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第26話 絶体絶命です
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ガシャーン ガシャーン ガシャーーン
今まさに、ルイは第一王子に囚われる寸前の所で、フロアにある大きな窓が盛大に割れた。割れた窓から大量の水が押し寄せてきた。その水はまるで生きているかのようにまっずくとルイと第一王子の方に向かう。
ますますフロアにいる女たちはパニックになった。サウーザの王子たちも訳が分からずパニックになった女たちを誘導することしか出来なかった。
そして、その生きている水は次第に形になり、大きな怪物のような姿を現した。大きな口に鋭い眼、それはまさに龍のような出で立ちだった。その龍の形をした水は大きな口を開きルイと第一王子を飲み込んだ。そしてかの国の使者たちを蹴散らし、第一王子だけをペッと吐き出した。第一王子は床に叩きつけられ気を失っている。
ルイは龍の形をした水の怪物の中に取り残されていた。サウーザの王子たちは水の中に怪物の中に浮いているルイを見た。水の怪物はフロアの天井をぶっ壊し、建物を破壊しながら城の近くにある湖の中に消えた。
王子たちや集まっていた女たちは茫然としていた。今のはなんだ。水の怪物が現れてメイドと使者を飲み込んだ。静寂から今度は一斉に大パニックになり辺りはまたもや騒然となった。女たちは逃げまどい大騒ぎとなった。
王子たちはその後始末に追われた。
「コール、あの化け物を追え!」
「わかった!」
「キールは女たちの無事を確認を!」
「了解!」
「ハミル、魔術師たちを集めろ!」
「おう」
「カイン、騎士たちを城の前に!」
「オッケイ」
「フリルは王都を様子を!」
「任せろ!」
「タール、住民の安全確保を…タール?タールはどこだ!こんな時に!」
シオンは王子たちに指示を出し、なんとか住民たちを避難させること事が出来た。城は半壊、フロアは全滅であった。しかし、数人のケガ人程度で住民は無事であった。やっと落ち着きを取り戻せたのは騒動から三日ほど経ってからだった。
城は半壊のうえ、敷地内は水浸しで他の色々な箇所が破損していた。集められた女たちの半分は城から逃げ出し、王都からも逃げす者もいて修復修繕も滞った。
蹴散らかされた、かの国の使者団二十数名ほどは龍の水に体当たりされ壁に激突し気を失っていた。訳が分からなかった為、捕らえて貴族牢に入れていた。フロアに女たちを集めなければこんなことにはならなかった、との理由だ。
サウーザの王族たちは使者のひとりがかの国の第一王子とは知らない。したがって第一王子は他の使者たちと同じように貴族牢に入っている。
復興する目途が立ち王都の住民たちも落ち着きを取り戻せた頃、ようやく使者団に話を聞ける状態までになった。すでに十日ほど経っていた。
貴族牢は身分の高い者が入れられる牢だ。鉄格子はあるが部屋は三食付きのすこぶる快適な仕様になっている。貴族は魔力が多い者が多く反撃されないように牢には魔力が跳ね返る強力な結界が施してある。
サウーザの王族たちは使者団がいる牢まで出向いた。しかしなにが起こるかわからない為、結界師が近くで守り、話を聞くこととなった。
「今すぐに、ここから出して頂きたい」
使者団のひとりが王族たちに物申す
「ああ、あなた方の国から新しい使者が訪れ、使者団を引き渡せと言っては来ている。しかしこちらにも事情がわからぬ。今や城の周りは破損だらけで修復もままならない。なんとしてくれる?その話合いが終わらぬうちは返せぬ」
王は拒否する。
「あの水龍は、我が国とは関係ありません!」
「水龍というのかね?」
「ぬっ」
「説明して頂こう」
「あれは…我が国の神獣である水龍であります。しかし、我々使者団が襲わせたわけでも、我が国が襲わせたわけでもございません」
「しかし、我が国の城を襲った。城は今や破壊され王都の内情は大混乱になっている。どう説明をする?」
