上 下
20 / 84

第20話 夢のお城生活です

しおりを挟む
 しばらくは城で生活するようにと言われ、城と繋がっている離れを用意して頂いた。メイドに案内をしてもらい夢のお城生活かぁとルンルン気分で住居に向かう途中、濃いブラウン系の髪と瞳のひと際地味な王子がルイに近づいて来た。メイドたちはスッと廊下の端に並び頭を下げている。ルイも端に除けようとしたが声を掛けられてしまった。

「おい、おまえ!俺の第三夫人にしてやろう。有難く思え!」
 先ほど、陛下に怒鳴られていた高圧的なタール様です。まだ若い、ルイより年下ではないだろうか。もうふたりの妻がいるようだ。

 ルイは素早くカーテシーをして頭を下げた。
「タール様、有難い申し出ですがお断りいたします」
 ルイは頭を下げたまま話をした。
「ほお、この国の王子に逆らうと?」
「はい、私は王子という肩書の方をまったく信用しておりません。それはタール様ご本人とまったく関係はございません。それに陛下が承知なさるとは思えません。私は平民ですので」
「陛下が承知すればよいと?」
「いえ、王子様とは結婚は致しません」
「…」
「失礼します」
 ルイはタールとは目を合わさず去った。メイドたちもルイに付いていく。

 ああ、メンドクサイ

 やっぱりこの国からも逃げようかな。陛下はいい人ぽかったけど、この件が落ち着いたら早くアネモネの所に戻ろう。まさかアルベルスまでは追ってはこないだろう。貴族になったら付与を適当にしてあげてとんずらしてしまおう。変な王子に目を付けられると後がメンドクサイのだ。

 今度から自分の名も祖国の名も絶対に言わない。そうすれば見つからないわけだ。面倒だから宝石は陛下にあずけようかな。


「タール」
「兄上…」
「はあ、おまえは…余計なことをするな」
「余計なこととは…」
「先ほどの話聞いた。第三夫人?ふざけるな!まだ何ひとつとして実績のない貴様が!前のふたりだってまだ婚姻は成立していない。婚約者でもないではないか。無理矢理に関係を迫りどれほどの金が動いているのか忘れたのか。先ほども陛下が発言を許してもいないのに勝手に質問をしたり、身の程を弁えろ。俺は王太子だ。おまえを王家から廃することも出来るのだぞ。二度とこの俺に女の事で煩わせるな。次はないと思え!」

「も、申し訳ございません」
 タールは深々と頭を下げた。ちっ


「またタールかぁ、あの下品な踊り子の息子だから仕方ないが…もうあんなの追い出せよ。王家の恥だ。あいつのせいでルイ殿の秘密も聞けなかったし…」
「今度、問題を起こしたら森に捨てる」
「それがいいな。ねぇ兄上は父上と距離が近かったから秘密を聞いたんだろう?教えてよ」
「いや、少し聞こえてきたが内容はわからなかった」
「なんだ~」

 コンコン
「ルイ様、シオン様とカイン様です」
 と、メイドが報告をした。
「どうぞ」
「失礼する」
 ルイはすでに立ち上がってカーテシーをしている。
「いや、楽にしてくれ」
 王子たちはルイに住居の離れに訪れていた。

「挨拶をしておこうと思ってね。私は陛下の第一夫人アルミダの嫡男、シュー・オリオン・サウーザだ。シオンと呼んでくれ」
「で、僕が次男のカリライン・リゲル・サウーザ、カインだよ。さっきのはタールタクト、第四夫人の息子だ。タールは無視していいから、ただの問題児、厄介者さ」

「このような素敵な部屋をご用意くださり、ありがとうございます」
 ルイはにっこりと、愛想笑いをする。

「ああ、そんなことはいいんだ。俺は陛下ではない。礼には及ばないよ。かの国での今後を相談したくてね。疲れている所を悪いが今日の夕食を一緒にと思っているんだがいいだろうか?他の王子たちも紹介をしよう」
「わ、わかりました」
「ドレスや宝石はこちらで用意をしよう」
「ありがとうございます」
 貴族との食事は女性ではドレスに宝石を付けるのがマナーだ。しかし、ルイはあまり持っていない。ドレスもすべて売り払ってしまったし、宝石もルイには似合わない大きな石が付いているものばかりだ。
 そこら辺を気にしてくれているは有難い。


 部屋は陛下や王妃や王子たちとは別の棟になるが丸々一棟分、ルイが使っていいと言われている。全部で五階まであり、地下もある。一階は応接間や客間などがある。二階が主な居住スペースになっており、寝室やリビング、食事や水廻りなどルイが寛げるようになっている。三階は衣装や靴・宝石を保管する部屋に本などが置いてある書斎のような部屋がある。四・五階はゲストルームや使用人ルームになっている。ルイ付きのメイドまで用意されていた。

 しばらくすると続々とドレスや宝石が部屋に持ち込まれメイドたちは大忙しだ。その間、ルイはゆっくりとお茶を嗜みケーキを頂く。忙しくしているメイドたちに指示を出し見守る。そこは元上級貴族である。慣れている。

 ルイのような平民を受け入れドレスや宝石を用意をしてくれている。さすがは大国サウーザである。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう

蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。 王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。 味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。 しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。 「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」 あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。 ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。 だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!! 私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です! さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ! って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!? ※本作は小説家になろうにも掲載しています 二部更新開始しました。不定期更新です

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」  侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。  その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。  フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。  そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。  そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。  死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて…… ※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。

出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました

瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。 レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。 そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。 そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。 王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。 「隊長~勉強頑張っているか~?」 「ひひひ……差し入れのお菓子です」 「あ、クッキー!!」 「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」 第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。 そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。 ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。 *小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...