婚約を破棄された令嬢は舞い降りる❁

もきち

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第22話 相談しましょう、そうしましょう

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「でもさ兄上、ルイを出さないとかの国がどう出るかわからないじゃない?」

「確かにな」
「そこでですが、ルイ殿にかの国の内情を教えて頂けないかと思うのですが…」
 スッと手を挙げ、情報収集に長けているフリルが言葉を発した。
「…かの国のことは私もよくわかりません。普通に暮らしていただけでした。かの国の内情をこの国にもたらすことが正解なのかもわかりません。王族はともかく普通にたくさんの住民が住んでいました。その人たちを危険に晒すことは出来ません」

「何っている!今この国がっ…」
「タール!おまえに発言権はない。出て行ってもらってもいいんだぞ」
「っく、…失礼、失礼いたしました」
 タールはなぜか、またルイを睨む。

「ルイ殿、気持ちは分かるが…」
「私は内情を把握した所でなんの足しにもならないと思っています。もう近くまでかの国は来ているのですから。それよりも攻撃をされた時にどう防御するのかなどの対策が大事なのではないかと思います」

「…ふむ」

「どのような対策をするのです?」
 コールが興味深く聞いた。
「全然わかりません。わたしも皆さまと同じくかの国のことはまったくわかりませんので。この国ではどのような対策をしているのでしょう?この国は自由な国ですよね?王族が管理はしてはいますが決して高い税金は取らず自由に国民の出入りを許しています」
「国を守ることは王族の務めだ。王族を始め我々王子たちが国民に恥じぬよう剣や魔法を生かし国を守っている」
 ガタイのいいコールが腕を組み自慢げに言う。
「魔力の多い国民を募集して兵士として育成する。そこには上流階級などはないが、貴族は生まれつき魔力が多いから比較的兵士として騎士までの階級にいくのは貴族が多くなるな」
「そこは仕方ないことだろう」

 王子たちの話がちょっとズレて来たのでルイが戻す。
「浮いていることを考えるとなにか大きな原動力があるのではないかと思いますがそれがなにかわかりませんか?」
「なるほど、まずそれを解明しなければならないね。上から攻撃されれば逃げ切れない。結界魔術師たちを集めて出来る範囲で国全土に結界を張るのはどうでしょう?」
 キールはもしもの場合に備えた方がいいと助言する。
「さすがにそれは…」
「タールは口を挟むな。上だけを傘のように覆い結界を作るのはどうでしょう?少しは広げられるのではいでしょうか?」
 ハミルがタールの言葉を制止した。

「うむ…なるほど…では、第五王子キール。そなたに結界の指揮を頼む」
 陛下はみんなの意見をまとめる。
「心得ました」
「それから、第四王子ハミル。そなたは魔術に詳しかろう。浮く原動力なるものを過去の資料や歴史から解き明かせ。第三王子フリルは、かの国を探れ」
「「心得ました」」
「第六王子コール、いつでも防衛出来るよう騎士を集め戦闘の準備だ」
「は!」
「第一王子シオン、第二王子カインは引き続き警戒を弱めるな」
「「は!」」
「他の王子はシオンの指揮で動いてくれ。今日はここまでとしよう。ルイ殿お疲れであろう。助言助かった。今日は部屋でゆるりと過ごしてくれ。明日からまた忙しくなる」
「お心遣いありがとうございます」

 陛下が席を外そうと扉に向かうとタールが声を掛ける
「父上、私にもご命令を!」
「タールよ。聞いていただろうレオンの指揮下に入れ」
「…は」

「タール、おまえはまず腕を上げろ。剣も魔法も中途半端ではなにも任せられない。腕を磨けば自ずと結果は付いてくる。頼むから足を引っ張るな」
 シオンは呆れながらタールに話掛けた。
「は」タールは真っ赤な顔をして俯いている。

 ああ、早くこの場から逃げたい。これは問題を起こしそうな予感…

 やっと解放され離れに向かう。食堂の部屋を出て扉を閉めたとたんにお付きのメイドも追いつけないほどの早歩きで離れに向かった。ルイは誰かに声を掛けられるのを避けるため背筋を変えずに急いだ。またタールや他の王子に目を付けられても迷惑だ。ドレスの下の足は倍速になっていることだろう。

 レオンやカインが声を掛けようと扉に向かうも前を向いた時にはルイは百mは先にいて声を掛けても聞こえない距離まで離れていた。

「あれ?ルイ殿は?」
「いや、私が声を掛けようとしたらもういなかった…」
「えーもう少し話をしたかったのになぁ」
「私もだが…逃げられたようだ」
 シオンがクスリと笑う
「離れまで行く?」
「いや、あまりしつこいとタールと変わらないぞ。今日は休んでもらおう」
「ああ、タールと一緒はいやだな。仕方ないかぁ」


 ルイは離れまで戻り、速攻お風呂に入った。王子が離れに来ても今は入浴中だと分かればもう今日は訪れないだろう。普通の紳士ならば…

 はあ、本当に疲れた。なぜこんなことに…

 ルイはベッドに入るや否や記憶がなくなった。
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