「…あれは、あれはビアンカ殿が目覚めさせた水龍なのです。我が国でも幻とされ国の湖に深く眠りについているとされていたもの。長い間本当にいるのか分からない存在になっておりました。そんな時ビアンカ殿が目覚めさせた。そしてその水龍を彼女は手なずけてしまった。水龍は我が国を守っている大切な神獣なのです」
「ビアンカ殿とは?」
「文書にしたためていた我が国の付与師である、ビアンカ・サムリッツです」
王はわざとらしく驚いたフリをして話を聞く
「あのメイドがそなたたちが捜していたビアンカ・サムリッツで間違いがないと?付与師の大泥棒と言っていたのではなかったかね?」
「そ、それは宝石を持ち出したことは事実です」
「しかし、水龍を目覚めさせた恩人でもあると?」
「そうとも言えます」
「では罪人ではなかったと?そなたらは我が国を偽っていたと?」
「それは申し訳ないと思っております。ただビアンカは我が国にはなくてはならない人なのです。大切な人なのです。帰って来てほしかったのです」
「罪人として引き渡せと言われたらそのような対応になっていたと思わんかね?あやまって殺してしまっていたかもしれぬ。戻って来てほしいならなぜ出て行ったのかを考えるべきではないかね?」
「…」
「お主はただの使者ではないのかね?何者か?」
「私は文書を運び、国から言われた事を遂行するただの使者でございます」
「ビアンカ殿を最後は呼び捨てに言うておったな。大切な水龍をあれと言うたり…ただの使者のはずがあるまい。言わぬのであれば出せぬ。もうしばらくそこにおれ」
王が席を立とうとした。
「待ってくれ!わ、私は王族を守る騎士のひとりだ。ビアンカとは幼馴染だったのだ」
「我が国をバカにするでない!お主が今しがた言ったことは偽りであると分かっておる!」
王は声を荒げた。そんな中シオンが冷ややかに言い放つ。
「あんたの手首に付いている腕輪は偽りが分かるようになっているのだ。それは王族しか外せない。その腕輪は罪人用だ。今のあんたの立場は罪人なんだよ」
「な…」
「わかったら正直に話した方がいいよ。次は我が国の王に虚言を語ったとして処刑だよ」
カインがにこりと言う。
第一王子は屈辱に耐えかねプルプルと震えた。
今まさに、ルイは第一王子に囚われる寸前の所で、フロアにある大きな窓が盛大に割れた。割れた窓から大量の水が押し寄せてきた。その水はまるで生きているかのようにまっずくとルイと第一王子の方に向かう。
ますますフロアにいる女たちはパニックになった。サウーザの王子たちも訳が分からずパニックになった女たちを誘導することしか出来なかった。
そして、その生きている水は次第に形になり、大きな怪物のような姿を現した。大きな口に鋭い眼、それはまさに龍のような出で立ちだった。その龍の形をした水は大きな口を開きルイと第一王子を飲み込んだ。そしてかの国の使者たちを蹴散らし、第一王子だけをペッと吐き出した。第一王子は床に叩きつけられ気を失っている。
ルイは龍の形をした水の怪物の中に取り残されていた。サウーザの王子たちは水の中に怪物の中に浮いているルイを見た。水の怪物はフロアの天井をぶっ壊し、建物を破壊しながら城の近くにある湖の中に消えた。
王子たちや集まっていた女たちは茫然としていた。今のはなんだ。水の怪物が現れてメイドと使者を飲み込んだ。静寂から今度は一斉に大パニックになり辺りはまたもや騒然となった。女たちは逃げまどい大騒ぎとなった。
王子たちはその後始末に追われた。
「コール、あの化け物を追え!」
「わかった!」
「キールは女たちの無事を確認を!」
「了解!」
「ハミル、魔術師たちを集めろ!」
「おう」
「カイン、騎士たちを城の前に!」
「オッケイ」
「フリルは王都を様子を!」
「任せろ!」
「タール、住民の安全確保を…タール?タールはどこだ!こんな時に!」
シオンは王子たちに指示を出し、なんとか住民たちを避難させること事が出来た。城は半壊、フロアは全滅であった。しかし、数人のケガ人程度で住民は無事であった。やっと落ち着きを取り戻せたのは騒動から三日ほど経ってからだった。
