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第51話 高速移動は身体が持ちません
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かの国の積乱雲が薄くなりちょっと内部が見えそうになっている。
『ラグ爺がここにいるからね』
ラグ爺の効力が既に無くなりかけている。
取り合えず、夜まで待ってかの国のロザージュの家に虹の橋を架ける事にした。ロザージュにはルイ特性の携帯電話を持たせた。その形は小さな魔石の付いたイヤリングだった。それを耳に付けて貰い少し魔力を込めて貰うと通話が出来る。「さすがね、ルイ」とロザージュは喜んで受け取った。
深夜、こっそりと宿を抜け出し人目が付かない所を選ぶ。そしてロザージュは魔力を込めた。大きなキレイな虹が誰もいない砂漠の夜に架かった。
「行ってくるわね」
「ロザージュ、お願いね」
ロザージュは虹の彼方に消えた。そしてスゥと虹は消えた。
「派手ね…」
『そこは仕方ないのよ』
「みんなは他の場所にも虹が掛る事にどうして気が付かないのかしら」
『虹の橋を使う時は魔力を使うのよ、魔力を燃やさないと虹は出ないわ』
「そっか…目の前に虹がないと魔力は燃やさないか…」
『じゃあ、また戻る?』
カミノアはウキウキと聞いてきた。
「うっ、あの高速に乗るのがちょっと…夜が明けてからお願いしてもいい」
『…仕方ないな、今日のお昼はあのハートとお茶会でしょ。朝からぶっ飛ばすよ?』
「ああ、そうだった。お願いします」
ルイたちは砂漠にある小さな集落の宿に戻った。ルイとロザージュは深夜になるまでこの宿の部屋で休憩をしていた。ふたりはカミノアの高速移動に酔ってしまっていたのだ。
宿はふたり分取っていたがロザージュがかの国に行ってしまった事で広くなった。ルイはベッドの中でウトウトしていると、外が騒がしいような気がした。窓のカーテンの隙間からそっと外の様子を伺った。こんな真夜中になんだろうと思った。
「ハートが来ないわ。途中でなにかあったのかもしれないわ、助けに行かないと!」
「ローズ様、お部屋に戻ってください。今日はご実家に帰って貰います。ここに滞在してもう3日になります。ご両親もご兄弟も心配しています」
「だってハートがまだよ」
「ハート様は緊急の為、遅れてきます。連絡は貰っています。ハート様はローズ様を城に無事に届けるようにと仰せです」
「どうしてこっちに来ないのよ!私、ハートに怒っているのよ!魔法で縛り上げられてずっと苦しかったんだから!」
あの我儘姫が隣のちょっとだけ豪華な宿の前で騒いでいる。
ルイは呆れほっといてまた寝る事にした。朝からまた高速で戻らなければならない。ハートに時間軸の事をまだどう説明するか迷っている。すっとぼけるしかないだろう。
ハートはしっかり者だから通用しないだろうな…でも取り合えずすっとぼけよう。それしか方法がない。ここの貴族たちはかの国のことをどれくらい知っているのかしら?明日ハートにそれとなく聞いてみようかな。
早朝、ルイは黒猫とオウムとカバンにウサギを入れて出発する。宿を出て隣のちょっとだけ高級な宿を見ると豪華絢爛の馬車が止まっていた。きっとローズの物に違いない。そう思ったルイは足早にその場を去る。
しばらく歩くと湖に着いた。そこからカミノアに乗り込み高速でノーズレスクに戻るのだ。またあの高速を体験するのかとゲンナリとしていると、後ろから声が聞こえた。
「待って~」
ん
『ルイ、あの姫様が走って来てるよ』
「え!うそ」
ルイは急いで湖にダイブしてカミノアに乗り込んだ。膜を張る魔法が中途半端になり少し濡れてしまった。
「ローズに見られてないかしら?」
『たぶん、見てはなかったと思うがのぉ』
厄介な姫である。
「待って~ルイィ~」
走っているローズは足が遅い、すぐに護衛に捕まっていた。
「ローズ様なにをしているのです!」
「ああん、ルイがいたのよ~」
「は?いい加減にしてください!今日はもうサウーザに出発します。私どもも暇ではないのです。ハート様を待ちたいのであればサウーザの城でお待ちください!」
「ああん、、」
ローザは無理やりに宿に連れて行かされ城に連行された。
『目ざといわね』
ルイたちは高速でノーズレスクに戻り、ノーズレスクの門番たちから不信がられた。しかし、一度キャラハン公爵と一緒に来た事で覚えている門番もいて問題なく通る事が出来た。
ルイは目を回しながら宿に戻った。酔って吐きそうだ。お茶会の時間になっても高速酔いはとれず真っ青なルイの顔を見た迎えに来ていた家来たちは後日行うようにハート様に報告するとして帰ってくれた。
