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第20話 夢のお城生活です
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しばらくは城で生活するようにと言われ、城と繋がっている離れを用意して頂いた。メイドに案内をしてもらい夢のお城生活かぁとルンルン気分で住居に向かう途中、濃いブラウン系の髪と瞳のひと際地味な王子がルイに近づいて来た。メイドたちはスッと廊下の端に並び頭を下げている。ルイも端に除けようとしたが声を掛けられてしまった。
「おい、おまえ!俺の第三夫人にしてやろう。有難く思え!」
先ほど、陛下に怒鳴られていた高圧的なタール様です。まだ若い、ルイより年下ではないだろうか。もうふたりの妻がいるようだ。
ルイは素早くカーテシーをして頭を下げた。
「タール様、有難い申し出ですがお断りいたします」
ルイは頭を下げたまま話をした。
「ほお、この国の王子に逆らうと?」
「はい、私は王子という肩書の方をまったく信用しておりません。それはタール様ご本人とまったく関係はございません。それに陛下が承知なさるとは思えません。私は平民ですので」
「陛下が承知すればよいと?」
「いえ、王子様とは結婚は致しません」
「…」
「失礼します」
ルイはタールとは目を合わさず去った。メイドたちもルイに付いていく。
ああ、メンドクサイ
やっぱりこの国からも逃げようかな。陛下はいい人ぽかったけど、この件が落ち着いたら早くアネモネの所に戻ろう。まさかアルベルスまでは追ってはこないだろう。貴族になったら付与を適当にしてあげてとんずらしてしまおう。変な王子に目を付けられると後がメンドクサイのだ。
今度から自分の名も祖国の名も絶対に言わない。そうすれば見つからないわけだ。面倒だから宝石は陛下にあずけようかな。
「タール」
「兄上…」
「はあ、おまえは…余計なことをするな」
「余計なこととは…」
「先ほどの話聞いた。第三夫人?ふざけるな!まだ何ひとつとして実績のない貴様が!前のふたりだってまだ婚姻は成立していない。婚約者でもないではないか。無理矢理に関係を迫りどれほどの金が動いているのか忘れたのか。先ほども陛下が発言を許してもいないのに勝手に質問をしたり、身の程を弁えろ。俺は王太子だ。おまえを王家から廃することも出来るのだぞ。二度とこの俺に女の事で煩わせるな。次はないと思え!」
「も、申し訳ございません」
タールは深々と頭を下げた。ちっ
「またタールかぁ、あの下品な踊り子の息子だから仕方ないが…もうあんなの追い出せよ。王家の恥だ。あいつのせいでルイ殿の秘密も聞けなかったし…」
「今度、問題を起こしたら森に捨てる」
「それがいいな。ねぇ兄上は父上と距離が近かったから秘密を聞いたんだろう?教えてよ」
「いや、少し聞こえてきたが内容はわからなかった」
「なんだ~」
コンコン
「ルイ様、シオン様とカイン様です」
と、メイドが報告をした。
「どうぞ」
「失礼する」
ルイはすでに立ち上がってカーテシーをしている。
「いや、楽にしてくれ」
王子たちはルイに住居の離れに訪れていた。
「挨拶をしておこうと思ってね。私は陛下の第一夫人アルミダの嫡男、シュー・オリオン・サウーザだ。シオンと呼んでくれ」
「で、僕が次男のカリライン・リゲル・サウーザ、カインだよ。さっきのはタールタクト、第四夫人の息子だ。タールは無視していいから、ただの問題児、厄介者さ」
「このような素敵な部屋をご用意くださり、ありがとうございます」
ルイはにっこりと、愛想笑いをする。
「ああ、そんなことはいいんだ。俺は陛下ではない。礼には及ばないよ。かの国での今後を相談したくてね。疲れている所を悪いが今日の夕食を一緒にと思っているんだがいいだろうか?他の王子たちも紹介をしよう」
「わ、わかりました」
「ドレスや宝石はこちらで用意をしよう」
「ありがとうございます」
貴族との食事は女性ではドレスに宝石を付けるのがマナーだ。しかし、ルイはあまり持っていない。ドレスもすべて売り払ってしまったし、宝石もルイには似合わない大きな石が付いているものばかりだ。
そこら辺を気にしてくれているは有難い。
部屋は陛下や王妃や王子たちとは別の棟になるが丸々一棟分、ルイが使っていいと言われている。全部で五階まであり、地下もある。一階は応接間や客間などがある。二階が主な居住スペースになっており、寝室やリビング、食事や水廻りなどルイが寛げるようになっている。三階は衣装や靴・宝石を保管する部屋に本などが置いてある書斎のような部屋がある。四・五階はゲストルームや使用人ルームになっている。ルイ付きのメイドまで用意されていた。
