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第31話 元気になりました
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ルイは寒い時期に長時間、湖の中にいたことにより身体が冷え熱が出て倒れてしまっていた。一週間ほど宿に引き籠っていたが、ようやく熱が引いてきた。
『ルイ、大丈夫?』
「う~ん、もう大丈夫よ。宿の人が毎食運んでくれていたし、お医者さんまで呼んでくれたから。薬も貰えたし、もう平気よ」
『よかった』
カミノアはほっとした。
「ごめんね、心配かけて」
『ううん、僕が湖に連れ込んだから…』
「そんなこと、あれ以外の選択はなかったわよ。それにもう平気だから気にしない」
『うん』
カミノアは人だったときは素行が悪かったようだが、水龍になり長い間眠っていた事で、子供のような性格に戻っているようだ。ルイが姉気質なのも関係しているのかもしれない。
ルイは動けるようになったものの病み上がりのため、しばらくこの街に滞在する事にした。ルイたちがいるこの街は王都から北に六百キロほど離れているソレイドホークというサウーザ王国の第三の都市と言われている街だ。
ルイは朝食を取る為に、一階の食堂に向かう。
「おや、もうよくなったのかい?今朝食を部屋まで持っていこうと思っていた所だよ」
と、明るく言うのは恰幅のいい宿屋の女将さんだ。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。今日から食堂で頂きます」
「そうかい、元気になってよかったよ。そうだ、医者がもうすぐこの辺を通るから見て貰うといいよ」
「え?お医者さんが通るの?」
「ああ、そうだよ。他の街は知らないけど、この街は医者が一日置きに午前中だけ巡回しているんだ。医者も病人を探してるんだよ。カカカ」
「なるほど、動けない人にはいいですね」
ルイを見て貰った時も医者を呼んだのではなく巡回していたようだ。
「ああ、悪いけどこの間の診療代と薬代を立て替えてるんだよ。払っておくれよ?」
「あっそうなんですね。ごめんなさい。いくらですか?」
「安くしとくよ。宿代と三食代と込々で十万ペントでいいよ」
「あ、ありがとうございます」
ルイは言われるまま、支払った。大銀貨十枚をテーブルに出した。十万がはたして安いか高いのかは分からない。泊まっただけで一週間十万ペントはなかなかの値段かもしれないが三食付きで診療代と薬代、あと看病もしてもらっている。薄っすらと身体を拭いてもらっていた事を思い出す。迷惑を掛けたのだ。高かろうと文句はいえない。
ルイが朝食を食べていると恰幅のいい黒の眼帯をした見た目は五十代のイカツイ猟師の様な風貌の男が宿に現れた。
「よぉ女将、元気かい?」
「ああ、元気だよ、セロジネ。そこの嬢ちゃんをみておくれよ。この間寝込んでいた子だよ」
え?この人がお医者さん?
「おお、動けるようになったんだな。随分と疲労していたが…どれ」
のっそりと、ルイに近づいてきた。ちょっとこわい
「カカカ、大丈夫だよ。セロジネはそんな見てくれだが腕はいいんだから」
そう宿の女将さんは言うが見た目がどうしてもこわいのだ。猟奇殺人でもしそうな風貌だ。
男はルイの顔を上下動かし、目や喉を見て、手首の脈を取った。最後に胸元に手をやり心音を取っている。あまり人前でやらないでほしい。
「もう大丈夫そうだな。薬も効いたようだ」
「はい、ありがとうございました」
ルイはまだお医者さんなのか疑っている。
「俺は朝飯がまだなんだ。診療代の代わりにここの朝食代を払っておいてくれ」
「え?ああはい」
「カカカ、女の胸を触って朝食おごれなんて、図々しい男だねぇ」
「バカ言うな。胸じゃねえよ。心音つうのを聞いてたのよぉ分からねえ奴が口出しするなよ」
「はいはい、悪かったねぇ」
大きな声で言わないでほしい恥ずかしいではないか。
ルイはもそもそと残っていた朝食を食べた。朝食代は五百ペント、銅貨五枚。一日三食の食事代千五百として、七日にすると一万五百ペント。一泊素泊まりで三千、七日で二万千ペント。残りが診療代と薬代と手間賃で…。
…ぼられたかな?
