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第24話 秘密の部屋です
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使者が訪れてから数日後、ルイと王族たちは秘密の部屋で会議をしている。どの王族の部屋にも秘密の通路があり、城から離れた場所の小さなガーデンハウスに繋がっている。そのガーデンハウスは地下から出入りしているため出入り口はなく木や葉に覆われて中を見ることは出来ない。そして結界魔法に覆われているため、人に認知されることもない。
そこで陛下や王子たちは結界や防衛に対する話し合いを進める。ルイは特に国の防衛に関することには口出しはしない。その国々のやり方があるのだ。他国のしかも女であるルイの話など聞く耳を持つはずがない。
やや気になったのは苦手なタールがいないことだ。それが気になって話が入って来ない。そんな事を思っていると第二王子であるカインがルイを見てにっこりと笑っている。
「タールがいないのが気になる?あいつの母親は一般人なんだ。だからまだ王族の通路は教えてないんだ。タールもまだ王族が何たるかって事が分かっていないしね。心を入れ替えてくれるといいんだけど…でもあいつはムリかなって思ってる」
なるほど、ここにいる王子たちは国や陛下を支えようとする心意気が伝わってくるが、あのタールは自分のことしか考えていないようだった。でも弾かれたらそれはそれで反発すると思うのだけど…まぁそれは本人次第か、誰も助けることは出来ない。本人が気づくしかないのだ。
ひとしきり話が落ち着いた頃にルイはシオンに話掛ける。
「シオン様、これに手を当て魔力を込めてもらえますか?」
ルイはひとつのネックレスをシオンに渡す。
「これは収納宝石です。私が収納を付与しています。この中にそのノーズレスクが言っていた宝石が入っていると思います。私はかの国の王子に言われて付与していたのでどれがどの国のかまではわかりません。これを返すので私を無罪放免にするように交渉してもらえませんか?お礼はお好きなだけ宝石に収納付与をします」
シオンはネックレスに魔力を込めた。
「これでシオン様の収納ネックレスになりました。もう一度ネックレスに魔力を込めながら宝石を取り出してください」
シオンはルイに言われるままネックレスに魔力込め宝石を取り出した。そのネックレスからポロポロと宝石が零れ落ちて来た。その数、百は超えている。
「こんなに?君はこんなに高価な宝石の付与をひとりでさせられていたのか?」
「ええ、いつもの事です。いっぱいあるなぁとは思っていました。でも貴族なら沢山持っているのだと思っていましたのであまり不思議には思わなくて。この宝石すべて収納付与はしてあります。これを渡すので帰ってくれって交渉出来ないでしょうか?」
ルイは他国の宝石を持って逃げているのでそれを渡せばもう追ってこないと思っている。
「わかった。これで交渉してみよう…ルイ殿は部屋に戻ってゆっくりしていてくれ。これで交渉出来るか数日後に来る使者に持ち掛けよう」
「はい、ありがとうございます。ご迷惑をお掛けします」
ルイはにこりと笑いこれで本当に自由になれる気がしていた。
ルイがガーデンハウスから出たのを確認したカインがシオンに話し掛ける。
「兄上…これって凄すぎない?高価な宝石に付与ってこんなに出来るものなの?」
「私の知っている付与師や魔術師たちはこんなに出来ません。一日ではムリです。高価な指輪なら一つでも二・三日は掛るでしょう」
魔術に長けているハミルが言う。
「そうだろうな、かの国が必死になって捜しているのだ。宝石を返したからと言って納得するかどうかわからないな…」
「ハミル、浮く原動力は解明できたのか?」
「外国にいる者にも探るようにしていますが、まだわかりません」
「話合いで終わりそうにはないですね。ルイ殿を渡した方がいいのでは?」
と、キールが言う
「かわいそうだよ」
「カイン兄さん、かわいそうとかの問題じゃないよ。国に関わるかもしれない事だよ?」
「そうだけど…兄上どうする?」
「父上、どういたしますか?」
「うむ、…シオンお主に任す」
「分かりました。使者にはルイの存在をまだ伏せる事にします。今はまだ捜していることにして時間を稼ぎましょう」
