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第25話 さて、逃げますか
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使者が来ていると聞いてルイは自分を落ち着かせようと湖に来ていた。するとメイドが慌ててルイを呼びに来た。城の応接間に来るようにと連絡があった。急いで準備をして向かう。そこには王や王子たちが集まっていた。
「急がせてすまないな、ルイ。まずい事になった」
シオンが慌てている。
「え?」
「使者にはまだ見つかっていないと報告したのだが、この城の敷地内にいるようだと言われたんだよ。どの人物が分からないのであればこちらで確認したいからと、女性全員を城のフロアに集めてほしいと言われたのだ」
なんと王都に移ったことで逆に居所を知らせてしまったようだ。どういうことかわからないがなにかド〇ゴンレーダーみたいなのがあって、私が感知できる範囲内に来てしまったようだ。まずった。そんなにハイテクなものがある事にびっくりである。
「今から女性をフロアに集めることになった。済まない、もう少し時間がほしいと言ったのだが…断れなかった」
ド〇ゴンレーダーで感知しているのならフロアに集めた方が早い
「じゃあ…私も行った方がいいですね。容姿を戻しフロアに行きます。城で知らずに雇われたメイドに扮した方がいいのではないでしょうか?」
「…」
「私は知らないフリをしてなんとか逃げます。あとは適当に誤魔化してください」
「君は囚われてしまうよ?」
「でも…この短い間ではなにも対策が出来ないでしょう?私はなんとか逃げます」
「無理では?」
シオンはルイをじっと見る。
「宝石はメイドルームに隠してあったとか適当に言ってください」
「ルイ殿…」
「兎に角、メイドの服を貸してください。急いで」
「わかった」
ルイはメイド服を借りると髪と瞳を元のブラウン系の地味な容姿に戻し、メイド長や他のメイドたちに話かけた。
「私は最近入ったカルボナというメイドです。いいですね。他国のモノに聞かれたらそう言ってください。最近入ったばかりのメイドで何も知らないと言ってくださいね。メイド長も後で偽造の紹介状を執事に作ってもらい優秀な掃除婦だったので雇ったと言ってくださいね」
「…わかりました」
「余計な事は言わないように」
「かしこまりました」
そして、そのメイドたちと一緒に城のフロアに向かう。城で働いているたくさんの女性たちがフロアに集められている。洗濯婦や掃除婦、調理人に出入りしている八百屋のおかみ、そしてメイドたち。みんななぜ集められたのか不思議そうにしている。
さすがに貴族の女性たちにフロアに集めるような事はさせなかった。しかし、ルイが出ていかなければ貴族の女たちも連れて来いと言われてしまうだろう。平民と同じ扱いを嫌う貴族の女たちからするとなんという辱めを受けさせるのかと不満が出るに違いなかった。
いつもは夜会やパーティーをするフロアにたくさんの一般女性が集められた。多くの女性たちはお貴族様しか入れない豪華絢爛のフロアに入れたことにざわめき立っている。その中でルイはメイドたちと離れず、しかしすぐに逃げられるように後ろのほうにいた。
そしてフロアの中央には見覚えのある衣装を身に着けた二十数名のかの国の使者たちがいた。女性の顔をひとりひとり覗き込み違えば乱暴に隅に追いやっている。
まずい、このままいけば捕まってしまう。
ルイはたくさんいるメイドの一番後ろにゆっくりと後退した。そのまま外に出てしまおうと考えた。しかし、最後のメイドが入り終わるとフロアの大きな扉はかの国の使者によって閉められてしまった。
そして前に進むしかなく、少しずつルイの順番になっていく。
中央にいる、かの国の使者の顔がはっきりと見える距離になる頃、ルイは見覚えのある使者がいることに気が付いた。
あれは第一王子だ
第一王子が自ら、ルイを捕らえにきていた。なぜそこまで追いかけるのか…
使者に扮した第一王子もルイを見つけた。ルイと目が合った第一王子は目を見開き悪魔のように笑った。ルイが知っているあのやさいく温かみのある第一王子の姿はもうどこにもいなかった。
「ビアンカ!」
かの国の第一王子は叫び、その腕が伸びた。伸びたかのように感じられた。実際は第一王子の魔力が形になりルイの方に迫って来ていた。
第一王子の叫び声と魔力にフロア全体が騒然となり集められた女性たちが逃げ惑った。ルイも逃げようとしたが腕に第一王子の魔力が絡み付き引っ張られる。ルイは強引に第一王子の元に引き寄せられた。