ルイは朝食を食べながら頭で計算をする。
いやいや、面倒を掛けたのだ。このくらいの手間賃は当たり前だよね。感謝しないと。
女将と目が合うとにっこりと笑っている。
やっぱぼられたかな。
『ルイ、大丈夫?』
「う~ん、もう大丈夫よ。宿の人が毎食運んでくれていたし、お医者さんまで呼んでくれたから。薬も貰えたし、もう平気よ」
『よかった』
カミノアはほっとした。
「ごめんね、心配かけて」
『ううん、僕が湖に連れ込んだから…』
「そんなこと、あれ以外の選択はなかったわよ。それにもう平気だから気にしない」
『うん』
カミノアは人だったときは素行が悪かったようだが、水龍になり長い間眠っていた事で、子供のような性格に戻っているようだ。ルイが姉気質なのも関係しているのかもしれない。
ルイは動けるようになったものの病み上がりのため、しばらくこの街に滞在する事にした。ルイたちがいるこの街は王都から北に六百キロほど離れているソレイドホークというサウーザ王国の第三の都市と言われている街だ。
ルイは朝食を取る為に、一階の食堂に向かう。
「おや、もうよくなったのかい?今朝食を部屋まで持っていこうと思っていた所だよ」
と、明るく言うのは恰幅のいい宿屋の女将さんだ。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。今日から食堂で頂きます」
「そうかい、元気になってよかったよ。そうだ、医者がもうすぐこの辺を通るから見て貰うといいよ」
「え?お医者さんが通るの?」
「ああ、そうだよ。他の街は知らないけど、この街は医者が一日置きに午前中だけ巡回しているんだ。医者も病人を探してるんだよ。カカカ」
「なるほど、動けない人にはいいですね」
ルイを見て貰った時も医者を呼んだのではなく巡回していたようだ。
「ああ、悪いけどこの間の診療代と薬代を立て替えてるんだよ。払っておくれよ?」
「あっそうなんですね。ごめんなさい。いくらですか?」
「安くしとくよ。宿代と三食代と込々で十万ペントでいいよ」
「あ、ありがとうございます」
ルイは言われるまま、支払った。大銀貨十枚をテーブルに出した。十万がはたして安いか高いのかは分からない。泊まっただけで一週間十万ペントはなかなかの値段かもしれないが三食付きで診療代と薬代、あと看病もしてもらっている。薄っすらと身体を拭いてもらっていた事を思い出す。迷惑を掛けたのだ。高かろうと文句はいえない。
ルイが朝食を食べていると恰幅のいい黒の眼帯をした見た目は五十代のイカツイ猟師の様な風貌の男が宿に現れた。
「よぉ女将、元気かい?」
「ああ、元気だよ、セロジネ。そこの嬢ちゃんをみておくれよ。この間寝込んでいた子だよ」
え?この人がお医者さん?
「おお、動けるようになったんだな。随分と疲労していたが…どれ」
のっそりと、ルイに近づいてきた。ちょっとこわい
「カカカ、大丈夫だよ。セロジネはそんな見てくれだが腕はいいんだから」
そう宿の女将さんは言うが見た目がどうしてもこわいのだ。猟奇殺人でもしそうな風貌だ。
男はルイの顔を上下動かし、目や喉を見て、手首の脈を取った。最後に胸元に手をやり心音を取っている。あまり人前でやらないでほしい。
「もう大丈夫そうだな。薬も効いたようだ」
「はい、ありがとうございました」
ルイはまだお医者さんなのか疑っている。
「俺は朝飯がまだなんだ。診療代の代わりにここの朝食代を払っておいてくれ」
「え?ああはい」
「カカカ、女の胸を触って朝食おごれなんて、図々しい男だねぇ」
「バカ言うな。胸じゃねえよ。心音つうのを聞いてたのよぉ分からねえ奴が口出しするなよ」
「はいはい、悪かったねぇ」
大きな声で言わないでほしい恥ずかしいではないか。
ルイはもそもそと残っていた朝食を食べた。朝食代は五百ペント、銅貨五枚。一日三食の食事代千五百として、七日にすると一万五百ペント。一泊素泊まりで三千、七日で二万千ペント。残りが診療代と薬代と手間賃で…。
…ぼられたかな?
ルイは朝食を食べながら頭で計算をする。
いやいや、面倒を掛けたのだ。このくらいの手間賃は当たり前だよね。感謝しないと。
女将と目が合うとにっこりと笑っている。
やっぱぼられたかな。
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