城は半壊のうえ、敷地内は水浸しで他の色々な箇所が破損していた。集められた女たちの半分は城から逃げ出し、王都からも逃げす者もいて修復修繕も滞った。
蹴散らかされた、かの国の使者団二十数名ほどは龍の水に体当たりされ壁に激突し気を失っていた。訳が分からなかった為、捕らえて貴族牢に入れていた。フロアに女たちを集めなければこんなことにはならなかった、との理由だ。
サウーザの王族たちは使者のひとりがかの国の第一王子とは知らない。したがって第一王子は他の使者たちと同じように貴族牢に入っている。
復興する目途が立ち王都の住民たちも落ち着きを取り戻せた頃、ようやく使者団に話を聞ける状態までになった。すでに十日ほど経っていた。
貴族牢は身分の高い者が入れられる牢だ。鉄格子はあるが部屋は三食付きのすこぶる快適な仕様になっている。貴族は魔力が多い者が多く反撃されないように牢には魔力が跳ね返る強力な結界が施してある。
サウーザの王族たちは使者団がいる牢まで出向いた。しかしなにが起こるかわからない為、結界師が近くで守り、話を聞くこととなった。
「今すぐに、ここから出して頂きたい」
使者団のひとりが王族たちに物申す
「ああ、あなた方の国から新しい使者が訪れ、使者団を引き渡せと言っては来ている。しかしこちらにも事情がわからぬ。今や城の周りは破損だらけで修復もままならない。なんとしてくれる?その話合いが終わらぬうちは返せぬ」
王は拒否する。
「あの水龍は、我が国とは関係ありません!」
「水龍というのかね?」
「ぬっ」
「説明して頂こう」
「あれは…我が国の神獣である水龍であります。しかし、我々使者団が襲わせたわけでも、我が国が襲わせたわけでもございません」
「しかし、我が国の城を襲った。城は今や破壊され王都の内情は大混乱になっている。どう説明をする?」
「…あれは、あれはビアンカ殿が目覚めさせた水龍なのです。我が国でも幻とされ国の湖に深く眠りについているとされていたもの。長い間本当にいるのか分からない存在になっておりました。そんな時ビアンカ殿が目覚めさせた。そしてその水龍を彼女は手なずけてしまった。水龍は我が国を守っている大切な神獣なのです」
「ビアンカ殿とは?」
「文書にしたためていた我が国の付与師である、ビアンカ・サムリッツです」
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「そ、それは宝石を持ち出したことは事実です」
「しかし、水龍を目覚めさせた恩人でもあると?」
「そうとも言えます」
「では罪人ではなかったと?そなたらは我が国を偽っていたと?」
「それは申し訳ないと思っております。ただビアンカは我が国にはなくてはならない人なのです。大切な人なのです。帰って来てほしかったのです」
「罪人として引き渡せと言われたらそのような対応になっていたと思わんかね?あやまって殺してしまっていたかもしれぬ。戻って来てほしいならなぜ出て行ったのかを考えるべきではないかね?」
「…」
「お主はただの使者ではないのかね?何者か?」
「私は文書を運び、国から言われた事を遂行するただの使者でございます」
「ビアンカ殿を最後は呼び捨てに言うておったな。大切な水龍をあれと言うたり…ただの使者のはずがあるまい。言わぬのであれば出せぬ。もうしばらくそこにおれ」
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「待ってくれ!わ、私は王族を守る騎士のひとりだ。ビアンカとは幼馴染だったのだ」
「我が国をバカにするでない!お主が今しがた言ったことは偽りであると分かっておる!」
王は声を荒げた。そんな中シオンが冷ややかに言い放つ。
「あんたの手首に付いている腕輪は偽りが分かるようになっているのだ。それは王族しか外せない。その腕輪は罪人用だ。今のあんたの立場は罪人なんだよ」
「な…」
「わかったら正直に話した方がいいよ。次は我が国の王に虚言を語ったとして処刑だよ」
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