそこに混ざりたい…)
クラルテはこの時八歳ではあったが、母に疎まれていたからなのか精神的に大人びていた。自分から甘えて声を掛ける時期はとうに過ぎていた。いつも見るその光景に目を背けるしかなかったのだ。
クラルテには家庭教師はいたが教育係りは付いていなかった。跡継ぎではないのだからとの処置ではあったのだろうが、接点が無いとの事で兄たちからは親戚の子扱いだった。同じ父と母の子で有りながら兄弟としての待遇が上ふたりとはまったく違っていた。
いつも中庭で遊んでいる灰色の髪の子が作っている魔法には心が惹かれた。魔法といえば攻撃するもの、自身を守るものだと思っていたが灰色の髪の子の魔法はまったく戦う要素のないものばかりだった。
本のページが勝手に捲れる魔術具、髭が凄く伸びる魔法薬、散らかった部屋をキレイにしてしまう混合魔法、便利生活魔法からどうでもいい魔法まで色とりどりだった。クラルテはいつのまにか兄たちと遊ぶ灰色の髪の子を陰から見ていた。
しかし、数年後、灰色の髪の子は城に来なくなった。教育係りが懐妊したという事だった。新しい教育係りにもクラルテは外され、やはり本ばかり読んでいた。
書物を読んでいると試したくなる。灰色の髪の子が来なくなってつまらなくなった事もあり、灰色の髪の子のような魔法を自分でも作りたくなった。そこで母や父に城の端にある、使われていない棟を使わせてくれと最初で最後のおねだりをした。
「父上、母上、城の隅にある使っていない棟を使いたいのですが」
母は三番目の子供は女の子が良かったと本人を目の前で言う人だったので「その容姿で女の子だったら、さぞかし美しい姫になった事だろうに、魔術に興味を持つなんて」と、呆れていた。しかし王の父からは「好きに使えばよい」と投げやりの返事を貰った。投げやりではあったが、承諾は得た。好きに使わせて貰えると思うと心が躍る。クラルテは十二歳になっていた。
クラルテは棟を使うようになってまず開発されている魔術具や様々な魔法薬を一から作った。書を読んでいて自分の方がもっと簡潔に作れると思っていたからだ。
元からあるレシピよりクラルテが練り直したレシピの方が簡潔に作れるし効き目も倍増する事が分かった。そして改良したレシピを次々に公開した。
各国から特許権が上書きされクラルテに資金が入って来るようになった。元の開発者とトラブルになりかけたが、折半にすることで折り合いがついた。それを知ったピティナスピリツァ王国の貴族たちはクラルテにすり寄って来た。
今までは王位継承権がほぼなく、実母の王妃からも可愛がられていない第四王子に誰も見向きもされなかった。しかし資金が第四王子に入っている事が分かると娘を差し出して金と権力を手に入れようとすり寄って来たのだ。しかし、クラルテはそれを大いに利用した。
「娘はいらないから、「虹の橋のオウム」の黄色のトサカ部分の羽を拾ってきてよ」
黄色い部分は貴重部位なのでなかなか手に入らないのだ。
「む、娘はいらないと…?」
「役にも立たない娘なんかいらないよ。それより魔法薬に使えそうな素材の方がよっぽど有難いよ。橋の近くに一枚くらい落ちているだろうからさ、拾って来てよ」
「…承知いたしました」
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クラルテは貴重部位や入手困難な素材をすり寄って来た貴族たちにお願いする事にした。
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