ここの人たちはいい人達のようだ。結局お茶会は二日後に変更された。
『ラグ爺がここにいるからね』
ラグ爺の効力が既に無くなりかけている。
取り合えず、夜まで待ってかの国のロザージュの家に虹の橋を架ける事にした。ロザージュにはルイ特性の携帯電話を持たせた。その形は小さな魔石の付いたイヤリングだった。それを耳に付けて貰い少し魔力を込めて貰うと通話が出来る。「さすがね、ルイ」とロザージュは喜んで受け取った。
深夜、こっそりと宿を抜け出し人目が付かない所を選ぶ。そしてロザージュは魔力を込めた。大きなキレイな虹が誰もいない砂漠の夜に架かった。
「行ってくるわね」
「ロザージュ、お願いね」
ロザージュは虹の彼方に消えた。そしてスゥと虹は消えた。
「派手ね…」
『そこは仕方ないのよ』
「みんなは他の場所にも虹が掛る事にどうして気が付かないのかしら」
『虹の橋を使う時は魔力を使うのよ、魔力を燃やさないと虹は出ないわ』
「そっか…目の前に虹がないと魔力は燃やさないか…」
『じゃあ、また戻る?』
カミノアはウキウキと聞いてきた。
「うっ、あの高速に乗るのがちょっと…夜が明けてからお願いしてもいい」
『…仕方ないな、今日のお昼はあのハートとお茶会でしょ。朝からぶっ飛ばすよ?』
「ああ、そうだった。お願いします」
ルイたちは砂漠にある小さな集落の宿に戻った。ルイとロザージュは深夜になるまでこの宿の部屋で休憩をしていた。ふたりはカミノアの高速移動に酔ってしまっていたのだ。
宿はふたり分取っていたがロザージュがかの国に行ってしまった事で広くなった。ルイはベッドの中でウトウトしていると、外が騒がしいような気がした。窓のカーテンの隙間からそっと外の様子を伺った。こんな真夜中になんだろうと思った。
「ハートが来ないわ。途中でなにかあったのかもしれないわ、助けに行かないと!」
「ローズ様、お部屋に戻ってください。今日はご実家に帰って貰います。ここに滞在してもう3日になります。ご両親もご兄弟も心配しています」
「だってハートがまだよ」
「ハート様は緊急の為、遅れてきます。連絡は貰っています。ハート様はローズ様を城に無事に届けるようにと仰せです」
「どうしてこっちに来ないのよ!私、ハートに怒っているのよ!魔法で縛り上げられてずっと苦しかったんだから!」
あの我儘姫が隣のちょっとだけ豪華な宿の前で騒いでいる。
ルイは呆れほっといてまた寝る事にした。朝からまた高速で戻らなければならない。ハートに時間軸の事をまだどう説明するか迷っている。すっとぼけるしかないだろう。
ハートはしっかり者だから通用しないだろうな…でも取り合えずすっとぼけよう。それしか方法がない。ここの貴族たちはかの国のことをどれくらい知っているのかしら?明日ハートにそれとなく聞いてみようかな。
早朝、ルイは黒猫とオウムとカバンにウサギを入れて出発する。宿を出て隣のちょっとだけ高級な宿を見ると豪華絢爛の馬車が止まっていた。きっとローズの物に違いない。そう思ったルイは足早にその場を去る。
しばらく歩くと湖に着いた。そこからカミノアに乗り込み高速でノーズレスクに戻るのだ。またあの高速を体験するのかとゲンナリとしていると、後ろから声が聞こえた。
「待って~」
ん
『ルイ、あの姫様が走って来てるよ』
「え!うそ」
ルイは急いで湖にダイブしてカミノアに乗り込んだ。膜を張る魔法が中途半端になり少し濡れてしまった。
「ローズに見られてないかしら?」
『たぶん、見てはなかったと思うがのぉ』
厄介な姫である。
「待って~ルイィ~」
走っているローズは足が遅い、すぐに護衛に捕まっていた。
「ローズ様なにをしているのです!」
「ああん、ルイがいたのよ~」
「は?いい加減にしてください!今日はもうサウーザに出発します。私どもも暇ではないのです。ハート様を待ちたいのであればサウーザの城でお待ちください!」
「ああん、、」
ローザは無理やりに宿に連れて行かされ城に連行された。
『目ざといわね』
ルイたちは高速でノーズレスクに戻り、ノーズレスクの門番たちから不信がられた。しかし、一度キャラハン公爵と一緒に来た事で覚えている門番もいて問題なく通る事が出来た。
ルイは目を回しながら宿に戻った。酔って吐きそうだ。お茶会の時間になっても高速酔いはとれず真っ青なルイの顔を見た迎えに来ていた家来たちは後日行うようにハート様に報告するとして帰ってくれた。
ここの人たちはいい人達のようだ。結局お茶会は二日後に変更された。
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