城の近くには大きな湖がある。ルイのお気に入りのスポットだ。ルイはこのサウーザの王都に来てから大体ここにいる。唯一心休める場所なのだ。
王子たちの緊迫状態は続いてはいるがルイ本人はあまり慌てていない。さすがにひとりでかの国に立ち向かう事は出来ない。もし戦いになるような事になればルイがこの国から逃げればいいと思っている。奪った宝石は王子に預けた。その宝石を奪いそのままルイをかの国に引き渡すかもしれない。しかし今は王子を信じるしかない。
「付与師を捜せと言われてもたくさんいるのだから二十日では見つけられない」
と、使者にはそう報告すると王子に言われた。とりあえず、時間稼ぎをしたいらしい。
数日後にかの国の使者がやって来た。
そこで陛下や王子たちは結界や防衛に対する話し合いを進める。ルイは特に国の防衛に関することには口出しはしない。その国々のやり方があるのだ。他国のしかも女であるルイの話など聞く耳を持つはずがない。
やや気になったのは苦手なタールがいないことだ。それが気になって話が入って来ない。そんな事を思っていると第二王子であるカインがルイを見てにっこりと笑っている。
「タールがいないのが気になる?あいつの母親は一般人なんだ。だからまだ王族の通路は教えてないんだ。タールもまだ王族が何たるかって事が分かっていないしね。心を入れ替えてくれるといいんだけど…でもあいつはムリかなって思ってる」
なるほど、ここにいる王子たちは国や陛下を支えようとする心意気が伝わってくるが、あのタールは自分のことしか考えていないようだった。でも弾かれたらそれはそれで反発すると思うのだけど…まぁそれは本人次第か、誰も助けることは出来ない。本人が気づくしかないのだ。
ひとしきり話が落ち着いた頃にルイはシオンに話掛ける。
「シオン様、これに手を当て魔力を込めてもらえますか?」
ルイはひとつのネックレスをシオンに渡す。
「これは収納宝石です。私が収納を付与しています。この中にそのノーズレスクが言っていた宝石が入っていると思います。私はかの国の王子に言われて付与していたのでどれがどの国のかまではわかりません。これを返すので私を無罪放免にするように交渉してもらえませんか?お礼はお好きなだけ宝石に収納付与をします」
シオンはネックレスに魔力を込めた。
「これでシオン様の収納ネックレスになりました。もう一度ネックレスに魔力を込めながら宝石を取り出してください」
シオンはルイに言われるままネックレスに魔力込め宝石を取り出した。そのネックレスからポロポロと宝石が零れ落ちて来た。その数、百は超えている。
「こんなに?君はこんなに高価な宝石の付与をひとりでさせられていたのか?」
「ええ、いつもの事です。いっぱいあるなぁとは思っていました。でも貴族なら沢山持っているのだと思っていましたのであまり不思議には思わなくて。この宝石すべて収納付与はしてあります。これを渡すので帰ってくれって交渉出来ないでしょうか?」
ルイは他国の宝石を持って逃げているのでそれを渡せばもう追ってこないと思っている。
「わかった。これで交渉してみよう…ルイ殿は部屋に戻ってゆっくりしていてくれ。これで交渉出来るか数日後に来る使者に持ち掛けよう」
「はい、ありがとうございます。ご迷惑をお掛けします」
ルイはにこりと笑いこれで本当に自由になれる気がしていた。
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「兄上…これって凄すぎない?高価な宝石に付与ってこんなに出来るものなの?」
「私の知っている付与師や魔術師たちはこんなに出来ません。一日ではムリです。高価な指輪なら一つでも二・三日は掛るでしょう」
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「そうだろうな、かの国が必死になって捜しているのだ。宝石を返したからと言って納得するかどうかわからないな…」
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数日後にかの国の使者がやって来た。
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