婚約を破棄された令嬢は舞い降りる❁

もきち

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第69話 最初で最後の戦いです

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「ロロではないか、どうやってここまで来たのだ」
 王はロロイカに目をやり、ルイには気が付いていないようだ。

「父上、これはどういう事です!この像は…」
 ロロイカは像を見ながら小刻みに震えている。ルイはビアンカ像に気を取られてロロイカの様子がおかしい事に気が付かなかった。

「この像は何です!答えてください!」

「なんだ、どうしたしたのだ。まあおまえにも説明してもよいだろう。これはビアンカだ。この国の核になるものだ。まあ現実はそう簡単な物ではない。維持が大変なのだ。昔から選ばれた女性はビアンカになる。ビアンカがビアンカを選ぶのだ。私も父から教えられた。ロロどうしたのだ。しっかりしないか…」

「やはりこれは人なのですね…」
「…だからなんだ」

「おばあ様が生きてらっしゃった頃、私に話してくださいました。おばあ様が幼い頃です。それは美しい姫がいたそうです。ビアンカといったそうです。幼い頃の憧れの姫だったと…」
「…」
「その姫は第一王子様と婚姻するからと嬉しそうにおっしゃったそうです。しかし姫は婚姻の一週間後にご病気で亡くなったそうです。伝染病とかですぐに埋められ亡骸も見る事も出来なかったそうです。大好きな姫だった。おばあ様はそう言っていました」
「お前はあの人に懐いていたな」

「肖像画も残っていました。国の宝だと言われていた人だったとかで、とても美しい人でした。僕はその肖像画のビアンカ姫に恋をしてしまいました。どうして死んでしまったのか、伝染病とはなにかと、色々調べましたが分かりませんでした。ビアンカこんな所にいたなんて、、ビアンカ」
「ロロ、触るな。吸い取られるぞ」

「父上はまたビアンカを殺すのですか…なぜあの子にビアンカと名付けたか不思議でした。恋したビアンカの名を誰かに名乗ってほしくなかった…」

「初代がビアンカだったのだ。そしてエネルギーが無くなる頃、新たなビアンカを指名し出したのだ。でもどの子が選ばれた子なのか分からなくなるからと選ばれた子は皆ビアンカと名付けたのだ。そう父から教えられた。また父もその父に教えられたのだろう」
 ロロイカは父親に襲いかかり胸ぐらをつかんだ。

「やめようと思わなかったのですか?ひとりの女性をあの美しい女性をこんなに苦しいそうな顔に歪ませて!心が痛まないのですか!父上ぇ!父上ぇ!」
 ロロイカはもうどこか精神が崩壊しているように見えた。
「やめろ、、やめないか!仕方がなかったのだ!そうしなければこの国が終わるのだ、だから…やめっ、、」

 ロロイカは王の胸ぐらを掴んで押しやった。女神像に近づいた。それでもロロイカはやめない。ビアンカ像が持っている杯から炎がチョロチョロを顔を出していた。

 杯の中に火を灯しているのかと、ルイは目を細めよく見ようと首を伸ばした。その小さな炎は生きているかのように伸びた。そして伸びた炎は近づいた王の首に巻き付いた。そして炎は一瞬で大きく広がり、王を包み込んだ。
「なんだ!?これはーーー!!」
 ロロイカは間一髪の所でカミノアに引っ張られ、カミノアに頭の中でもがいている。
 王は炎に包まれビアンカ像に取り込まれた。壮絶な叫び声とともに。

 ロロイカはカミノアによって落ち着きを取り戻したのか、放心状態だ。
 ユリトスは助ける事もせずに、ただ茫然と成り行きを見ていた。そしてルイの存在を確認した。

「なぜ、ここにいる…自分から死に来たのか」
「そんな訳ないでしょ、ムーンがいるからと助けに来たのよ、あなたには関係ないわ」
「はあ?お前は選ばれたビアンカなのだ。次世代のビアンカになるんだよ。有難く思うがいい!」
「あなたは自分の父親が目の前で壮絶な死に方を見てもどうも思わないの?」


『ルイ、あまり近づかないで、あなたはあのビアンカが反応するから』
 モナルダが小声でルイに注意する。

「少し早いがビアンカになって貰うよ」
 ユリトスはルイに近づく。ルイは距離を取る。近づかなければいいのだ。

「いくら今私が体力がないからと女と男の力は違うのだ。水龍など怖くないぞ!」
 ユリトスは両腕を前に付き出した。全指に付けていた悪趣味な指輪がパカッと開いた。その指輪の中からビー玉のような丸い物が浮いている。そのビー玉ような物は勢いよくまっすぐにルイに飛んで来た。

 これはルイが開発した物ではない。ルイは武器になるよな物は作らないようにしていたが、ちょっと使用を変えれば武器となる物はある。それに気を付けて発明をしていたのだ。

 そしてそのビー玉ような物は水だった。水の粉を指輪に入れて空気に触れた瞬間に水滴に戻り、標的目掛けて発射するように作られているようだった。
 ルイは透明なエレベーターを作った際に、もしもの時の為、大きな強化ガラスのような強い透明な壁を瞬時に作るようにしていた。
 水滴はその透明な強化ガラスに突き刺さり、ヒビが入っている。

「ユリトス!」

 ルイは叫んだ。
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