しばらくすると続々とドレスや宝石が部屋に持ち込まれメイドたちは大忙しだ。その間、ルイはゆっくりとお茶を嗜みケーキを頂く。忙しくしているメイドたちに指示を出し見守る。そこは元上級貴族である。慣れている。
ルイのような平民を受け入れドレスや宝石を用意をしてくれている。さすがは大国サウーザである。
「おい、おまえ!俺の第三夫人にしてやろう。有難く思え!」
先ほど、陛下に怒鳴られていた高圧的なタール様です。まだ若い、ルイより年下ではないだろうか。もうふたりの妻がいるようだ。
ルイは素早くカーテシーをして頭を下げた。
「タール様、有難い申し出ですがお断りいたします」
ルイは頭を下げたまま話をした。
「ほお、この国の王子に逆らうと?」
「はい、私は王子という肩書の方をまったく信用しておりません。それはタール様ご本人とまったく関係はございません。それに陛下が承知なさるとは思えません。私は平民ですので」
「陛下が承知すればよいと?」
「いえ、王子様とは結婚は致しません」
「…」
「失礼します」
ルイはタールとは目を合わさず去った。メイドたちもルイに付いていく。
ああ、メンドクサイ
やっぱりこの国からも逃げようかな。陛下はいい人ぽかったけど、この件が落ち着いたら早くアネモネの所に戻ろう。まさかアルベルスまでは追ってはこないだろう。貴族になったら付与を適当にしてあげてとんずらしてしまおう。変な王子に目を付けられると後がメンドクサイのだ。
今度から自分の名も祖国の名も絶対に言わない。そうすれば見つからないわけだ。面倒だから宝石は陛下にあずけようかな。
「タール」
「兄上…」
「はあ、おまえは…余計なことをするな」
「余計なこととは…」
「先ほどの話聞いた。第三夫人?ふざけるな!まだ何ひとつとして実績のない貴様が!前のふたりだってまだ婚姻は成立していない。婚約者でもないではないか。無理矢理に関係を迫りどれほどの金が動いているのか忘れたのか。先ほども陛下が発言を許してもいないのに勝手に質問をしたり、身の程を弁えろ。俺は王太子だ。おまえを王家から廃することも出来るのだぞ。二度とこの俺に女の事で煩わせるな。次はないと思え!」
「も、申し訳ございません」
タールは深々と頭を下げた。ちっ
「またタールかぁ、あの下品な踊り子の息子だから仕方ないが…もうあんなの追い出せよ。王家の恥だ。あいつのせいでルイ殿の秘密も聞けなかったし…」
「今度、問題を起こしたら森に捨てる」
「それがいいな。ねぇ兄上は父上と距離が近かったから秘密を聞いたんだろう?教えてよ」
「いや、少し聞こえてきたが内容はわからなかった」
「なんだ~」
コンコン
「ルイ様、シオン様とカイン様です」
と、メイドが報告をした。
「どうぞ」
「失礼する」
ルイはすでに立ち上がってカーテシーをしている。
「いや、楽にしてくれ」
王子たちはルイに住居の離れに訪れていた。
「挨拶をしておこうと思ってね。私は陛下の第一夫人アルミダの嫡男、シュー・オリオン・サウーザだ。シオンと呼んでくれ」
「で、僕が次男のカリライン・リゲル・サウーザ、カインだよ。さっきのはタールタクト、第四夫人の息子だ。タールは無視していいから、ただの問題児、厄介者さ」
「このような素敵な部屋をご用意くださり、ありがとうございます」
ルイはにっこりと、愛想笑いをする。
「ああ、そんなことはいいんだ。俺は陛下ではない。礼には及ばないよ。かの国での今後を相談したくてね。疲れている所を悪いが今日の夕食を一緒にと思っているんだがいいだろうか?他の王子たちも紹介をしよう」
「わ、わかりました」
「ドレスや宝石はこちらで用意をしよう」
「ありがとうございます」
貴族との食事は女性ではドレスに宝石を付けるのがマナーだ。しかし、ルイはあまり持っていない。ドレスもすべて売り払ってしまったし、宝石もルイには似合わない大きな石が付いているものばかりだ。
そこら辺を気にしてくれているは有難い。
部屋は陛下や王妃や王子たちとは別の棟になるが丸々一棟分、ルイが使っていいと言われている。全部で五階まであり、地下もある。一階は応接間や客間などがある。二階が主な居住スペースになっており、寝室やリビング、食事や水廻りなどルイが寛げるようになっている。三階は衣装や靴・宝石を保管する部屋に本などが置いてある書斎のような部屋がある。四・五階はゲストルームや使用人ルームになっている。ルイ付きのメイドまで用意されていた。
しばらくすると続々とドレスや宝石が部屋に持ち込まれメイドたちは大忙しだ。その間、ルイはゆっくりとお茶を嗜みケーキを頂く。忙しくしているメイドたちに指示を出し見守る。そこは元上級貴族である。慣れている。
ルイのような平民を受け入れドレスや宝石を用意をしてくれている。さすがは大国サウーザである。
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