「捕まえた!捕まえたぞ!ビアンカ!もう逃がさん!はーははは」
ルイの本名は、ビアンカ・サムリッツという
「急がせてすまないな、ルイ。まずい事になった」
シオンが慌てている。
「え?」
「使者にはまだ見つかっていないと報告したのだが、この城の敷地内にいるようだと言われたんだよ。どの人物が分からないのであればこちらで確認したいからと、女性全員を城のフロアに集めてほしいと言われたのだ」
なんと王都に移ったことで逆に居所を知らせてしまったようだ。どういうことかわからないがなにかド〇ゴンレーダーみたいなのがあって、私が感知できる範囲内に来てしまったようだ。まずった。そんなにハイテクなものがある事にびっくりである。
「今から女性をフロアに集めることになった。済まない、もう少し時間がほしいと言ったのだが…断れなかった」
ド〇ゴンレーダーで感知しているのならフロアに集めた方が早い
「じゃあ…私も行った方がいいですね。容姿を戻しフロアに行きます。城で知らずに雇われたメイドに扮した方がいいのではないでしょうか?」
「…」
「私は知らないフリをしてなんとか逃げます。あとは適当に誤魔化してください」
「君は囚われてしまうよ?」
「でも…この短い間ではなにも対策が出来ないでしょう?私はなんとか逃げます」
「無理では?」
シオンはルイをじっと見る。
「宝石はメイドルームに隠してあったとか適当に言ってください」
「ルイ殿…」
「兎に角、メイドの服を貸してください。急いで」
「わかった」
ルイはメイド服を借りると髪と瞳を元のブラウン系の地味な容姿に戻し、メイド長や他のメイドたちに話かけた。
「私は最近入ったカルボナというメイドです。いいですね。他国のモノに聞かれたらそう言ってください。最近入ったばかりのメイドで何も知らないと言ってくださいね。メイド長も後で偽造の紹介状を執事に作ってもらい優秀な掃除婦だったので雇ったと言ってくださいね」
「…わかりました」
「余計な事は言わないように」
「かしこまりました」
そして、そのメイドたちと一緒に城のフロアに向かう。城で働いているたくさんの女性たちがフロアに集められている。洗濯婦や掃除婦、調理人に出入りしている八百屋のおかみ、そしてメイドたち。みんななぜ集められたのか不思議そうにしている。
さすがに貴族の女性たちにフロアに集めるような事はさせなかった。しかし、ルイが出ていかなければ貴族の女たちも連れて来いと言われてしまうだろう。平民と同じ扱いを嫌う貴族の女たちからするとなんという辱めを受けさせるのかと不満が出るに違いなかった。
いつもは夜会やパーティーをするフロアにたくさんの一般女性が集められた。多くの女性たちはお貴族様しか入れない豪華絢爛のフロアに入れたことにざわめき立っている。その中でルイはメイドたちと離れず、しかしすぐに逃げられるように後ろのほうにいた。
そしてフロアの中央には見覚えのある衣装を身に着けた二十数名のかの国の使者たちがいた。女性の顔をひとりひとり覗き込み違えば乱暴に隅に追いやっている。
まずい、このままいけば捕まってしまう。
ルイはたくさんいるメイドの一番後ろにゆっくりと後退した。そのまま外に出てしまおうと考えた。しかし、最後のメイドが入り終わるとフロアの大きな扉はかの国の使者によって閉められてしまった。
そして前に進むしかなく、少しずつルイの順番になっていく。
中央にいる、かの国の使者の顔がはっきりと見える距離になる頃、ルイは見覚えのある使者がいることに気が付いた。
あれは第一王子だ
第一王子が自ら、ルイを捕らえにきていた。なぜそこまで追いかけるのか…
使者に扮した第一王子もルイを見つけた。ルイと目が合った第一王子は目を見開き悪魔のように笑った。ルイが知っているあのやさいく温かみのある第一王子の姿はもうどこにもいなかった。
「ビアンカ!」
かの国の第一王子は叫び、その腕が伸びた。伸びたかのように感じられた。実際は第一王子の魔力が形になりルイの方に迫って来ていた。
第一王子の叫び声と魔力にフロア全体が騒然となり集められた女性たちが逃げ惑った。ルイも逃げようとしたが腕に第一王子の魔力が絡み付き引っ張られる。ルイは強引に第一王子の元に引き寄せられた。
「捕まえた!捕まえたぞ!ビアンカ!もう逃がさん!はーははは」
ルイの本名は、ビアンカ・サムリッツという
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