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第56話 イケメンから見つめられると緊張します

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 ルイはフィロデンの手を見ていた。なにか拘束するすべがあるのではないかと思っているからだ。フィロデンがなんの属性かと言う事も聞いていない。

「でも持ち逃げしたのではありません。だからサウーザに渡したのです。でもその渡した宝石が各国の宝石だという事も私はわかりません」
「…」
「以前、シオン王子と話をする機会があり、辻褄が合うのでその付与師は私ではないかと言う話になったのです」
「…」
「はっきりと言いたいのは持ち逃げをするつもりはありませんでした。私はある王族の人たちに頼まれて付与をしていただけです。誰の物だとかは知らされていませんでした」
「…」
「その付与をさせられていた王族の宝石だと思っていたから持ち出しのです。嫌がらせのつもりだったのです。まさか世界各国の大切な宝石だとは思ってもいませんでした」
「…」
「ご迷惑をお掛けしたことは心より謝罪申し上げますが、返す事で許して頂きたいのです」
 ルイはなるべく丁寧に話をした。

 フィロデンはルイから視線を離さず考え込んでいる。嘘か誠か見極めようとしている蒼く透き通るような瞳はすべて見通すような美しい瞳だった。
「ふぅ…なぜ、そんな話をしている?私は君をすぐ捕まえる事になるかもしれないよ」
「でもまだその宝石がそうだとは分かりませんよ?そうではないかという仮定の話です」
「それでも今、ノーズレクスは窮地でね。無実の君を犯人だと吊るし上げるかもしれないよ」

「では、サウーザのようになるでしょうね」
「サウーザ?」
「サウーザは最近、未知の生物に襲われたのではなかったか…」
 ルイはフィロデンを上目遣いで見た
「…」

「サウーザは水龍に城を半壊されたと…君の指示かね…」
「そうです」
「君は水龍と繋がっているのかね?」
「そうです」
「…水龍を調べにこの国来たとつい先日言っていたのは?」
「うそです」
「…」
 フィロデンはルイがサウーザに出た水龍を利用して自分を騙しているのでないかと疑っている。こんな小娘に水龍を操れるはずなどない。

「ハート、私がこの国に異様に早く着いたのは覚えているでしょ?」
「…ええ、でもキャラハン公爵に乗せて頂いたのでしょ?」
「キャラハン公爵に拾って頂いたのは本当だけど、「どこで」とは言っていないわ」
「え」
「キャラハン公爵に拾って頂いたには門の近くの湖よ」
「ではどうやって…」
「だから水龍に乗ってよ」

「そんな話を信じろと?」
「シオン王子にルイと言う名前の付与師と宝石の事を持ち出しては如何ですか?付与師の話を聞いたのもサウーザの王子たちからですし」
「連絡してみよう、話はそれだけ?しかしなぜ捕まるかもしれないのにこの話を?」

「ちょっと協力をお願いしたいのです。宝石と引き換えと言ってはなんですが、ノーズレクスは窮地を脱する事が出来ますし、私には助けが必要なんです。大きな事ですので国ごと動いて頂かないと勝てないのです」

「…どこかの国を攻め込むつもりかね?」
 はは、とフィロデンは笑いながら冷めたハーブティーを口にする。
「そうです」
「ブッ、冗談かね?」
「本気です」
「どこの国かね?」
「ガルーナ王国です。本当の名は…ですよね」
 ルイは声に出さずにピティナスピリツァ王国と言った。口の動きで分かっただろう。
「なぜその名を…」

「その国のモノだからです」
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